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始の章―イマジネーション―  作者: 風純蓮
過程の話―虚ろなる現世―
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転移してきた青松

 あんな大型の台風なんか見たことが無い。現実的にというか、あれは気象学的にありえない気がしてならない。それにあんな巨大な台風が来たら、もし晴れたらなんて言ってたけど晴れなんざ絶対ないわな――なんて思いるる登校した今日は終業式で、友達はみんな俺を芳隆と呼んでいた。

「……? 何?」

 そして久しく通常の神楽を発見して胸を撫で下ろす。

「いや、なんでもねぇ」

「へんなの」

 とりあえず、この未来が如何動くかだな。異世界へ飛ばされないように気をつけながら行動しないと。エターナルマザーが何かしら意図的なプログラムの書き換えを行っているならば、今回この現在において矛盾だらけ且つ不測の事態が連発してもおかしくない。


 ――言ってて早速みつけたイレギュラーは、流石にこれはおかしいだろと思うレベルのバグだった。

「おい」

「?」

 下校途中。書類上だけ存在してて稼働していない工場が立ち並ぶ、旧工場地帯を歩いているときに見かけた――おっかなびっくり、青松の後姿に声を掛けた。

「おー、芳隆。会えてよかったです」

 相変わらずの服装でお出ましである。

「?」

 青松は――俺の事を覚えているようだ。

「容姿が違うのに何で俺だと分かった?」

「アタシは妖怪の力があるです。それくらい分かるです」

「そ、そうか」

「ところで、ここはどこです? さっき、突然空と大地が崩れ始めたと思ったら――気付いたらここにいたのですが」

「……」

 しゃあない、説明してやるか。青松には力になってもらえるかもしれないし。

「詳しく話すと長くなるから、一部割愛するけど、ここはいわゆる異世界だ」

「はぁ? 異世界?」

「お前から見たらな。俺にとってはお前の世界が異世界で、この世界は沙耶にとっても異世界だ」

「パイパイが元々居た世界……って、パイパイがいるですか!?」

「まあ待て、落ち着け。この世界の沙耶は、きっとお前の事を知らない」

「え、なんでです?」

「どういうわけか俺も知らんが、この世界の沙耶と、出雲神州にいた沙耶とはまるきり別人なんだ。名前が同じってだけで、見た目は勿論性格も違う。俺が沙耶と友達、でも沙耶は忘れているっていう話しただろ? あれと一緒で、だから今回はお前が俺の立場になる。分かり易く言えば、お前と沙耶は友達、しかし沙耶は忘れているっていうパターンだな」

「そう、ですか……」

 しょんぼりとしてしまう青松だが――とりあえず納得はしてくれたかな。

「さて、元の世界の様子も気になるけど、こっちからも聞きたい事がある。不躾ながら、妖怪としてのお前について」

「なんです?」

「お前の妖怪としての力、この世界でも発現するか?」

「発現するですよ。でも残念ながら、元の世界とやらから離れてしまった所為か、一般人にもアタシの姿が見えるようです。さっき通りすがりのオッサンに身体触られて、イラッて来て殴って追い払ったです」

「姿が見える――それだけか?」

「それだけです」

「分かった」

 なら別に、青松自身に気にかけるようなことは無いかな。精々服装だけだ、あとで新調してやるとしよう。問題は――青松がここにいるという事実。一体何が始まろうとしているのだろうか。出雲神州では地面と空が崩壊、この日本では未だ嘗て無い大規模な台風の到来、そして存在するはずの無い未来。

「ところで、です」

「ん?」

「アタシ、住む所が無いです。どこか良い場所ないですか?」

「あぁ、それなら俺の家に来ると良い。お前、あれだろ? 木の実と水で生きてけるんだろ?」

「はい」

「なら俺の家でいい」

「ありがとです」

 身内が何か言ってくる気がするが、幸いにも青松の身体は小柄だから隠せるし、声がデカイわけでもなければお喋りなわけでもない。それに排泄も必要ないらしいとなれば、それくらいの居候程度なんてことない。

「じゃあ案内してほしいです。さすがのアタシも野宿は勘弁です」

「分かったよ。でもその前に」

「?」

「お前、その服、どうにかしろ」

「え」



 ――ということで時は過ぎ、場所はショッピングモール。



「……」

「こ、こんな感じで、どうかな?」

 零次香苗――我らが不思議探求部の癒し系部員に、従妹の服のセンスが色々危険すぎると伝えた上で、青松の服装を新調してもらった。誤解されないために言っておくが、お代はちゃんと俺もちだからな。

「おーおー、上手いこと仕上がってんじゃん」

「な、なんかくすぐったいですが……」

 モジモジしながら零次を見上げる青松である。

「大丈夫、すぐ慣れるよ。さっきの服装に慣れ過ぎちゃったんだね……」

 まあ、苦笑するのも無理はない。さっきまでの服装がシュールすぎたんだ。露出多いくせに装飾ばっかり目立つ服着てりゃ苦笑も免れないだろうよ。

「我ながら可愛くしてあげれたと思うんだけど……芳隆君的にどう?」

「あぁ、さっきよりは非常にマトモだ。それにちゃんと可愛くなってるぞ」

「――そう、ですか」

 コイツの赤ら顔というのも貴重だろうな。写真に撮って、武士神楽に見せたかったぜ。

「それじゃあ、私帰るね」

「あぁ、サンキューな」

「いいの。また一緒に遊ぼー」


 去っていく零次を見送ってから。


「――何とゆーか、ふわふわした人だったです」

「元からあんなやつだ」

 さて、予備の着替えと寝巻きやら下着やら入った服を持たせ、今度こそ俺の家に案内してやった。


 ――道中思ったこと。青松の洗濯物、いつ洗ってやろうか。

 学校帰りなら誰もいないからその隙に洗って、俺の部屋で除湿最強にして乾かすしかないか。最悪コインランドリーである。


「おぉ、ここが芳隆の家……なんか雰囲気が神社と違うです」

「これは洋風ってやつだな。あの神社はな、この世界じゃ和風なんて言ったりするんだ」

「ようふうに、わふうですか」

 流石異世界人、なんか発音がぎこちない。趣きは一緒でも、聞き慣れない単語を口にするのは難しいらしいな。

「でも何だかホッとするです」

 早速床に寝転がり、俺んちの飼い猫を見つけてじゃれ始める。

「この生き物、この世界にもいるですか」

「猫っていうんだ。そっちじゃ何て呼んでる」

「ナマクラです」

「え? な、ナマクラ?」

「切れない包丁の如く役立たず――ということでナマクラです」

「なるほど……」

 まあ確かに、犬よりは役立たずだろうな。

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