酒に溺れるクリスマス
「ニヤニヤ」
「……」
「ニヤニヤ」
「……」
「ニヤニヤニヤニヤ」
「……っぁぁぁぁぁあああああうるせぇえええええッ!!」
酒井を思い切り殴る。
「擬音つけてんじゃねぇよ気持ち悪い!」
長いこと里美を宥めた後、家に戻るなり酒井は俺をからかっている。
いや、須藤も神楽も零次も……全員だな。
「だって、なぁ?」
酒井が須藤に振る。
「う、うん。だって2人とも、帰ってくるなり空気がすごいことになってるんだもんな……」
「いやぁ、めでたいですねぇ。今晩はクリスマスケーキじゃなくて、赤飯のほうがよかったですかねぇ?」
冬木まで。
「おめでと」
神楽も神楽で珍しく、少し下品にニヤニヤしながら俺を見ている。
「つーきみやーく!? は、は、は、は、は、破廉恥!」
「何が破廉恥じゃ」
零次についてはもうよく分からない。
俺の家で開かれたパーティは、波乱に満ちている。
「……」
青松はというと、俺をじっとみつめてから。
「学校のみんなに拡散です」
しれっととんでもないことを酒井に言って。
「よっしゃそれいいね青松ちゃん!」
酒井が調子乗ったので。
「やったら、分かってるよなぁ?」
とりあえず言葉を重くして、指の関節を鳴らしながら酒井を脅しておいた。
まあ、自ずと広がるとは思うがな。その時はその時だ。
「でも良かったじゃん、月宮」
「須藤、お前もからかうか」
「いいや、僕は祝ってるだけさ」
さて、男性陣と青松がガヤガヤやっている間、女性陣はというと。
「里美ちゃん!」
「な、何?」
零次から尋問を受けている里美の姿がある。
「あ、あ、あああああんなことやここここんなことしたのぉ!?」
「いや、まだしてないから」
苦笑している里美は何時になく余裕がなさそうだ。
「ま、まだ! まだっていうことは!」
「えぇっと……っていうか何でそんなこと聞いてくるのさ!」
「そりゃああああもう! 里美ちゃんの貞操を守りゅために!」
「のんだくれさん、呂律が回ってないよー?」
「ああああああああああもおおお夜も寝れないどうすればあああああ!?」
本当に零次は何なんだ。いつも大人しい引っ込み思案なアイツに一体何があった。それとなく神楽に耳打ちすると。
「親友を恋人に預ける子の気持ちは複雑、らしいけど」
「だからってあんなに取り乱すか普通!?」
「これは多分、女心ってやつ」
「……」
それを言われちゃお終いだ、大人しく里美と零次のコントを見守――ろうとした矢先。
「さあ皆さん、こちらをどうぞ」
「何でワインもってきてんだよっ」
グラスに赤ワインを注ぐ冬木の姿があった。
そういえばコイツ、俺らより年上――っつーか大人なんだっけ。
「――さてはお前、もう零次に飲ませたな?」
「いえいえ、そんなことしませんよ。ささ、どうぞどうぞ。お酒の力を借りなくては出来ないこともあるでしょう」
「それ絶対翌朝後悔するやつだよな? そうだよな!?」
――とまあ、とりあえずチャレンジ精神から酒を飲んで。しばらくしてそれぞれ酒に対する応答で分かったことは次の通り。
須藤は人並み。神楽と里美は酒に強い。青松はウワバミ。酒井と零次は恐ろしく酒癖が悪い。以上である。俺は多分、記憶がしっかりする辺り普通だろう。冬木は車の運転手とのことで飲めずに居たが、酒には強いですよとの本人談がある。怪しい。
「あああああああああああ!? ちょ、ちょっろさろみひゃん!? なんでスッポンポンなのォ!?」
「いや、普通に服着てるけど……」
さっきまでオーバーヒートしていた零次のフィーバータイムが更に加速している。
一方、酒井はワイングラス片手に冬木の肩をバンバン叩きながら。
「いやあああアンタ最高だぜ! イカしてるねぇ全くぅ!」
「あ、あはは……これは飲ませないほうがよかったですかねぇ?」
冬木をも苦笑させるレベルで酔っ払っている。
身内全員リア充なのが幸いである。こんなに五月蝿くては眠れないだろうが、妹は恐らく朝帰りだし、両親も今日はホテルに出かけていることだろう。
「みんな元気だね」
「うん」
大人しく傍観しているのは須藤と神楽である。
――しかし、時間が経って酔いが本格的に回りだした頃。
「うひょおおおおおおおあああああああああ!?」
「ほあああああああああぁぁぁああああああ!?」
酒井と一緒にキチガイへ変身した。なんで酒を飲んだらキチガイになるんだよお前ら。
「ふっふー、どんどんのむでーす。ひっく」
青松もいよいよ怪しい。完全に八岐大蛇顔負けの飲みっぷりである。
しかし、最もインパクトの強かったのは。
「よっしゃあ飲むんですよおまいらァァ!! もってきたやつ全部空にするまで寝かせんぞおおおおお!!」
悪乗りで飲んだ冬木が一瞬でキチガイに変身していた。だからなんでキチガイになるんだっつーの。
――もう泊まり確定だな今夜。
「……」
零次は酔いつぶれている。
「さろみひゃあああああああああん!」
「ひゃッ」
と思ったら違った。ものすごい勢いで里美に抱きついた。
「らめ、らめらよ! そんなはれんひにゃあ!」訳:だめ、だめだよ! そんな破廉恥な!
「だ、だから何もしてないって……」
――こうしてみると冷静な自分が恐ろしくなってくる。
やがて夜は更け――――




