1.出会っちゃいました
「ど、どうしよう。可愛い」
ある日の水曜日の夜。勤務を無事終え帰宅途中、私は動けなくなった。
何故なら。
スリスリ
スーリスリ
足元に絡み付くようにいる白と茶の生き物が顔を上げ目が合った。
「ニャーン」
今日の天気は雨。
ここは大通り。
人気はないけど交通量はかなり多い。
バッグの中の携帯を掴みすぐ捕まる伯母に電話した。
『あら、舞ちゃん、お仕事終わったの? 今、私ちょっと手が離せなくて後でかけ』
「おばちゃん!猫いるの! どうしよう!」
『あらやだ。ダメよ!』
「でも、子猫で道路沿いだよ?!」
『もう、家に犬が二匹もいるんだから!道路から離れた所に置いてきなさい!』
そうだけど。
でも。
「ニャー」
しゃがみこんだ私の膝に顔をすりよせてきた体は痩せている。
ゴロゴロ
喉の音が聞こえた。
「……また、かけるわ」
『あ、ま』
何か聞こえたけど切るボタンを押し携帯をバッグに放り込み、小さな体中を抱き上げた。抵抗もなく抱かれる子猫にわかりもしないだろうけど、話しかけた。
「よし。とりあえず会社に戻るから!」
傘をさしなおし猫をしっかり抱えた私は、小走りで来た道を戻り会社の一階のシャッターが開いたままの倉庫にいた営業に頼んだ。
「あれ、花ちゃん忘れ物?」
「違います。あの、これ、梱包して下さい!」
「はぁ?」
私、花咲 舞が初めて猫をお世話する事になった日の出来事である。