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始の章―イマジネーション―  作者: 風純蓮
序の話―取り巻く現実―
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我が家内は戦争なり

 さて、超能力だの神楽との一件だので忘れかけていたが、絶対に忘れてはならない事項が俺の中で懸念されている。

 神楽を家に上げたまでは良い。そこから着替えのついでに飲み物くらい取ってくるかと俺がリビングに行くため、廊下の突き当たりにある扉を開けた瞬間。物凄い勢いで1枚の皿が飛来してきたため、俺は咄嗟に手元の着替えでガードした。

「いきなり何なんだよっ」

 運動エネルギーを消費しきった皿は床に落ちる――前に足で受け止め、ひょいと持ち上げる。

 投げた本人は――妹の真希まきだった。よほど全力で投げたのだろう、若干息を切らしている。

「お兄ちゃん……あれほどGが出たら来てって言ったのになんで来なかったの!?」

「いやまてそんな約束してねぇしGが出たとも知らされてないぞ」

 とりあえずジュースを用意しようと、台所へ歩き進める――

「問答無用!」

 ――と、今度は包丁が飛んできた。

「甘い……」

 音速にも等しい速度で投げられたそれを、俺は間一髪でしゃがんで避ける――が。

「うおっ!?」

 今度はその包丁が背後の電気ポットに命中し、衝撃で大爆発を起こした。

 咄嗟に前転して回避――に成功した。若干熱湯が掛かったが。

「はぁ、はぁ……相変わらず寿命の縮む家だ……」

「お兄ちゃんの屑馬鹿アホ変態! そんなお兄ちゃんは生ゴミとして収集されてしまえ!」

 ――そう。懸念すべき事項、そして決して忘れてはいけないこと。それは、家内が常に戦争状態であることだ。

 妹と姉が冷蔵庫を片手で持ち上げるという恐ろしい怪力の持ち主であり、今になって思えばコイツら超能力者ではと思って納得するのだが、何にせよ俺はその影響で生き延びるための回避術が身についているのである。

 ただし、気を抜けば即死。

 更にうちは一家そろって虫が苦手であり、特に妹が見つけた場合は騒ぎながら殺虫剤やら洗剤やら包丁やらを振りまくのでそれだけでこの家は一騒動になる。

 ――コイツの彼氏、ちゃんと生きてるのかな。

「わーったよ。で? Gは何処だ」

「さっきそこに居たけど……見失っちゃった」

「今の電気ポットの炸裂で死んでるんじゃねぇか?」

 何にせよ、Gの死体を確認しないことには妹が最悪家を全壊させる恐れがある。その前に何とかGを仕留めないと。

「――よし、お兄ちゃん。いいこと思いついた」

「お前の言う良いことは大抵ロクなことじゃねぇんだがな。んだ?」

「ドライアイスと、瓶と、水と、コルク栓で――」

「Gどころか台所がぶっ壊れるからやめようか」

「んじゃあトイレの漂白剤と――」

「混ぜちゃいけないもの混ぜるのはやめようか」

「なら水を電気分解して――」

「俺らまで死ぬからやめようか」

 全く、普段俺より絶望的に頭が悪いくせにこういうときだけアブナイ知恵が働くんだよなぁ。

「じゃあどうすんの!」

「そもそもGごときで発想が危険すぎるんだよオメーは。大人しく新聞紙で叩けや。政治家と同じだ、叩けば死ぬ!」

「さりげなくうちのお父さん非難してるよね……」

「はっ、お前は親父の肩持つのかよ? 娘の(放送禁止用語)を(危ない発言につき自主規制)って言われたのに?」

「いいの、お金貰えたんだから。(放送禁止用語)くらいどうってことないよ」

「されたのかよ! オメーは(自主規制)か! 彼氏に申し訳ないと思わないのか!」

「そのときいなかったもんね」

「――ん? ちょっと待て、それ言われてやられたのってつい1週間前だよな?」

「そうだけど……」

「お前、付き合って高が1週間……もう彼氏さんとベッドインするようになったのか。進んでるなぁ」

「そ、そんなんじゃないっての!」

 ――俺が言えたことじゃないけどな――っていうのは心の中だけの発言に留めておく。

「とにかく、Gをやっつけるぞ」

 ――そのときだった。ぶちゅうううう――という間抜けな音が響いたのは。

「ゴキブリは洗剤かければ死ぬよ。何やってるんだよ2人とも」

 食器用洗剤と、ティッシュに包まれたGの死体を持って兄貴の出現である。

 さあ、芳幸はどうする? 戦う、魔法、道具、逃げる――ここは、戦うべきだ!

 というわけで俺は先ほどの皿を掴み直し、投擲フォームに入る。

「え?」

 兄貴が戸惑っている間に――俺は兄貴目掛けて、皿を思い切り、全力で投げた。

「うわぁ!?」

「チッ、避けられたか……」

 投げた皿は避けられ、背後の壁掛け時計に命中。そのまま皿諸共木端微塵になった。

「いきなり何するのさ!」

「兄貴ィ……この間俺が貸した5000円、いつになったら返してくれるんだ?」

「忘れてた」

「――」

 黙って俺は、ポケットの中から小瓶を取り出す。

「お兄ちゃん――その砒素、どこから調達してきたの?」

 妹が引き攣った顔で聞いてくるので、仕方なく俺は違う小瓶を取り出す。

「それ、晩御飯の中に入れるのやめてね。超即効性のインスリンを食前に飲んだら普通の人は死ぬからね?」

「――チッ」

「舌打ちするところじゃないからね?」

 笑顔で、わなわなと手を震わせる我が妹が何とも恐ろしい。

 この際Gは捕獲できたみたいだし、さっさとジュース用意してお暇するか。

 ――着替えと風呂は、あとで。

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