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夏が終わる前に

作者: 水原緋色

君と夏祭り企画参加作品です


君がいなくなったあの日から、僕の心にぽっかりと穴が空いたように、どこか物足らないような気がしてならなかった。


強い日差しに、ジメジメとした空気が体にまとわりつく。けれど、朝夕が涼しくなって心地いい。

暇つぶし程度にベランダに立ち、打ち上がる花火をぼぉーっと見つめる。隣りに君がいないことを考え、気持ちが沈む。答えの出ない問いを繰り返し、咲いては散っていくモノを見つめ、想いを馳せる。つい最近までの僕らの姿に……。



高2の春、僕らは幼馴染みをやめた。だからと言って日常が変わるわけでもなく、何の変哲も無い、平和で賑やかな日常を過ごしていた。

高3になり、受験を控えていたが君は一向に志望大学を教えてくれなかった。秘密にすることが好きなやつだとわかっていたから、あえて聞かなかったが、今回はそれが裏目に出た。卒業後すぐに、君は手紙だけを残し、何処かへ行ってしまった。

手紙にはたくさんの「ごめん」とたくさんの「ありがとう」、それに「待ってて」と書かれていた。


気がつけば、スマホが煩くなっていた。手に取ると小中高同じの悪友・高木悠人たかぎゆうとの名前が表示されている。電話に出れば奴の明るい声が耳元で響く。

「おい、どーせ家に引きこもって一人で憂鬱な気分になってんだろ。祭りいこーぜ、祭り!! 花火始まってるけどお前ん家からならすぐ来れるだろ。いつもの神社で待ってるからな」

一方的に切られた電話にため息をつきつつ、なんとなく行ってみることにした。


子供たちの声があちこちで聞こえるなか、いつまでたっても神社にこない悠人に向けてため息をつく。

「着いたぞ」と連絡をしてからもう10分はたっている。僕を待たせることになんのためらいもない悠人は何処か寄り道でもしているのだろう。

スマホがなり、画面を見ると悠人からのメッセージ。僕はすぐに人混みのなかへ飛び込んだ。


久しぶりの全力疾走に体が悲鳴を上げている。それでも僕は走り続け、小高い丘の先にある街を一望できる小さな社の建つ神社。花火が綺麗に見える場所。君が一番好きな場所。ーー君はそこに立っていた。

息を整え数歩前に出る。大きく深呼吸して高ぶる気持ちを抑え込む。

伊織いおり……! 」

次々と上がる花火の音が鼓膜だけじゃなく、体全部を震わせて、背中をおされた。君に伝える、今この花火の下で。今まであまり言葉にして伝えなかった想いを。

「どこ行ってたんだよ、心配かけやがって……。あぁ、もう! 好きだ!! 大好きだ!! 僕の隣からもう離れんな!! 」

抱きしめた伊織の体が小刻みに震える。笑いを堪えているようだった。

「ごめんね……? いきなりいなくなって。驚かせたくて……さ。私も日向のこと大好き!! 」



伊織は服飾の専門学校に行っていたらしい。昔からの夢を叶えるために、僕を驚かせるために、今まで頑張っていたらしい。


「伊織もひでーことするよなー。あいつマジて落ち込んでたんだぜ。俺が昨日『伊織いたぞ』って送ったら返事もなしに伊織のとこ行ったんだからな。てか、よくあの場所がわかったな」

悠人は伊織のことを知っていたらしく。グルだったらしい。そのことに腹を立てつつも、伊織が元気そうで安心して、なんだかどうでもよくなった。

「だってさー、日向ってば全然大学の話してくれなかったんだもん。本当に私のこと好きなのかなぁって思って……」

「バァカ、僕がお前のこと好きじゃないわけないだろ。ただ幼馴染みだからってだけで、いつまでも仲良くしねーよ」

クシャクシャと頭を撫でると向かい側の悠人は呆れたように「他所でやれ、他所で」と笑った。




「来年は一緒に行こーね、お祭り」

「当たり前」


今年の夏がもう終わるーー。

オプションテーマは、花火・神社です。


最近全然書けなくて、今回のもあまりいいものでかったかもしれません。

けど、かいていて楽しかったです!!

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