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始の章―イマジネーション―  作者: 風純蓮
序の話―取り巻く現実―
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推理

 眠気こそあったが眠ることもなく、小1時間程度休めば直ぐに回復した。

 身体の調子を確かめながら立ち上がり、問題ないと把握してから神楽たちの元へ行く。状況を問うと、俺が休んでいる間にも既に進展があったようだが、あまり芳しい成果が出ていないのだという。

 そして吉良曰く。

「実はね、あの扉の先がこんなことになってるなんて、私も知らなかった。私にはお父さんから、世間に知れ渡ってはいけないほど貴重な家宝があるとしか言われてない。それがこんな、人体改造じみた実験室だったとはね」

 とのこと。

「実験室っていうか、既に正式実行されてるみたいだけど。このままだとあの人たちが超能力を奪われる。助けなくちゃ」

「……」

 超能力を奪うことが、必ずしも悪いとは限らないのではないか。この時俺はそう思っていた。

 俺のように超能力を歓喜して使っているも人もいれば、神楽のようにありのまま受け入れている人もいて、吉良のように別段気にしていない人もいる。だがその傍らで、自身の超能力を好ましく思ってない人だっているはずだ。

 あの中には、そんな人もいるのではないか。思うや否や、俺は机の上に置かれた書類を更に漁り始めた。

「何してるの?」

 訝しげに神楽が問う。

 ――どうせなら神楽と吉良にも協力してもらおうか。

「なあ、頼みがあるんだ。日本語のやつだけでいい、報告書になってそうな書類を片っ端から探してくれないか?」

「そんなもの何に使うの……」

「あの中に入ってる人たちについて、詳しく知りたいんだよ」

「わ、分かった。探すよ」

 そうして3人がかりで書類の山を漁ること数十分。

 見つかったのは先ほど俺が読んだものに加え、更に12通もの報告書――と、資料。ついでに探しておいたものだ。

「さて……」

 サラッと読み進めていく。傍らでは神楽たちが不思議そうにこちらを見ているが、気にしている場合ではない。

 ここにいつか、誰か関係者が来てもおかしくない。屋敷そのものが吉良の持ち物だし、彼女曰く入り口はあの扉しかないらしいので幾らかリスクは減るだろうが、それでも身内に関係者がいることを考えると早いに越したことは無い。ましてや神楽たちは一度捕まったわけだし、酒井は未だにカプセルの中で、しかも他の不思議探求部の連中が見当たっていない。

 ――考えすぎかと思いつつも、報告書を読み進めていく。

「あった……」

 まさしく目的のものを発見。カプセルに収められた人々についての情報が纏まっている。

 個人情報が含まれているため読むことに嫌悪感を覚えるものの、相変わらずそんなことを気にしている場合ではないので構わず読み進める。

『以下の者は全て、我々の調査により超能力者である疑いが掛かったため一時的に拘束、その後カプセルへ収めたか否かの報告をする』

 ――収まらなかった人もいるということか。

『樫原健二。23歳男性、職業は特殊清掃。痕跡消滅の超能力を持つことが判明したため、カプセルへ収めた』

『市原貴美江。24歳女性、職業は風俗店店長。性に関する超能力を確認したため、カプセルへ収めた』

『上原雄大。13歳男性、職業は中等部学生。透視の超能力を確認したため、カプセルへ収めた』

『松代泰樹。58歳男性、職業は機械整備士。拘束したが超能力が確認されたかったため、拘束の記憶を抹消した上で釈放している』

『遠田恵理。40歳女性、職業は飲食店営業。予てより超能力の確認をしていたため、拘束後すぐにカプセルへ収めた。事情は別紙参照のこと』

 ――終了。

「いろんな人がいるな」

「性に関する超能力って何か気になるよね。絶対避妊とかかな?」

「大富豪の令嬢ともあろうオメーがそんなこと気にしてんじゃねーよ。で、だ」

 問題はここからだ。

「この報告書を見る限り、どの人も強制的に捕まったって線が濃厚だな」

「何を考えていたの?」

 神楽が隣にやって来る。

「いや、自ら望んでカプセルに入った人がいないか気になっただけだ。そしたらその人だけカプセルの中のままにしとけば俺らの手間も省けるし」

「自ら望んで入る人なんているの?」

「さてな」

 ――まだ解決していない疑問が残っているが、この様子だと全員を助けておくに越したことは無いだろう。もしその中でカプセルへ収まりたいって人がいればもう一度捕まればいいだけの話。

「さあ、とりあえず酒井だけでも助けねぇと」

「でもどうやって? 私達にはこの機械が弄れないけど」

「問題はそこなんだよ。おまけに悠里たちもいないし――っていうかまず、オメーら何でこんなとこにまで来てたんだ?」

「それは貴方を捜したからに決まってるじゃない」

「は? 俺を捜して?」

 おかしい、辻褄が合わない。俺は最初から布団の中で寝てたのだが。

「朝起きたら、月宮がいないって男共が騒ぐから。視察しに行ったら、ほんとにいなくなってた。貴方こそ何処行ってたの?」

「――その時、吉良は居たか?」

「え、居たけど……」

 吉良は居た。ということは昨晩のウィルス退治とは関係がなさそうだ。

「何で?」

「いや、何でも。そんなことより、俺は確かに自分の布団の中で目が覚めたんだがな」

「じゃあ何でいなかったの。もしかして貴方、夢遊病?」

「かもしれねぇな。どっか行った自覚がねぇし」

 ――俺が朝いなかったという現象。どっか行ったと言いかけた辺りで、もしかしたら昨晩見た夢と関係があるかもしれないとも思ったが、話すと神楽たちが余計混乱しそうなのでやめておいた。

「よく分からんけど、俺を捜してここまで来たと?」

「うん。吉良さんが、もしかしたらって言ってあの緑の扉を潜った。でもさっき言ったように――」

「――私の知らない場所が続いてて、半分混乱しながら進んでたら今のオチって感じだね」

「ほう」

 だったら、先ほどのメールも頷ける。それにここは、どうやら電波が悪いらしい。吉良のメールについても、何度もメッセージの再送をしているうちに数分経ってしまったという説が濃厚だろう。

「じゃあ、捕まってそんなに時間は経ってないみたいだな」

「そうなの?」

「あぁ。最後に吉良が寄越したメールなんだが、そっちの発信時刻から数分のズレがあったらしい」

 何で分かるかと言えば、俺のスマホの性能が災害に特化しているからである。とにかく効率よく相手と連絡を取れるコイツの無駄に思えた機能の賜物だ。

「よく分かるね、そんなこと」

「ま、携帯のせいだ。で、捕まってそんなに時間が経っていないということは、だ。この実験室の関係者が、この地下施設のどこかに潜んでいる可能性があるってわけでもある」

「え……」

「でも、そういうことだろ? お前らの記憶が改竄されてるのかどうか知らんけど、現にこうしてカプセルに入ってたということは誰かに捕まっている。ましてや悠里たちの姿が見えない。なら確実に第三者が関与してる。だったらさっさとその関係者を取っ捕まえて、脅してでもみんなを解放させよう」

「その必要はありませんよ」

「……」

 喋ったのは神楽でも吉良でもない。

 典型的な台詞と共に登場したのは、なんと冬木だった。

神楽の二人称がコロコロ変わっていますが、これは態とですので悪しからず。

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