共有倉庫と天空城アイノス
更新、頑張ればまだ早くできたはず……。
一日中寝てましたすみません。
感想で『続きはよ』と書いていただけたらもしかしたら少しは早くなるかもしれません。
シルバーウルフの山を下ってきた俺とリリは昨日野宿したところまで戻ってきていた。
戻って早々に服を倉庫にしまったリリが小川に入りこちらに手招きをしているので俺も入ることにしたのだが――――俺が入った瞬間俺がいるところから下流方面の水面が赤く染まった。
神狼とも呼ばれるフェンリルの返り血は通常の生物には毒だったのか赤い川の中からプカプカと小魚の死骸が浮かんできた、アレは食えないだろう。
『予想はしていたがこれは酷いな』
「そうだね……ところでレオは大丈夫なの? その……心臓を飲み込んでたみたいだけど」
『ああ、アレか……アレはタイチが倒したから応急措置というかな、普通に俺が倒してればあの光が俺に流れ込んできて形態変化できるようになっていたんだが、生憎とあの野郎に先を越されたからな、強引ではあったが危険はない……ただ消化が終わるまでは形態変化できないけどな、ついでに次のフェンリルも現れないだろう』
タイチはゲームの時と同じように考えていたらしいがボスモンスターに関しては別だ、アレは自然の摂理に則って発生している、復活するとしたら俺の消化が終わり、シルバーウルフの群れに新たなリーダーが進化する他ない。
「それじゃ、彼らはしばらくあの山に篭るのかな?」
『さぁな? でも出来るならもう会いたくないな、フェンリルの件で恨まれたかもしれないし』
あのまま復活を待つのならば一日以上待ちぼうけるはずだし、そうなるとシルバーウルフを倒し続ける可能性もあり、そうなってくるとせっかく消化が終わってもフェンリルに進化できるシルバーウルフがいない可能性も出てくるな。
「それもそうだねー、そうだとしたらどこか隠れ家とか作らないとね。いつまでも野宿じゃそのうち見つかるかも知れないし」
隠れ家か……マイホームさえ使えればな、ゲーム時代には街を使えなかった俺がカンストまで行けたのは全て金の力……課金アイテムである拠点アイテムのおかげだった。
『リリは拠点アイテムとか持っていないのか?』
「拠点アイテムってあれだよね、課金おみくじのウルトラレアの、地底城塞エルドラドとか海中都市アトランティスとか天空大陸ヴァルハラとか」
『そういうやつだ』
街やダンジョンとかフィールド外に設定できて、許可されたプレイヤーしか入れないプライベートスペース、復活地点に設定など出来てマイホームという括りであるが一軒家とは言い難い都市クラスの規模を持つもはやアイテムと言っていいのか分からない課金アイテムで譲渡可能アイテムだったため高額で取引されていた人気アイテムだ。
斯く言う俺は課金ではなくゲーム内通貨が余っていたのでそれで購入した口だが。
「んーそんなの持ってたら流石に野宿なんてしないよ」
『そりゃそうか……はぁ、俺の倉庫が使えれば多分あるんだけどな――――こっち来てから倉庫使えないから無い物ねだりというやつなんだが』
そう言って大きな溜息を吐き出して、水中に体を沈めジャブジャブと体を濯ぐ、血が落ちるたびに爽快感がありまるで心が洗われるようだ。
なんて水中でゴロゴロしているとリリが突然抱きついてきた……なんだろう俺の体を洗ってくれる感じじゃなく揺さぶられているような気がして、とりあえず顔を水中から出した。
『どうかしたのか?』
「どうかしたのか? じゃないよ! レオ拠点アイテムもってるの!?」
『お、おう……あるぞ、ゲームの時使っていたがこっちに来てから倉庫とか操作できなくなってたから意味ないだろ?』
リリが倉庫を操作出来ていたようだが俺は出来ないのでもう諦めている。
「なんでレオは倉庫操作できないの? 私はできるけど、本当にできないの? やり方がわからないとかじゃなくて?」
『出来ないな、やり方なら他のプレイヤーの動きを盗み見て知っている、アレだろ? 空中を撫でるような感じの』
俺は「エアお手」をするように右前足を空中でフリフリした……なんか招き猫っぽいな顔は獅子だが。
「そうだけど……んー、やっぱり獣足じゃ無理なのかな、そもそも人の指でも操作ミスするぐらいの幅だからもしかしたら反応してるけどバグってる? ――――あ、いや出来るかもしれないよ!」
何か考え込むような仕草をしていたリリが突然俺の空中をさまよっていた前足を掴んできた。
『どうやってだ?』
「共有倉庫だよ! 確か契約獣に専用イベントリを設けて戦闘中にドロップした素材アイテムとかを収納するスペースを使えるらしいんだけど、それは獣使い側しか操作できないからもしかしたら私ならレオの倉庫使えるかもしれないよ?」
『本当か!? ならば今すぐやろうか、俺の倉庫の中には……見られてやましい物もなくはないが背に腹は変えられない。さあ……やってくれ』
そう言って俺は頭を垂れる、どうやるか知らないが言われた通りにする他ないしな。
リリは空中を指でなぞって何やら操作をしている、感覚的にタッチパネルを操作している感じで指が空中にある見えない壁みたなのに触れている感じにも見える。
見えないとか見えるとか何の話だ――――リリは上から下まで丸見えですがね。
そうこうしているうちに俺の目の前にメッセージウィンドウが現れ「倉庫を共有化しますか? OK/NO」と表示されているので鼻でOKを選択する。
「出来た! えっと……レオ、中を見てもいい?」
『いいぞ好きにしてくれ……ただし、拠点アイテムが先だ。他のアイテムなんかは拠点ができてから頼む』
キャラ的に使えなかったり性別的に合わないアイテムなんかも詰め込んであったはずだからな、不要なものはリリに譲ろう。
「おっけー、それじゃ開くね……えーと拠点アイテムはーっと……え……嘘」
『どうした?』
「うん……なんで三種類ともあるの?」
そこか、結構十万単位で買わないと一個も手に入らなかったアイテムを三種類とも揃えてたらそういう反応にもなるか――――ドン引かれてしまった。
『プレイヤー露店で買った、拠点アイテムが実装された頃にはもう手持ち金の上限額スレスレだったからな大きな買い物をせねばを思っていたらこのざまだ』
初期からずっとして装備も課金衣装も必要ない俺はゲーム内通貨が馬鹿みたいに溜まって、拠点用アイテムの実装が三年目だったこともありその時既に貯蓄がやばかった俺は頑張って露店にあったものを三つとも買い揃えた。
ちなみに召喚されるまでの間に使った分を再び稼ぎきってしまったりしている。
「そうなんだ、それはそれで凄いね……それでどれ使うの?」
『ヴァルハラだな、エルドラドやアトランティスより狭いが二人で使うには十分だし、開放的で何かあってもすぐに行動できる』
「わかった! ……ねぇ名称設定っていうのが出てきたんだけど、どうする?」
名称か、デフォルトだとヴァルハラだけど……二人の愛の巣(笑)とか? いや今のナシで……さっぱり思いつかない。
『リリの好きにするといい、そういうのは俺は苦手でな』
「じゃあ、天空城アイノスで」
リリがそう言った途端俺達はどっかに転移させられた。
転移で乱暴に地面に投げ出される感覚に思わず目を閉じる、そして俺の上にリリが落ちてきた。
目を開けるとそこにはおよそ直径ニキロメートルの広々とした円形の大地にびっしりと芝生が植えられていた、この状態から後はなんやかんや設置していく事によって拠点になるのだ。
「ここは……?」
転移の影響かどうか知らんがさっきまで濡れ濡れだった俺とリリはすっかり乾ききったというか水気がなくなっていた。
もしかすると転移を利用して脱水が出来るのかもしれない、転移の対象が俺たちで体についていた水は対象外だったとか、ともかく俺についていた血の汚れも取れているようなので良しとする。
『どうやら拠点のアイノスらしな、とりあえず服を来てから拠点に設置アイテムを配置しようか』
「うん、とりあえず服だね……もうパジャマでもいいよね?」
確かにもう日も暮れそうだしな、そう思い頷いてやるとリリは課金パジャマに着替えた、いつ見ても可愛らしいデザインだ。
「それで設置アイテムって何を置くの?」
『俺の倉庫にあると思うが、守護結界の水晶を三種類、その辺に転がしといてくれ、それから復活の泉と癒しの大樹、それと居住用大型ハウスも頼む』
守護結界の水晶、数あるうち俺が持ち合わせているのは隠蔽、魔法防御、進入不可の三つだ、隠蔽は文字通り外界からこのアイノスを見えないように隠蔽するもので、魔法防御はそのままの意味、進入不可は登録された者以外の転移以外の方法で内外の行き来が出来ないようにするものだ、これさえあれば物理防御の結界は不要なので何かと重宝している。
それから復活の泉は文字通り死んだ場合、泉の中に転移してくる仕組みで近くに癒しの大樹を配置することによって回復を促進させる仕組みだ。
居住用ハウスはせっかく拠点を手に入れたのに野宿みたいなことをしなくてもいいように俺でも簡単に入れる大きさの家で、食料庫や水道、ガス、電気などの設備も何故か完備されている魔法の我が家だ。
「まだまだスペースはあるけど何か置くの?」
『スペースっていうのもどうかと思う広大な土地だけどな……そこは、おいおいって事で今日はもう休もう』
大きな二階建て一軒家に入り二回へ上がると寝室があり、そこにはこれまた馬鹿デカいベッドがある、どれぐらいでかいかといえば俺が二匹同時に寝て、寝返りうってもベッドから落ない大きさだ。
そこにまず俺が乗り、その上にリリが乗っかるという状態で寝ることにした、俺のふかふかモフモフの毛があるので掛け布団は必要なく、リリは数分もしないうちに寝付いてしまった。
俺はといえば実はまだ寝れない事情があった、フェンリルだ……俺はまだ奴を消化しきっていない。
奴を完全に消化し切るには形態変化の派生を把握する必要があるのだ。
まずは神山狼から派生が二つ存在する、タイチの持つ氷狼の力とそれと対をなす炎狼の力だ。
火山狼モードと氷山狼モードか、それからそれら三つを生贄にした上位種……こちらの開放条件は他のボスを倒さないとダメだな。
得られた情報を文字通りよく噛み砕いて飲み込む、自分という情報に馴染ませる……これでようやく消化し形態変化に昇華されたのだ。
そして俺はリリの寝顔を眺めならが眠りに就いた、明日は立ち回りとかの特訓をしなければならない、シルバーウルフの時のような間抜けな真似はもう嫌だからな……。
【名前】レオウルフ
【種族】合成獣(獅子・梟・狼)
【職業】神獣
【性別】オス
【所属】リリの契約獣
【スキル】
主従念話
【アビリティ】
神化(付加)
硬質化(付加)
透過(付加・非戦闘)
狂化(付加・戦闘/操作不可)
自動回復(最大/常時)
【名前】リリ
【種族】人間
【職業】獣使い
【性別】女
【所属】レオウルフの主
【スキル】
ブレイズクロー(付加・炎/爪)
サンダークロー(付加・雷/爪)
ゲイルウィング(付加・風/翼)
ブリザードウィング(付加・氷/翼)
グランドインパクト(付加・土/足)
アイアンインパクト(付加・鋼/足)
ウォーターテイル(付加・水/尾)
アイビーテイル(付加・木/尾)
クイックスピード(補助・速度上昇)
ストロングパワー(補助・馬力上昇)
ハードガード(補助・防御上昇)
デュアル(補助・二重)
ヒーリングキュア(瞬間治癒)
ヒーリングフィールド(瞬間治癒/広範囲、遠距離)
デスヒール(即時復活)
【アビリティ】
コンボ(職業固有)
危険予知(種族固有)
直感(職業固有/常時)