全てを思い出して
クリスマスパーティだと騒ぐ酒井、その他諸々の連中を置いて、俺は吉良との約束どおり三條割公園まで来ている。
念のため栞を持参した。何かヒントになればと思って。
「――やあ」
「おう」
病み上がりの吉良のお出ましである。
結局2学期の間は殆ど休んでいたようだが、出席日数は大丈夫なのだろうか。
――って、そんなことより。
「来たは良いけど、結局なんなんだ?」
「……」
吉良は公園の一角、そこにあるジャングルジムに背中を預けながら。
「やっぱり、思い出せない?」
「――詳しくは、な。でも、つくづく思い出しつつあるんだよ。俺とお前と、この場所で何かあったんだってことは……」
ポケットから栞を取り出す。
「コイツが報せてるみたいだしな」
「……!」
すると吉良は、驚き丸出しの表情を見せた。やっぱり、コイツが鍵か。
「……えっとね。もう10年以上も前になるかな――私と君、ここでいつも一緒に遊んでたんだよ。きっかけは、いじめられてた私を助けてくれたとき以来かな。それで私、貴方にクリスマスプレゼントを贈ったんだけど……」
「――まさか、この栞か?」
「うん。それで、何も用意してなかった君が私にくれたプレゼント、何だったと思う?」
「……」
「私、すごく嬉しかったんだ。その日から――君のこと、好きになってた。だから思い出してほしくて、きっと……もう1人の私が出てきちゃったんじゃないかな」
――思い出した。思い出したぞ、俺があの日――やっと思い出した今から10年前、俺が吉良に"したこと"。
「私はもう一度、君に栞を贈るよ。だから、同じプレゼントを返してほしいな――なんて、ごめん。おこがましいっていうのかな、こういうの」
「いいや、くれてやるよ」
「っ!」
俺は、泣きそうな吉良の身体を抱き寄せ、そのまま唇を奪った。
これで、2度目。
「――遅くなってごめん」
「……遅すぎるよ……馬鹿!」
――当初の俺の目的は何だった。未だ記憶は混乱している。
だが、そんなことはどうでもいい。
エターナルマザーが俺の知る力を持っている限り、またあらゆる手段を使って目的を達成させようとするだろう。
だったら今は、少しだけアレに逆らってやる。
らしくもない様子で泣きじゃくる吉良里美。俺は彼女を選んだ。




