助けるために
次に目が覚めたとき、目の前は正に地獄絵図といった風景だった。
ここは――恐らくヴェガの町だ。確証が無いのは仕方ないと言いたいところである。何せ町全体が火の海なのだから。
「アンセムを……芳幸……たか……ッ、返し、テ……!」
目の前には、相変わらず真っ黒な炎を背負う神楽。しかし後姿だ。
でもって神楽の前には、屍となった人間が何人も倒れている。そこには冬木たちのみならず、見知らぬ戦士か兵士か――その辺りの人間も血だらけになって倒れ伏していて、中には俺の姿もあった。
あれは――さっきまで芳幸と名乗っていた俺である。まったく、狂ってやがる。一体神楽の身に何があったというのだ。
「……」
ふと俺の中で、何かが大きく跳ねた気がした。心臓の脈と共に、全身に鳥肌が立つように。
「あ……」
そして気付けば、俺は神楽の首にチョップを入れていた。首をトンと叩いた拍子に気絶させるという、アレである。その"アレ"はどうやら上手くいったようで、そのまま彼女は気を失い、倒れそうになったところを抱えてやった。背負う炎は衰えないが、熱は感じられない。
「神楽……」
すっぽりと腕の中に収まった彼女は、出てるところ出てるくせに細くて華奢である。いつか抱いたときと同じ、脆くて儚い柔らかさが腕の中にある。
――コイツを助けるには、どうしたらいい。
考え始めた途端、俺の視界は再び暗転した。さてと、次は何処で目覚めるやら。
最近何だか気絶の頻度が多すぎる気がするが、段々慣れてきてしまった辺り人間って怖いなと思いつつ――幾許かの時が過ぎて視界に再び光が差し込んだので、俺は目覚めの本能に従って目蓋を開いた。




