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始の章―イマジネーション―  作者: 風純蓮
序の話―取り巻く現実―
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その後のこと

 皆勤賞というものがある。これは、学校がある日は必ず休まずに登校してきて、1年を通して遅刻や欠席の無い生徒に与えられる賞である。遅刻については曖昧なところもあるが。因みに3ヵ年皆勤といって、入学から卒業見込みとなるまでの間に無遅刻無欠席だった者に与えられる賞もある。これらは本人が健康的である証でもあるため、進学にしろ就職にしろ大きなプラスポイントとなるに違いない。

 俺は今のところ、その3ヵ年皆勤を狙っている。勉強こそしているが生憎成績はあまり良いほうじゃないし、俺が行きたい大学はそこそこ入学が難しいとの噂なので、推薦が通ればいいが現実はそういうわけにもいかないだろうから、せめて他に出来る事を――ということでPR事項を増やすべくそれを狙っているのである。

 なので翌朝、俺はイマジネーションをも利用して意地でも起きてやった。サボるか――などと考えかけていた昨夜の俺はどうでもいい、3ヵ年皆勤の方が重要だ。

 きっと神楽も欠席したくはないだろうから――幸せそうに寝ているところを申し訳なく思いつつ起こす。

「ん……」

 現在、朝の6時。学校には8時40分までに登校してなければならない。

 果たして、一度家に帰ってから諸々の準備をして間に合うだろうか。とはいえ風呂に入って、制服を変えて、どうせ始業式だけなので鞄を引っ掴んでダッシュするだけだが。

 ――こういうときに瞬間移動を実現できない自分の能力の弱さを怨んだりする俺である。

「おはようさん、神楽」

「おはよ……」

「遅刻するぞ、早く行こう」

「うん……」

 まだ寝惚けている神楽の頬を軽く叩きながら、俺は早々に服を着る。


 そうして何とか、俺も神楽も遅刻せずに済んだが。

「……」

 いつにも増して疲労感が満載である。

「月宮、大丈夫か? 最近心ここにあらずって感じだぞ」

「いや心ここにあるから。眠いだけだから」

 放課後。弁当食うついでに部活に顔を出すと、終わっていない夏休み課題を片付ける酒井が目に入る。

 なお、酒井が超能力者であることについては、冬木からの頼みで俺達は見て見ぬ振りをしている。本人に何をしたのか、冬木のみぞ知るので俺には知る由も無いが。

 とりあえず、今まで通りの関係と言えばいいか。合宿で起きた件についてはタブーであるとして。

「ほうほう、じゃあ俺の宿題を手伝ってくれ」

「何でそうなるんだ」

 いそいそと昼食の用意をしていると、酒井が弁当箱の前に山と課題を積んできた。

「あとで秘蔵の画像コレクション送っといてやるから頼む! マジで終わらねぇってこれ……」

「どうせ答えあるんだから、写すだけだろうが。それとお前の画像コレクション、全部エロいのばっかじゃねぇか」

「なんだよー、嬉しくないのかよ? 健全な男子高生たるもの、毎日"抜く"ことに勤しむべきだっつーの!」

「勤しまねぇよ」

 課題の山をそのまま返却し、広げかけていた弁当を完全に広げる。

 家に帰ると母親が何も言わずに渡してくれたそれは、おいしそうに様々ないろどりを添えたカラフルな弁当である。一見子供っぽいが、おいしいので気にしない。

「あぁ、それと。国語の課題は今日提出だ、先にやっとけ」

「ちょっと何言ってるか分かりませんね。国語? なんだいそれは?」

「すっとぼけてやがる。お前が赤点取ってた科目だよっ」

 何とか現実を見させるべく俺は国語の課題を引っ手繰り、酒井が一番苦手そうな表現分野の場所を見せ付ける。

「お前……なんて酷いことを……」

「いやだから写すだけだろ!」

「違う! 俺は、この紙を見るだけで吐き気を催すんだ! お前の弁当箱にぶっ掛けるぞ!」

「ぶっ掛けたら殺す」

「チッ……」

「何で俺が、舌打ちされなきゃいけないんだ!」

 全く、コイツの現実逃避加減はホントどうしようもねぇな。

 何て言ってるうちに飯も食い終えて、昼の2時――部活終了の時間となったので、後からやってきた他の部員に別れを告げ、酒井の悲痛な叫び声を無視して帰宅したのだった。


「はぁ」

 今日はもう、寝るべし。

 そう心に決めて帰宅したと思ったら、寝かせてはくれないようだった。

「……」

 何故か玄関先にいる神楽によって。

「――どうした?」

「会いたかった」

 やけに素直、だがいつも通りな雰囲気の神楽である。昨日の今日だってのにすまし顔しやがって。

 部活に顔を出さなかったのは――この空気を皆に悟られたくなかったのだろうな。特に吉良とか吉良とか吉良とか。

「どっか行くか?」

「どうでもいい」

「じゃあ寝るわ」

 すかさずビンタが飛ぶ。

「俺の家でよければ上がるか?」

「泊めてくれるの?」

「え……」

 途端にいたずらっぽい目つきになって、上目遣いに俺を誘惑してくる神楽。まったく、見てて飽きない奴だ。懐くやコロコロ表情変えやがって。

「――別にいいけど」

「そ。じゃ、お邪魔しようかな」

 ――お互いの気持ちは、先日改めて確認しあったばかり。故に問題ない。誰が何と言おうと無いのだよ。

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