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1億円もらったら  作者: 尾石志士夫
2/4

「あなたの人生で一番影響を受けた本はなんですか?」「そりゃ預金通帳に決まってるよ。」

 −−昨日のあれはなんだったんだろうか。俺はあの後、連れ込まれた建物から出ると、大宮駅にいたのだ。確かに俺が通っている高校から大宮は少しの距離だが、そういう問題ではなく。まずあんな胡散臭い組織なのに建物の所在地を知られてもいいのか?俺がもしも警察に"略取"としてこのことを伝えたら・・・・・・1億円が没収されるのか。それは確かに得策とは言えない。そしてもっとおかしいのが、俺は建物から出たら、"大宮駅"にいたのだ。駅構内に、あんな建物あったか・・・・・・?そんなことを思いながら、俺は埼京線で家に帰る。

 まぁ、だいたい一億円なんて、あの時は本当だと仮定したけどまだ本当だと決まったわけじゃない。振り込まれてから考えても遅くはないはずだ・・・・・・。

 

 

  2日後


『100,000,000』

「まじか・・・・・・」思わずそんな言葉が口をついていた。パッと見じゃ、何円なのかも判別出来ない。俺はそんな大きすぎる数字に多少恐れおののいていた。しかし、そんなことも言っていられない。あの時の3つの約束さえ守れば、このお金を自由に使っていいのだ。問題はこのお金を使ってどうやって大富豪になるための最善の努力をするか、だ。


 翌日、俺は学校に行く。1億円とかあったら学校とかやめて自由に暮らしたい、などと以前は思っていたが、実際にそのお金を手にすると、そういうわけにもいかない。

 そして俺のクラスである2年4組の教室の、廊下側一番後ろの席に着く。落ち着いてお気に入りの席だ。

『もし1億円あったら何する?』何度か聞かれたこともある、おきまりのたらればネタだ。しかし今その質問をされたらきっと本気で考え込んでしまうだろう。俺の思うより、大金を手にするということは大変なことらしい。そんなことを考えていると、午前中の授業は終わった。そして少ないはない数の友人と、昼食を摂る。少なくはない数の友人と談笑しながら食べる。少なくはないを繰り返し用いたのには他意はない。

一緒に食べるメンバーは能天気そうな運動部連中だが彼らといるとなんとなく楽な気持ちになれる。

 そして放課後、家に帰り資産運用やらなんやらについて調べる。

「はぁ・・・・・・」正直、どうしたらいいのか全くわからない。投資やら資産運用やらと言っても素人の俺がそんなことをしたらマイナスにしかならないんじゃないのか。突然大金を手にした宝くじの高額当選者が破産してしまうのは、安易にこういうことに手を出してしまうからではないのか。そんなことを思いながらPCモニターに映るニュースサイトに目を通していた時、俺の目に驚くべきニュースが飛び込んできた。

『埼玉の女子高生、米大震災に1000万円を寄付』

この前の起きたアメリカの西海岸で起きた地震は確かに大きな規模だった。しかし今注目すべきはそこではない。

これは・・・・・・俺と同じ立場の、日本にあと6人いるはずの、1億円を持つ者なのではないか?普通の女子高生が急に1000万円も寄付できるわけないし、そんな収入がある女子高生がいたとしても、その人間は世間に名が知れ渡っている有名人だろう。記事を見ていくと、寄付をした女子高生の名前が載っている。

『賭井千賢≪かけいちさと≧(17)』

「賭井・・・・・・?」それって、昨日の・・・・・・『私の名前は賭井貞子』昨日の、あの今思えば超絶美人なお姉さんの、言葉が俺の頭に浮かぶ。どついうことかはわからない。が、これは会ってみるしかない。そして賭井千賢の『夢』が俺と協力することで達成に近づくのなら、ギブアンドテイクの関係を結べるのなら・・・・・・それはきっと、『大富豪』に近づくことにもつながるはずだ。

これしかない!しかも女子高生!

そこからの俺の行動は早かった。

このご時世だ、ネットで調べれば大抵のことは出てくる。賭井千賢の高校を調べ上げ、彼女に会うために俺は埼京線と野田線を乗り継いで彼女の元へ向かった。


–––––埼玉県春日部市。サトーココノカドーとかが出てくるあの永遠の5歳児のギャグ漫画の舞台でもある街である。そしてこの街に恐らく、俺と同じ立場の女子高生がいる。そして恐らくその女子高生は、俺に1億円を渡した組織の一員である賭井千賢となんらかの関わりがある・・・・・・。

俺が彼女を見つけるために春日部でどうしたか。聞き込みである。それらしい制服の高校生を見つけては「賭井千賢さんって知ってるかな?」と声をかける。その姿が完全に不審者であったらしいことは今は言及しない。

そして集まった情報によれば、彼女は生徒会の仕事があり学校を出るのは午後7時頃になるらしいということだった。そして、学校の近くで彼女が帰路につくのを待っていた時、俺の背後から何者かが俺の肩を叩く。

恐る恐る振り返ると―――――そこには少し茶色がかった髪が肩にかかりそうなくらいの長さまで伸びた、俺の探している女子生徒と同じ制服を着た、可愛い女の子がそこにはいた。

「あなたですか?私について聞いて回っているという不審人物は!」




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