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始の章―イマジネーション―  作者: 風純蓮
開始の話―異界冒険譚―
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変わり果て

「やっぱり異世界だったかあああああああああああッ!!」

 落下しながら、叫ぶ。俺以外にも各々方、悲痛に叫んでいらっしゃる。かなり上空に居るのか、地面が見えてこないが――これでは美しい空の風景を楽しんでいる余裕が無い。このまま落下すれば間違いなく死に至る。たとえ地面という概念が無かったとしても、木星のようであれば同じく死に至る。

 さて、この様子じゃ神楽も死んでるかな――と思いながら走馬灯が現れるのを待っていると。

「……?」

 何か柔らかいものにでも突っ込んだか、落下速度が急激に抑制され、忽ち俺達はふわふわと空中に浮くようになった。

「な、な、何……」

 隣でノエルが怯えている。ルークに至ってはルージュさんにしがみ付いて離れようとしないが、意外なのは冬木が多いに怯えていることである。

「わわわわ私はたたたたた高いとこりょぎゃにゃにゃ苦手ェなんでしゅお!?」

「ぜってー漏らすなよ」

 言いつつ状況を確認してみると、本当に俺達は空中に浮いている。雲が床になっているわけでも無ければ、上昇気流が発生しているわけでもない。どういうことだと周囲をキョロキョロと見回していると――


「……」


 ――なんと、"神楽"と目が合った。背中に闇の炎を背負い、瞳を真っ赤にしてこちらを見据える彼女と。


「……何してるの?」

 しばらくしてから、彼女が呟く。

 声に反応した皆もそちらへ振り返ると、やはりというか大きく驚いた。

「お前を探しに来たんだよ。そっちこそ何やってんだよ」

「――とりあえず、地面に降りる。この下はヴェガ……」

「お、おう?」

 そのまま、ゆっくりと降下していく俺達。ヴェガの町へ降り立つのには、凡そでも5分とかからなかった。



「……で、神楽。お前そのオーラどうしたんだ?」

「……」

「おい、何とか言――ッ!?」

 何とか言ったらどうだ――という言葉は、途中から声に出なかった。

「ひっ!?」

 所々、悲鳴が上がる。

 何故なら神楽が短刀を持ち、一瞬で間合いを詰めて俺の喉元へ突き立てたのだから。

「か、神楽……?」

 まさか俺に攻撃してくるとは、一体どういう了見だろうか。

「私は――貴方を、私のものに――」

「は?」

 一瞬、言っている意味が分からなかった。だが意味はそのままで、俺と目を合わせている神楽は――強力なバインドを俺にかけようとしてきた。

「チッ」

 そこから先、俺の思考回路は一時停止する。反射に身を任せ、イマジネーションでバインドを跳ね除けた。続いて短刀が握られている右腕を掴み、捻りを入れて隙を作ってから神楽と距離を取る。

「うっ……」

 捻られた手首に痛みが走ったか、神楽は一瞬歪んだ表情を見せたが、すぐさま冷静になった。さっきまでと同じ、ハイライトの消えた虚ろな目つきである。

「一体どうしたんだよ神楽!?」

「許さない……」

「はェ? 俺って何かしたっけ――!?」

 いつも以上に表情が皆無で、何の意図があるのやら俺には全く読み取れない。そうしている間にも攻撃の手は休まらないので、仕方なく回避に徹する。なるべく傷つけまいと必死になる。

「スタフィック!」

 すると、状況を察したらしいアリシアさんが魔法を放ってくれたようだ。半透明の白い玉が一発、神楽目掛けて高速で飛んでいく。

「無駄――ッ」

 しかしスタフィックとやらは、なんと神楽の短刀で真っ二つに切り裂かれた。これはあれか。魔力を斬る的な、いわゆるチート系の武器か。とはいえ、その魔法が稼いでくれた時間は十分だった。更に神楽と距離を取り、背後に吉良、冬木、アリシアの3人も控えてくれる。ルージュさんは――ノエルとルークの守備に徹しているようだ。

「どうして? ねぇ、なんで?」

「何がだよ」

「私を――う、うわあああああああああああああッ!?」

 すると突如、神楽が背負っている闇の炎らしきオーラが爆発した。町中だってのになんてことしやがる。

 これじゃいつ憲兵を呼ばれるやら――などと余計な心配をしている暇は無いらしい。常に余裕そうなアリシアさんが、形の良い眉根を異様なまでに顰めている。

「芳幸、気をつけなさい。あの子、何かに操られているわ」

「えぇ? そんな馬鹿な、アイツは寧ろ操る側ですよ?」

 冬のヴェガに見合わない、巻き起こる熱風に吹き飛ばされまいと足を踏ん張る。

「操る側だからこそよ。この世界では有名な話だわ。他人を操っていたつもりが、実は更に上の存在に操られているだけだった――なんていう戯曲が実際にあるのよ」

「マジかよ……」

 信じたくないところだが、アリシアさんの言うことも一理ある。今の神楽は――なんというか、神楽ではないのだ。

 いつだって真っ直ぐだった目つきも今や気が抜けたようにふわふわしていて、下手したら別人ともいえるであろう目の前にいるのだから。

 そんな神楽は、爆発によりオーラの濃さを倍増させながら。


「――アンセム」


 ――と、確かに呟いたのだった。

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