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執務一:少年と執事-1
聖域。或いは禁忌。若しくは秘密。
それは踏み込んではいけない領域。触れてはいけない事柄。侵してはいけないもの。
世界にはそうして、ひた隠しにされたものが、少なからず存在する。
そして誰もが、秘匿されたそれらに、踏み込んでみたくなる。触れてみたくなる。侵してみたくなる。
私もそうだった。
善く言えば冒険心。悪く言えば背徳心。
誰だって、私だって、好奇心は持っている。
そう。彼らだってそう。きっとそう。
彼らはタブーを犯し、私はそれを傍観するというタブーを犯す。
――ワイアット邸、廊下、居間の前にて。