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始の章―イマジネーション―  作者: 風純蓮
序の話―取り巻く現実―
8/60

行方不明

 翌朝。何か最近全く気が休まらないなと思いつつ起きると、奴らは既に起きたのか布団がもぬけの殻である。

 起こしてくれても良かったのに……心の中で独りごちに愚痴りながら、手早く洗面と着替えを済ませる。寝癖は幾ら酷くても直すのがめんどくさいのでそのままだ。

「……?」

 食事処はこの部屋からそんなに離れていない。だというのに静寂が耳に痛い。

 一体なんだと思いながらもキッチンに行くと、テーブルの上にラップのかかった皿が2つばかり置いてある。でもって典型的な洋風の朝食が盛られていて、それらが俺の分である旨が書かれた紙が添えてある。というわけで平らげた。

 さて、問題はこの後だ。皆の分の食器も纏めて洗いつつ、何で誰もいないのかを考える。

 どうせみんなしてどこかへ遊びに行ってるのだろうが、流石に俺だけ無視されるのは辛いものがある。

 やがて皿洗いを終えて、念のためにと屋敷――ではなく別荘中を探しまくり、冬木をも含め誰もいない結果に落ち着いたので俺は大人しく部屋に戻る。しかし暇なのでスマホを弄ろうと電源を入れたら、神楽から2件のメールが届いていた。


『このメールを見たら連絡して』

『たすけて』


「……」

 送信時刻は順番に凡そ7時と8時くらい。でもって現在の時刻は8時を過ぎた辺り。

 だからといって何の事だかさっぱり分からないが、気がかりなのは2通目の『たすけて』とだけ書かれたメールである。

 一体どこでピンチに陥ってるやら。とにかく手がかりは――と模索しようとして、更に不在着信が入っていることに気付く。合わせて留守電が1件入っているので、とりあえず再生してみると。

『月宮君、緑の――きゃあっ!?』

 たったの3秒で終わる。

 息を切れさせつつ、何やら慌てふためいた様子だった。緑の――と言いかけていたが、何のことだろう。


 ――考え初めてすぐ、扉を思い起こす。


 吉良が開けるなと言った、場違い感満載なあの緑色の扉。

 まさかみんなあの中に居るのか――とロクでもない予感が脳裏をぎると。

 気付けば俺はあの扉の前まで来ていた。

「……」

 緑と言って、逆に思い当たる節はここしかない。

「うおっ!?」

 するといきなりスマホが鳴って、傍から見たら滑稽と思えるほどには飛び上がって驚く俺氏。

 着信音からしてメールである。誰だと思いながらメール画面を開くと、なんと――数分前に吉良からだった。

 あいつも俺もスマホだ、通信速度からしてメールなどほぼ瞬時に届くはずだが、一体何ゆえ数分の間が開いて届いたのだろうか。

 ――考えても仕方ないと察して、とりあえず本文を見る。文面にはただ一言。

『緑の扉』

 とだけ。

「……」

 さて、神楽は明らかに俺に助けを求めている。でもって吉良も、緑の扉とだけメールを送ってきた。

 これはもう扉を開けて中に入るしかない。もしかしたら俺が寝ている間に、あいつらがとんでもないことに巻き込まれているのかもしれないし。

 というわけで意を決して、俺は勢いよく扉をあけた。

「――あれ?」

 するとその先は、部屋ではなく階段だった。明かりが無くて見難く、ひたすら暗闇に包まれた地下へと続いている。

 急いで部屋に戻って非常用の懐中電灯を持ってくると、俺は早足に階段を駆け下りていった。

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