ひとつきに亘るヒント
「っ!?」
深夜2時。またあの夢だった。
まったく気味が悪い。得体の知れない夢を見ていたのは分かるが、夢の内容が全く思い出せないし、中途半端に起きるから眠気も凄まじい。
だが、どうやら今日は違ったらしい。
「……栞」
そうだ。夢の中で、確かに思い浮かんだ。
すっかり目が覚めた俺は、青松を起こさないように部屋を探る。
机の引き出しから押入れの奥まで、音を立てないように慎重に。
――すると。
「あった……」
発見した3つの栞のうち、1つだけ明らかに色褪せている――鳳仙花の押し花で彩られた栞。
――だが、だからといってどう、ということはない。何故この栞が引っ掛かるのか、全く分からないのだから。
少しは夢の手がかりになるかと思いきや、どうやらそうではなかったようだ。結局なんだったのやら。
しかし考える暇や余力はなく、再び襲ってきた睡魔に従って寝ることしか出来ない。気付けばもう11月だ。時間が立つのは早いもので、吉良が学校に来ないというだけで俺は普通の学生生活を送っている。
温い布団が恋しくて、とりあえず布団に潜り込む。
「……」
ただ、ほんの僅かに引っかかることが、寸での所で眠気を妨げている。
あの狂った吉良が叫んでいた「思い出して」という言葉。彼女は一体、俺に何を思い出させようとしたのだろうか。何となく、栞と関連していそうな気がするが――如何ほどのものかは想像できない。
「はぁ」
結局、朝になっても一睡も出来ずに土曜日の睡眠時間を無駄にしたような気がした。こんなことなら折角だ。俺の過去に何があったのか、何とかして突き詰めてやる。
吉良が精神科に入れられて、かなりの日数が経過した今日。今なら精神状態が安定しているとのことで、俺は吉良に会いに行くべく、若干冷えかけている空気を切り裂きながら自転車を漕いでいる。やがて病院に到着して彼女との面談が始まり、真っ先に俺と吉良の過去に何かあったかを尋ねると。
「……」
彼女は苦笑するのだった。
「もう1人の私から聞いたのかな?」
「あぁ。聞いたというよりは、叫んでたがな」
「ははっ、そっか」
だいぶ安定してきたのか、今の吉良は今までの吉良だ。ただ、少し元気がないようにも見えるが。
「えっとね……きっと私の口から言うより、実際に見て思い出すほうがいいかもしれない」
「?」
「12月25日、"三條割公園"に来て。きっと全部思い出してくれると思う」
「……そうか」
――これほどのヒントがあっても猶、思い出せなかった俺は馬鹿なのかもしれない。当日になって、俺は昨日の俺を呪った。もっと早く思い出すべきだったのだが――12月25日に思い出したというのは、ある意味丁度良かったのかもしれない。




