崩壊を防ぐゲーム
「華乱……で良いですよね、つきましたよ」
開けた所には薄い黄緑色に光る建物が並んだ町があった。どいつもこいつもRPGのような服装をしている。
「えっと、アージュさんは何で女子高生の制服を?」
「女子高生だからです。それ以外に理由が入りますか?」
「いえっ! いらないと思う」
ある建物の受付に行きアージュは何かを確認して戻ってきて、透明な携帯大の板を渡す。
受け取るとその板が光、文字が浮かび上がった。
「それは……えっと、何でしたっけ?」
「えっ? 忘れたのかよ!?」
『佐藤 華乱 様、本人の音声確認、心精霊実体化』
「へっ!?」
板が輝きその上に小さな二足歩行で白色のウサギが現れた。服も着ている。
もじもじしながらこちらを伺っているようだ。
「何だこれ……」
突っついてみると、びっくりしたのか飛び跳ねてそのままアージュの肩に乗ってしまった。
「駄目ですよ怖がらせちゃ」
「えっ? オレが悪いの!? ってかこいつ何?」
その問いに答えたのはアージュではなく、ウサギだった。
「わ、私は……貴方の精神的なものを具現化した、せ、精霊でしゅ……こ、これでも女の子なので、突っついたりしないでほしいの」
女の子? オレの精神的なものを具現化したのに? 男じゃねーの!?
「そ、その、私はガイドとアシストをするのです……し、質問はありますか?」
質問? 多くて何を聞けと……
「ここって……?」
「こ、ここは、創造世界、プハンタシアワールド2298という異世界です。現在崩壊に向かっていて防ぐ為に世界の支配者を選出させる大会が開催されています。貴方もその参加者です……」
オレはアージュと目を合わせる。
アージュは何かを思い出したかのようにポケットから板を取り出し何かの名前を呼ぶ。
「フォックス、出てきて」
すると、その板からは魔法戦士のような黒い服を着て、白い羽根のついた黒い帽子をかぶった二足歩行の狐が現れる。
「何回教えればわかるんだい? ぼくは名前を呼ぶだけで出てきたあげるって言うのにわざわざ板を出して……」
狐の声は男だ、そして空中に浮いている。
「ごめん……忘れてたの。この人に説明したいんだけど思い出せなくて」
狐はオレの方を呆れたように見る。
「覚えてないのに人に教えようだなんて、仕方ないね全く」
俺の目の前まで飛んできてペラペラとしゃべり始める。
「ぼくらはバトルなどでアシストをするんだけれど、その場合必要になるものがある。時間と名前なんだよ」
急に話が飛んでいる気がするのはオレだけ!?
狐の話を手で制しながら質問をする。
「待て待て、狐、まずオレはどうなる? 大会って何なんだよ?」
狐は腕を組み、呆れ気味のため息をつく。
何処か遠くを見て黙ってしまった。
「こんな男にみ……アージュが関わる必要が分からないよ。そうだね、華乱はこの異世界とお前の世界を行きすることになるんだよ。アージュの様に。大会は、この世界の崩壊を止めるためのもの。支配者になれば空に浮かんでるデカイ王宮に住んで生活は保証される。ルールは簡単、参加者の首から水晶を奪い取るか降参させて命を取らずに差し出させるかして、水晶を集めるんだよ期限までに多いものの勝ち」
全く目を合わせようとしない狐は更に顔をそらし、後ろのアージュの肩に乗っているウサギを見る。
そして、鼻で笑った。
「な、何だよ、しょぼいとでも言いてぇのか?」
「別に、君は臆病なんだなって」
「それで、降参するにはどうすればいい?」
「あのウサギに名前をつけて頼むんだよ、降参します〇〇ってな簡単だろう? でもお勧めはしないよ? ぼくらは気まぐれだから時にその言葉にキレて主人を殺すから」
「はぁ!?」
冗談じゃねーよ! こんなの付き合ってられるかよ……どうすれば出れる?
「降参しますローズ」
とっさにキャラの名前を付ける。
ウサギはもじもじしながら口を開いた。
「華乱様……その、わ、私を殺したいのですか?」
何言ってんの!? このウサギ、面倒くさいな
「水晶を取り出すということは、ぼくらの死を意味するんだよ、その石を経由してエネルギーを分けてもらって生きてるんだから」
何だよそれ! そりゃあ主人を殺したくなるに決まってんだろ! 断れないじゃねーかよ……このゲーム強制か
「華乱、かわいそうに……強制的にこんなのに参加させられて、私なら耐えられないよ」
こいつはこいつで何を言ってらっしゃるの?
華乱は狐も同じように馬鹿にした目でアージュを見ているのに気がつく。
「アージュ、ぼくは君の精霊なんだけど参加してるよ君も」