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始の章―イマジネーション―  作者: 風純蓮
開始の話―異界冒険譚―
22/60

戻ってきた世界

前回の話を更新しています。継続して読まれる方はお手数ですが、前回の話に一度目を通してからこの話をお読み下さい。

「……む?」

 目が覚めたので起き上がると、視界には見慣れた風景が広がった。

「ん? 戻って来たのか?」

 独りごちに呟きながら、目の前に聳え立つ建物を見上げる。見たかったような見たくなかったようなその白い建物は、なんと俺と神楽が通っている学校だった。

 目の前に、学校。つまり異世界から戻ってこれたという説が濃厚になるのだが、どうやらノエルたち諸共戻ってきてしまったようだ。みんなしてコンクリートの地面に倒れ伏し、静かに息をしているだけである。


 さて、ここで軽く状況整理をしてみる。

 俺と神楽は間違いなく、さっきまで異世界に飛んでいた。それも"うっかり"というレベルを通り越した次元で、夢でもなく本当に唐突に。やがてヴェガという町に降りて、腕輪直して、ノエルから声を掛けられて、最終的にグランツに――何をされた?

 思えば、あの意味深な台詞を聞いてからの記憶が無い。1ヶ月の間大人しくしてもらおうというのは、あちらから見た異世界に俺達を飛ばすということだったのだろうか。飛ばされた先が元の世界であるのは、偶然という言葉でも片付くだろうから置いといて。

 問題はグランツだ。状況と俺の思考回路が理論的に一致するならば、あの男は異世界だとかの事情に精通する者であることには違いない。何故なら俺らがここに居る理由とプロセスが他に見当たらないのだから。

 だとしたら、まずはノエルたちを元の世界へ返さないといけない。この世界が、俺と神楽が暮らしていた世界と非常によく似たパラレルワールドに過ぎないならば、俺ら諸共ノエルたちの世界へ戻ったほうがいいのだろうが――さて、どうしようか。

「……」

 考えている間に、俺は1つのアイデアを閃いていた。



 目を覚ました神楽にノエルたちを任せ、俺は夜の帳が下りている町を疾走する。

 行き先は俺の家だ。もしここがパラレルワールドなら"もう1人の俺"が居る――つまり月宮芳幸が2人いることになるだろうが、完全に元の世界なら俺は1人しかいないはずだ。

 さて、吉と出るか凶と出るか。

 学校から家まで然程遠くないことに感謝しつつ、俺は家の玄関を開けて自室へ入る。

「……」

 誰もいなかった。

 腕時計を装備しながら妹の部屋を訪ねると、奴はスヤスヤと寝息を立てて寝ている。親の部屋も同じである。

 今度は――町中の電柱と掲示板だな。


 掲示板には、この町で起きた最新の情報が掲示されるようになっている。いわば回覧しない回覧板であり、寄り合いのお知らせから迷子探しの依頼など、色々な情報が載っている。

 何故俺がその掲示板を見ようとしているかと言えば、俺の捜索願が出されているかを確認するためだ。うちの親はとにかく心配性で、俺が外で遊んでいると決まって6時半から30分間隔でメールを寄越してくるような人なのだ。ましてや友達の家に泊まりに行ったりすると、その日の夜は一睡もせずに俺からの緊急連絡が無いかスマホを眺めているというのだ。そうすると、俺は2日か3日くらいこの世界からご無沙汰してる。捜索願が出されていてもおかしくない。出してほしくは無いがな。たかが3日連絡が取れないだけで一々警察沙汰にされては面倒だし。


 だが掲示板には――ちゃっかりと俺の顔写真が載っていた。


「……ふぅ」

 とりあえず、元の世界に戻って来れた確証をつかめた。これにて一件落着。しかし一難去ってまた一難というように、片付けるべき問題は山積みである。

 まずはノエルたちの身柄をどうするかだ。この世界においては彼女達の国籍がなく、俺と神楽がノエルたちの世界へ飛んだときのように都合よく洋館が現れるわけでもない。

「……」

 ならばと思いつつ、賭けてみることにした。腕時計のついでに持ち出したスマホをポケットから取り出して、電話帳を開く。

「頼む、起きててくれよ……」

 祈ること数コール――連絡先の相手が電話に出た。

『もしもし?』

 相手は吉良――俺と神楽意外に、"普通じゃないこと"に詳しい人物の1人だ。

 因みに酒井はこの手の話に詳しくないらしいので、連絡先のリストからは除外済みである。

「夜分遅くにわりぃな。俺だ、月宮だ」

『……一瞬オレオレ詐欺かと思ったじゃん。久し振り、最近どうしたの?』

「それがさ――」

 事の顛末を話す。傍から聞けば妄言に過ぎないといわれるであろう話の内容だが、吉良は素直に聞いてくれた。

『ふんふん、なるほどね。そういうことだったんだ』

 そして納得もしてくれた。

『ようは、異世界へ行く手段が見つかるまでの間、そのノエルって人たちの身柄を確保してほしいってこと?』

「あぁ。迷惑なのは百も承知なんだが、どうかお願いしたい」

『――えっと、確保してあげたいのは山々なんだけどね……』

「やっぱりダメか?」

『ううん、全然ダメじゃないよ。でもね、最近ウィルスの活動が活発化してて――』

 曰く、こういうことだった。

 ウィルスの数が増えつつある昨今、この世界にとってイレギュラーであるノエルたちは真っ先にウィルスに襲撃される可能性がある。

 つまり、確保は出来るが危険が伴う――とのこと。俺たちから見てウィルスはウィルスであるように、ウィルスから見れば俺達はウィルスなのだ。故に、大きなバグ――吉良の言うイレギュラーであるノエルたちに加え、吉良本人と、俺や神楽を含む周辺人物たちなどの超能力者がこれほど一箇所に集まったならば、ウィルスが吉良の家を襲うのは必至となるに違いない――らしい。

『でも、他にアテがないんだよね?』

「あぁ……」

『だったら、なんとかしてあげるよ。これも何かの縁ってことで』

「すまねぇ……」

『いいの。それじゃあ早速なんだけど、ノエルって人たちと一緒に私の家に来て欲しいな。でもウィルスがいるかもしれないから、迎えの車を手配するよ。学校で待ってて』

「頼んだぜ」

 ――通話終了。俺は再び走り出し、学校で待っている神楽たちの元へ向かった。

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