夢はいいものです。そうでなかったら、お金が大事です。.
これは俺の株を上げるチャンスかもしれない。そう思った俺はその声の元へ向かう。そこでは彼女がボイスレコーダーらしきものとカメラを持った二人の男に囲まれていた。
「ちょっと、なにしているんですか!嫌がってるでしょ!通報しますよ!」
「・・・・・・ちっ」二人の男は逃げるように立ち去っていく。
「あ、ありがとうございます!あなたは・・・・・・なぜここに?」
「君を探していたんだ。俺は、君と話しをしなければならないんだ。」
「昨日も言ったようにあなたに話様なことはありません。・・・・・・と言いたい所ですが、あなたには助けてもらった恩もあります。話だけでも聞きましょう。」
よし、計画通りだ。なにも計画通りには進んでいないがまぁ結果オーライだ、よしとしよう。
俺たちは近くの公園に移動する。街頭に照らされる公園のベンチ。なんだかロマンチックな雰囲気ではあるが今はそんなことも言っていられない。
「えっと・・・・・・昨日君に突っぱねられてから君の事を調べたよ。君が・・・・・・その、寄付したことについて、何のいわれもない誹謗中傷を受けていることもそこで知った。」
「昨日知った、ってことは昨日私に接触してきた時点ではそのことは知らなかったのね。ごめんなさい。私、早とちりして・・・・・・」
「いや、そんなことはもういいんだ。聞きたいことがあって、えっと・・・・・・。」
俺はメモ用紙を取り出し『100,000,000』という数字を書き、彼女に見せる。
「この数字を見て、心当たりはある?」
だがこの質問は愚問といってもいいかもしれない。彼女の表情は俺が見せた紙を見たとたん、漫画のハッという効果音が出そうなくらいハッとした表情をしていたからだ。
「心当たり、あります。つまり、あなたも1億円を受け取った1人なのですね?あの組織、『Dream of seashell』から」
なんだその組織の名前。直訳で・・・・・・貝殻の夢か。いや、そんなことより
「確かにその通りだ。でもなんで君はその、『Dream of seashell』とかいう組織の名前まで知ってるんだ?やっぱり、その、『賭井貞子』さんは、君の関係者なのか?俺は彼女から説明を受けて1億円を受け取ったんだ。」
「はい・・・・・・。賭井貞子は私の5個上の姉です。『Dream of seashell』の名前を知っているのは、単に私に1億円の条件を説明した人が言っていたからです。」
つまりこの子の姉、賭井貞子は22歳ということか。彼女の語りは続く。
「お姉ちゃんと私はとても仲のいい姉妹だったんです。5年前のあの日までは・・・・・・。」
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私の父母は大学で研究員をやっていました。父母は忙しく家を空けることが多かったけど、楽しく幸せな暮らしでした。
あの日私が家に帰ると、姉が異常に機嫌がよかったんです。なにかあったのかな、とは思いましたが、まぁお年頃だし彼氏でもできたのかな、と思っていました。そしてその日から姉の羽振りが異常によくなったのにも違和感を覚えました。そこで私は姉の部屋に忍び込みました。そして姉の部屋のたんすから通帳を発見し中身を開くと・・・・・・そこには1億円に近いような数字が刻まれていました。つまり私たち数日前に1億円を受け取った人たちを第2世代と定義すると、私の姉たちは第1世代だったということです。
そしてその数日後、私の姉は組織に連れ去られたのです。そして姉はみるみるやつれていきました。そしきでどんなことをされていたかは私にもわかりません。私は心を痛める日々が続きました。しかしあまた、ある日を境に姉はまた元気を取り戻していきいました。あぁ、よかった。元のお姉ちゃんに戻った。わつぃはそう思いました。しかし姉は以前の通りになったわけではなかったのです。姉は洗脳されていました。だからあなたが見た姉はどんな人物だったのかわかりませんが、それは本当の彼女ではありません。彼女は組織の命令するがままに動く操り人形のようになってしまったのです。
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「私は姉がいったいなぜ組織によって変えられてしまったのか。そんな疑問を抱き続けていました。
数年後、つまり今から数日前、私は組織に、たぶんあなたと同じように、1億円を受け取らないかと持ちかけられました。そしてあの3つの条件を聞いたとき、私の中で謎が解けました。姉が連れ去られてしまったのは、私に1億円を受け取ったということを知られてしまったからなのだと。そこで私は考えました。姉を組織から救い出して、笑顔を取り戻してもらえたい。しかしそのためにはおそらく組織を出し抜く必要がある。だから私は、姉の笑顔を取り戻す、その目標に向けて動いても組織に全額を没収されないように、『世界中の人の笑顔を取り戻したい』という夢を設定したのです。しかしその夢は私の、姉がさらわれて以降に思うようになった、本当の気持ちでもありました。だから私は米国への寄付を決意したの。私は私の正しいと思うことを、正しいと思うようにやった。なのに、何で・・・・・・。」
これは今、行くしかないだろう。ここで畳み掛けて協力関係を築くしかないだろうと、俺の中の俺が囁く。
よし、行くしかない。
「君は・・・・・・世界中の人々の笑顔を守りたいと言っていたね?だけどその世界中の人々の中には君自身は入っていない様に見える。だから君の笑顔は僕が守るよ。君の正しさも保障する。」
彼女はポカンとした顔でこちらを見ている。続けて俺は畳み掛ける。あぁ、恥ずかしい。
「俺と同じ立場の君にだから言う。俺の『夢』は大富豪になることだ!もしもその夢が実現できたら、君の夢の実現にだった、きうっとちかづく!お互いの夢に向けての『最大限の努力』につばがると思うんだ!」
「・・・・・・ぷっ・・・・・・ハハハハハハ!おっかしい!大富豪って!小学生じゃないんだから!」
「そ、そんなと言うなよ!」俺だって恥ずかしかったんだ・・・・・・。
「・・・・・・いいよ」
よっしゃ!しかし俺はポカンとしたような表情を続ける。
「・・・・・・だから、いいよ。って言ったの!協力してあげる。けどその代わり、大富豪になった時には私の『夢』を叶える手助けもしてね?」
「お、おう!当たり前だ!」
その時、俺たちが話していた公園の入り口に高そうな黒い車が止まった。そして中から降りてきたかっこいい20代前半くらいと思われる男性は、俺たちのほうに近づいてきた・・・・・・。