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クマメイドと訓練(撫で)

なんかイチャイチャしてるだけの話になりました、でも多分この物語は大体そんなもんだと思って書いてます。

 翌日目を覚ますと既にリリの姿はなく……トントンと軽快なリズムを刻む音が聞こえる、なんかベタだな。

 俺は体をゆっくりを起こし、ベッドから降りてキッチンへと向かう、獣的嗅覚でなくても分かるいい匂いがするので恐らくそちらにリリがいるのだろう。

 階段を下り右に曲がり廊下を突き当たりを曲がりキッチンへ侵入する……息を潜め獲物に近づくこの感じ、たまらないスリル!

 などと無意味な事をしているが、もしだ、キッチンで料理しているだろうリリが裸エプロンだったりしたらどうだろうか? 息を潜めるだけの価値はあるだろう。


 ゆっくりとキッチンの中を覗くと――――裸体にエプロンを身につけた……クマが居た。

 もう一度言おう、クマが居た……クマが料理をしていた。


「あ、レオ、おはよー」


 背後からリリが現れた、リリは既に服……課金衣装の銀色の巫女服アレンジドレスとかいうちょっと訳のわからない物を着用していた、可愛いから問題ないが。


『ああ、おはよう……ところであのクマはなんだ?』

「え? レオの倉庫に入ってた家政婦ペットのクマメイドさんだよ?」


 家政婦ペット……響きがなんかいやらしいな、家政婦でペットだと……クマメイドか――――そういえばそんなのもいたっけ、拠点が使用出来るからといってその機能を十全に使えるわけじゃないので代わりに操作してもらう端末的なやつ……メイドもクマじゃん、獣じゃんって最初は思っていたんだがこれが結構便利で、二足歩行出来て人間と同じ扱いになってるらしく俺が使用できなかったものは全て彼女にやらせていた。

 といってもゲームの時はキッチンとか料理とかはただ回復や補助効果のあるアイテムを制作するだけの機能でしかなかったのでこのクマが実際に調理出来るとはとても思えない。


「できたみたいだよー」


 リリの声に反応して机の上を見てみると、皿の上にあったのは……アンパンだった。


『さっきまでの音とか料理の仕方から全く連想できなかったんだが』

「あ、それは私も思ったかなー、アンパンを注文したのにあの作業は必要だったのかな?」


 アンパンは注文通りだったと――――朝食出し別にアンパンでも構わないが、机には皿が二つありその上にアンパンが一個ずつと飲み物にコップに入れられた牛乳が二つあった。


『俺コップじゃ飲めないんだけど……かと言って犬用のエサ入れみたいなのも無理だしな』


 そう、この体になってから飲むという行為に関しては小川でしたように顔を突っ込み咀嚼するように飲む以外したことがない、犬とか猫のように舐めて飲むというのをしてみようと思ったのだが思うように水が掬えず喉を潤せなかった。


「それじゃあストロー使えばいいんじゃない?」


 と、どこから取り出したのかリリが俺のコップにストローを突き刺す事によってこの日の朝食はつつがなく終了した。


 その後俺の倉庫からクマメイド以外のアニマルメイドシリーズが発掘され、拠点の整備等は全てそいつらに任せることになり俺とリリは戦闘時の作戦や立ち回りなどを話し合うことにした。


「付かず離れず程よい距離を保つ必要ってあるのかな?」

『あるだろう、この間のシルバーウルフの群れみたいな奴らと戦う以上俺も全力を出すし、そうなるとあまり近すぎてもダメだし、離れすぎるとその隙を狙われる』


 タイチがいなければリリはやられていただろう……ムカつく奴だがそこだけは感謝しておこう。


「んーでも大丈夫だよ? この間はびっくりしたけどシルバーウルフぐらいなら手懐けられるし」

『手懐ける?』


 俺の疑問に首を縦に振り肯定したリリが――――一瞬消えた様に見え、気づいたら背後に回られていて……いつの間にか俺は屈服の姿勢、つまり腹を見せだらしなく舌を出しているという状態だ。


「これがカンスト獣使い、基礎スキル:手懐け、だよ?」


 いやそんなの聞いたことがないが……しかしこの撫でられ心地、全てを委ねてしまいたくなる。

 何か、いつも撫でられているのとは違う何かがあるはずだと一生懸命視線を動かしそして、気づく。

 リリの手には普段付けているところを見たことがないグローブが着用されていた、あれは確か課金アイテムのケモケモグローブ……獣使い専用装備で全ての獣を従える王者にのみ装備を許された伝説のグローブ。


 上等なモフモフの毛皮をふんだんに使用し、手のひらにはぷっくり膨らんだ肉球もどきがついており、ツボを押すのに便利だとか、確か課金おみくじの超希少アイテムで元はプレイヤーのデザインコンテスト優秀作品だったか何かのはずだ。

 説明文は相当適当で実際に装備しても大した効果はなかったはずだが、ゲームが現実になったような今では何かしらの効果はあるらしい……とても抗えそにない。


「ふふ、あんまりきちんと触った事なかったけど中々いい毛並みしてるねレオは……顔は猫っぽい感じで下半身と尻尾は犬っぽいくせに、翼の付け根から前足の付近は羽毛が少し混じってるのね」


 くっ……俺のキメラモフを解析しているだと!? 自分では全く堪能できないというのにリリはそれを余すところなく味わっている、な、なんて羨ましいんだ。


「そろそろフェンリルも触ってみたいんだけど、レオ……お願いできるかな?」


 正直リリがどんな性格なのかよくわからなかったが今回の件でなんとなく女狐的な雰囲気を感じ取った……ま、逆らう気はさらさらないが。


『アビリティ形態変化(モードチェンジ)神山狼(フェンリルモード)!』


 元々狼である下半身から何か自分とは別のものが這い上がってくる、そんな得体の知れない感覚とともに徐々に翼が縮み、鼻面が伸び猫科のそれから犬科へと変化していくにつれ、毛並みもふっさふさのもっふもふになる。

 元の姿(・・・)の面影と言えば下半身と毛色に瞳の色程度を残し俺はフェンリルへと変化した。

 それにつれてスキルとアビリティの内容にフェンリル固有のものが追加されたようだが今はそんなことどうでもいい、リリが俺を、(フェンリル)を待っているんだ!

 変化が収まると同時に瞼を開くと、眼前にリリが居て――――気づいたときには既に屈服姿勢に転が(くっころ)されていた。


「はぁ……私のフェンリルちゃん、一目見た時から好きでした……いい、この毛並み、毛艶、レオウルフの時とはまた違うなめらかさ」


 幸せそうな顔をしながらリリは俺の顎の下から胸元にかけて撫で回し、プラプラしていた前足を掴んだかと思えば肉球をぷにぷにしたり、お腹のあたりに頬ずりしたりとやりたい方だである。

 この間俺は終始無言を貫くことにした、リリのお楽しみを邪魔してはいけないような気がしたからだ、しかしリリはそれがお気に召さなかったのか突然俺の顔面を掴み目と目を合わすように固定した、普段のリリの腕力からじゃとても想像できない力だがおそらくはケモケモグローブの力だろう。


「レ~オ、私が撫でるのは気持ちいい? どうなの? 何か言ってくれなきゃイヤ」

『ああ、リリの撫では最高だぞ……ただリリが楽しんでいる様子を見たら邪魔しちゃいけないような気がしてだな』

「邪魔ってなによ、私はレオとスキンシップしてるんだからレオも何か言ってくれなきゃ恥ずかしいじゃない」


 恥ずかしい……そういうものだろうか? しかしリリがそう言うなら何か気の利いた事を言わねば。


「ハフックゥクゥーン?」


 あ、やべ……焦りすぎて口から鳴き声を出してしまった。


「なぁに? くぅーんじゃわからないよ」


 そう言って俺の口の軽くキスをしてくる訳で……キス? キス、ああ、キスね、キス……。


『え?』


 いきなりの事でつい、念話で反応してしまった、正直現実にいた頃から女性経験などなかった俺には今のはとてつもない大事件だ、じゃれてたらキスをされたファーストキスだったのだが。


「もう……恥ずかしいから聞かないでよ」

『悪い……突然のことにかなり驚いて――――と、そろそろフェンリルの時間切れだ』

「もう終わりなの?」


 まだ撫で足りないのか急いで撫で回すリリ。


『方法が無くもないが少し離れててくれるか?』


 リリが少し距離を取ると俺はフェンリルが解除される前に次の形態変化(モードチェンジ)を発動させた。


『エレメントチェンジ、氷山狼(アイスバーグモード)!』


 姿を変えず属性だけ変更する、尻尾の先っぽや耳の先端に属性を表すように青白く変色する、そして少し体温が低下したのを感じる、吐く息は白くなり爪と牙の表面を氷が覆った。


「氷の……フェンリル?」

『属性派生だ、一応これも制限時間は一緒だ……ただ少し冷たいと思うし気をつけろよ』


 少しで済めばいいが凍傷でもされたら困る、リリもそこら辺を気にしてか恐る恐る触れてくれるが――――毛に触れた途端俺の首に抱きついてきた。


「ひんやりしててこれはこれでありだよ」

『そうか、気に入って貰えて何よりだ』


 この分なら火山狼(ヴォルケーノモード)は暖かい程度で済むだろうか。


「流石に口とか爪なんかは冷たいけど夏にはちょうどいいかもよ?」

『夏か、この世界に四季はあるんだろうか?』


 ゲーム中では季節ごとにイベントはあったがそれはイベント専用マップだとかそういうところを実装していただけに過ぎず全てのマップに季節の変化があったわけじゃない。


「確か海の近くは年中夏みたいだって聞いたことあるかな」

『それだと四季はなさそうだけど、旅の楽しみとしてはありだな』


 そんな話をしている最中も俺の体をまさぐるリリさん……ブレないな。


「そんなことより時間は、まだ大丈夫?」


 さっき変化したばかりだろうにと思ったがもう三十秒ほどしか残ってなかった。


『残り三十秒だ……早いな、幸せな時は直ぐに終わると言うが――――なら次で品切れだが変わろうか?』

「うん! お願い」


 すごくいい笑顔で頷くリリのために俺は次の形態変化(モードチェンジ)を発動させる。


『エレメントチェンジ! 火山狼(ヴォルケーノモード)!』


 体が一瞬炎に包まれたかと思えば変色していた毛先の色が赤く染まっていて爪と牙の氷は溶け吐く息は火花を散らしていた。体温も結構上がっているようだが風邪をひいた時のようなだるさ等はなくむしろ体が軽くなったようだった。


『俺に触れると……火傷するぜ』


 なんとなく言ってみたかっただけだ。


「ふふ、じゃあ気をつけて触るわね」


 今回も恐る恐る触れてくるリリ、慎重さは氷よりも高く、火の方が危険と認識されているようだ。


「あつッ!」


 毛先に触れた瞬間リリは叫び手を引っ込め、その手を引っ込めたままその場にうずくまった。


『大丈夫か!?』


 俺は心配して近づこうとしたが、今の俺が触れても火傷させてしまうだけだ、どうしようかとオロオロしていると、うずくまっているリリから突然笑い声がして。


「ふふふ、ドッキリ大成功ー、驚いた? ごめんね、大丈夫だから許してね?」


 あー、うん大丈夫なら良かった……でもネタバレが早すぎるような、いやいいんだけどね。


『許すけど……残り三分だぞ?』


 そう言うとリリは慌てて俺の体を弄んだ――――俺の体がレオウルフに戻っていく過程すら体に張り付いて全身で楽しんでいるのだから生粋の獣好き(ケモナー)なんだろう。

 元に戻った後も日が暮れるまでこねくり回されて気づいたときにはベッドの上で二人して寝ていたという……恐らくクマメイドに運ばれたんだろう。


 そもそも今日は訓練するはずだったのに一日中じゃれてただけだったな、明日もこそはきっとと願いながら俺は再び眠りに就いた。



 ――――そして願いが叶うことはなかった。

【名前】レオウルフ

【種族】合成獣(獅子・梟・狼)

【職業】神獣

【性別】オス

【所属】リリの契約獣

【スキル】

 主従念話

【アビリティ】

形態変化(モードチェンジ)(分岐派生)

 姿形を変化させるアビリティ。取得できるモードは討伐したボスモンスターによって決まる。


 神山狼形態(フェンリルモード)/火山狼形態(ヴォルケーノモード)/氷山狼形態(アイスバーグモード)

 白銀の毛並みを持つフェンリルに変化する。通常状態は大地の力を使役でき、火山時は炎と溶岩、氷山時は氷と吹雪を操る。


 神化(付加)

 硬質化(付加)

 透過(付加・非戦闘)

 狂化(付加・戦闘/操作不可)

 自動回復(最大/常時)


【名前】リリ

【種族】人間

【職業】獣使い

【性別】女

【所属】レオウルフの主

【スキル】

 ブレイズクロー(付加・炎/爪)

 サンダークロー(付加・雷/爪)

 ゲイルウィング(付加・風/翼)

 ブリザードウィング(付加・氷/翼)

 グランドインパクト(付加・土/足)

 アイアンインパクト(付加・鋼/足)

 ウォーターテイル(付加・水/尾)

 アイビーテイル(付加・木/尾)

 クイックスピード(補助・速度上昇)

 ストロングパワー(補助・馬力上昇)

 ハードガード(補助・防御上昇)

 デュアル(補助・二重)

 ヒーリングキュア(瞬間治癒)

 ヒーリングフィールド(瞬間治癒/広範囲、遠距離)

 デスヒール(即時復活)

【アビリティ】

 コンボ(職業固有)

 危険予知(種族固有)

 直感(職業固有/常時)

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