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始の章―イマジネーション―  作者: 風純蓮
開始の話―異界冒険譚―
23/60

確保、そして難問

 神楽たちは完全に目を覚まし、神妙な面持ちで俺の帰りを出迎えた。神楽が状況説明をしてくれたのか、各々特に慌てる様子でもなく落ち着いている。

「何しに行ってたの?」

 着くや、神楽が寄ってくる。

「パラレルワールドの可能性を確認してきた」

「どうだった?」

「否定。ついでにノエルたちの行き場も確保してきた」

「?」

「そのうち迎えが来る。吉良だよ」

「あぁ……分かった」


 一連の会話を終えた後。ふと気になることに気付いて、深い緑髪を揺らすノエルへ歩み寄る。

「ノエル」

「何よ?」

「魔法、使えるか?」

「えー……えっと、私じゃなくてお母様に言ってよ。私、まだ拙いもの」

「――と、娘さんが仰っているようですが?」

 目線を変えつつ、アリシアさんに話しかける。

「使えるわよ」

「――そうですか」

「でもね、今まで使って来た魔法とは勝手が違うわ。何て言えば良いかしら……魔力って分かるかしら?」

「なんとなく。さしづめ魔法の源では?」

「そう――それが感じられないの。つまり無制限ね。強力な魔法ほど膨大な魔力を消費するけれど、この世界ではそれがないみたいなのよ」

 ――察した。それはきっと、超能力だ。魔法だったものが、この世界では超能力に豹変するのだろう。そうすると、俺らがあちらの世界で超能力を使うと一時的でも有限になるのだろうか。逆に、超能力が魔法に変わるように。

 でもそれなら凌ぎようがある。ノエルやルークはともかく、アリシアさんが魔法――面倒なので魔法と言っておく――が使えるなら、ウィルスの襲撃があっても一緒に戦うことが出来るはずだ。

「――それがどうかしたの?」

「いいえ、気になっただけです」

「そう」



 やがて沈黙を破ったのは吉良家からの迎えの車で、やってきたそれは飲み会の送迎に使いそうなマイクロバスだった。マイクロとはいえバスまで持ってるのか、流石だわ。

「皆様、歓迎致します。どうぞこのバスへお乗り下さい」

 しかも運転手は冬木だった。見たことのある顔だと思っていたら。

「冬木お前バスの運転できるのか」

「えぇ。たまに里美様が友人を多く招き、大規模なお泊り会を催されることがあるのです。そう言った場合はこのバスを使い、送り迎えをして差し上げるのですよ」

「どこまでも太っ腹というか、気が利くというか――優しい奴だな」

「当然ですよ。里美様の依頼とあれば、この冬木、どこまでもついていく所存ですから」

 相変わらず爽やかな奴だった。



 ノエルたちを吉良と神楽に任せてやっと一段落ついた頃、俺は立ち去ろうとした冬木を呼び止めて真面目な相談を持ちかけていた。内容は、俺自身で片付けるべき個人的な問題――身内にどんな顔をして会えば良いのかという、冬木ですら頭を捻らす難題である。

「貴方が失踪して約3日――普通は失踪とも言わない期間ですが、貴方のご両親のことです、きっと大慌てでしょうね」

「警察に捜索願が出てるっぽかったけど、こんなんで警察が動くのかね?」

「いいえ、動きませんよ。動いたとしても気休め程度です」

「だよなぁ」

 小学生ならまだ分かるが、俺は立派な高校生だ。高が3日家に帰らない程度で、普通は親も警察も騒ぎやしない。これが小学生だったり、行方不明になっている期間が長いなら分かるが。自転車の取り締まりを五月蝿く言って点数稼ぎや暇つぶしに勤しんでいるように見えても、こんな些細なことで動くほど連中も馬鹿ではないはず。

「警察に関しては何とでもなります。貴方が交番に顔を出せば、それだけで何事も無く終わるでしょう。問題は……」

「うむ」

 親に顔を見せた瞬間、飛んでくる台詞が何となく想像できる。

『アンタどこ行ってたの!? 今まで何してたの? 何か悪いことされて無い?』

 そんな典型的な面倒臭い質問を、俺が真面目に答えるまで投げかけることだろう。加えて説教までされては堪ったものじゃない。

「こうなったら作り話で誤魔化すか」

「貴方は物語の制作が得意ですか? 私は苦手ですが」

「残念だったな、俺も苦手だ。ついでに嘘も苦手だ。更についでに言うと親は些細な矛盾に直ぐ気付く。じゃなきゃ態々オメーに相談もちかけねぇよ」

「ですよね……」

 さて、これは本格的に積んだぞ。

「――では仕方ありません。気は引けますが、"彼女"の力を借りましょう」

「あ? 誰だよ?」

「着いてきてください。こちらです」

「?」

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