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おつかい失敗と野宿

更新時期未定ながらしばらくは頑張ろうと思います。


※5/10修正。

昼飯とか色々書いてる割に夕食書いたことないなーということで夕食を追加。

「おや、お戻りになられたようですね」


 俺から見てもまだ米粒ほどにしか見えない距離であるのに男性職員はそんな事を言っている……それが聞こえる俺の聴力も中々だが。

 一歩、また一歩と踏みしめる様に歩く、急ぐ必要はない。何せ失敗したんだ急いだところでどうしようもいない、幸い失敗理由を記したメモもあるんだからどうにかなる。

 下を向き、トボトボと落ち込んでますよーというポーズだけ示しとけば連中も油断するだろう。


『どうしたのレオ? 何かあった?』


 近づいてくる俺の様子を訝しんでかリリから念話が来た……まあ念話程度なら返しておくか、奴らに気取られない程度にだが。


『ああ、肉が売り切れでな……店の人から事情を書いてもらったメモがあるからそれを職員さんに渡してくれ、今はまだ心配そうに見つめている様に演技しててくれ』


 演技とはいったが彼女が心配しているのは本当のこと、お使い失敗で俺が落ち込んでいると分かってさらにその顔が歪む、おいおい泣くなよ、男性職員が訝しんでるだろ、嘘泣きの演技はいらねーよ。


「おいおい、どうしたこったよ、あの獣畜生は肉を持ってねぇように見えるが、まさか途中で我慢しきれず食っちまったんじゃねぇだろうな?」


 みんなのところまで後十歩というところでゴロツキが俺の様子に気づき茶々を入れてくる……というか初めから売り切れだって分かっていたんじゃないか?

 俺はあと少しというところで思いっきり地面を踏みしめ、跳躍しゴロツキの腹部を狙って頭突きを入れる、ゴロツキどもが悲鳴を上げて飛ぶ――――一人だけ飛ばすつもりがサイズ的にこちらが大きいため三人まとめて突き飛ばした形になった、突然の俺の暴挙にリリも男性職員も目を丸くして驚いている。

 突き飛ばした衝撃でゴロツキ達から包装紙に包まれた生肉がゴロゴロと転げ落ちあたりに散らばる。


「これは!?」


 頼まれていたブツがゴロツキ連中から大量に落ちたのだ、俺が失敗した理由も察してもらえるだろうが、ダメ押しとばかりにリリにメモを取って渡すようにいい、男性職員はそれを受け取り読み始めた。

 気のせいか、男性職員の肩が震えている気がする――――怒っている? 色にして言えば赤いオーラ的な物が見えなくもない、流石神獣眼。


「これはどういうことでしょうか?」


 声を震わせ男性職員は少し離れたところで尻餅をついたままのゴロツキ達に詰め寄っていく。


「こ、これってなんだよ、肉か? 肉ならお嬢の言いつけで買い占めてやったぜ、ドラゴンのやつこの肉しか食いやがらねぇからな」


「餌用と捕獲用とでは区分が違うはずですが? 未だに捕獲用の生肉しか食べないということでしたらそれはテイムしたとは言えませんよ? ただ餌欲しさについてきただけ……こちらで登録しているわけでもないので事と場合によっては重い罪にも成りかねませんよ?」


 完全なテイムがなされていない奴なんてただのモンスター、そんな危険な存在を街の中に入れたという事は確かに重罪になるだろう。単なる知識不足なんじゃないか? 本職でもない人間がむやみにテイムに手を出すべきではない。

 それを聞かされて青ざめて黙り込むゴロツキども……そんな奴らはもうほっといてこっちのことを先に済ませて欲しいのだけど。


「えと、それで私達の契約申請は受理されるんですか?」


 リリも待ちきれないといった様子で男性職員に詰め寄る、こっちとしてはその要件さえ済めばとっととこんなところからおさらばしたいところではある、正直リリも取られたドラゴンはもうどうでも良いみたいだしな。


「ええ、これで一応完了です、これが登録証と証明の首輪ですのでどうぞ……それと、厄介なことになる前に立ち去られることをおすすめしますよ」


 紙切れと青い材質不明の首輪を渡し、後半は小声でそう告げる男性職員にリリは一礼して速やかに門へと向かった、登録さえ済めばこんな初心者エリアなど用はないのだ。


「ま、まてぇ貴様、貴様のせいだ! 貴様が半端なテイムをしたせいでドラゴンがお嬢にテイムされないんだ!」


 身勝手なことを言い出すゴロツキ達が俺達の進路を立ち塞ぐ。無駄なことをさっき俺に飛ばされた事をもう忘れてしまったのか?


「そんなこと言われても……そっちのお嬢様とやらのレベルが足りなかったんじゃないですか?」


 レベル不足だったらまず街に連れ帰ることすら不可能だと思うがな。結局情報不足か、今後組合所から査察でも入ればいい。


『案外餌用と捕獲用の違いを分からず餌用を食わせてないんじゃないか、食わず嫌いさせているようなら獣使い失格だな』


 獣使い失格とは言ったが相手はドラゴン、【竜使い】というのが妥当だろう。もちろんこのゲームには【竜使い】も存在して【獣使い】が後衛職なのに対してそちらは前衛職だ。


「き、貴様ぁ~! 言わせておけば流民の分際でお嬢を馬鹿にする気か!」


 馬鹿にしているのはお嬢とやらだけではなくお前らもだし、言ってるのは俺もであるがリリにしか伝わらない念話なので通じていない訳だこれは面倒である、いい加減この街から立ち去りたいしな、少し強行突破してみようか。


『リリ、俺に乗れ……一気に門まで行きこの街を出るぞ』


「うん、わかった!」


「何がだ!?」


 念話に声で返したリリの言葉にゴロツキが反応して叫ぶ間にリリが俺の背中に飛び乗り翼にしっかりとしがみついたのを確認した後、前傾姿勢から地面を爪で握り締めるように捉え一気に踏み抜いた。

 ドンッ! と大きな音と共にゴロツキどもを弾き飛ばし門へと一直線に走り出す、すれ違う人々の間をこの巨体からは想像もできないスピードで駆け抜ける爽快感、一種のスポーツ的な感覚でそれをこなしながら門を目指した。

 本当は女性店員のあの店に行って名前とか聞いてみたがったが今は面倒事を避けるために一刻も早く街をでなければならない、これ以上この街にいればきっとあのゴロツキ達の言うお嬢とか言う奴とも出くわすだろう、そうなれば状況がますますややこしくなって、冒険どころではなくなるだろう。

 冒険、今はっきりと意識したが俺は冒険をしたかったらしい、今の今までソロで死なない程度に狩る事ばかりだったが契約をしたことによってその制限から解放されたも同然だ。

 十分とかからない内に入ってきた時と同じ門へとたどり着いた、門番は外と内で違うようだが入るときにちょろっと見かけた人達だった。


「おや、リリちゃん。もうお出かけかい?」


 リリは有名なのだろうか?


「あ、いえ、ちょっと面倒なことになって逃げてる最中でして」


「面倒なこと? ……ああ、またあの三人組か、姫さんの護衛だかなんだか知らないが好き勝手やってるな……いいぜ、通りな門は、そっちの契約獣に開けてもらいな、その方が早いだろう」


 話のわかる門番で良かった。それと門の仕組みも入る時は押戸だったので出るなら引くのかと思ったが出るときも押せばいいらしいので前足で軽く押して開けた、俺がギリギリ通るぐらいであけ素早く門をくぐった後にしっかりと閉めておく。


「おう、話は聞いてるぜ、気をつけて行きな、連中が来たら上手くごまかしておくからよ……それと契約獣、もしリリちゃんを泣かせたらただじゃおかねーからな!」


 リリが門番に頭を下げたので俺も一礼しその場から素早く立ち去った、目的地はまだ決めていない……とりあえず今夜は野宿かな。



 マシロの街から離れて、人気のない暗い森へとやってきた俺達は今夜はここで野宿をすることにした。

 男女が一つ屋根の下で暮らす事のは不健全とか不純とか言うやつもいるが男女が一つ空の下、野宿するほうがよっぽどやばいんじゃないかと思う今日この頃。


「どうしたのレオ?」


 無邪気というかなんというか……この人、大人なのか子供なのか分からなくなるんだが。


『どうしたではない……というかそれはこちらのセリフだ』


 地に伏せて、翼を広げ視界を遮りながら俺はリリに反論する、野宿と言えばまず焚き火のために薪を拾うとかだろうと思っていたのに……なぜ、なぜ水浴びなのか!

 森の中で人気もなく、また周囲にモンスターの気配もないと俺が言うと、今日はここで野宿という流れまでは理解できる、近くに綺麗な水飲み場にもなるだろう小川があるのだから水を浴びたくなるのも分からなくもない。


 分からなくもないが……俺はプレイヤーであり、そして元は人間でもある、そして男だ。

 それを分かっているはずなのに、リリは無謀というか無防備というか、ああ、無防具? 全ての防具に当たる物を全て脱ぎ去ったのである。

 びっくりした、ゲームの時のシステム的なものがあるのは分かっていたが服や装備が一瞬にして消えるなんて思ってもみなかった。装備が存在せず、またそういった機能のほとんどを使えない種族:【合成獣】では知りえない情報だった。

 ごちゃごちゃ言ってきたが俺が今一番言いたい事といえば、一言だけ――――俺は悪くない。


「どーしたの? レオも一緒に水浴びしよう?」


 一糸纏わぬ生まれたままの姿――――とでも言えば少しは聞こえはいいか? そんなことはない、全裸だ……小川に入り腰まで浸かるほどの深さがあったようで、下半身がよく見えなくなったのはいいが、それでもあまり起伏はない年頃の膨らみかけな感じの胸は丸出し、そんなの現実では無縁だった……いや親戚の子供とかのは見た覚えはあるが、俺にとっては直視しろというのは無理な話で……いや直視しろとは言われていないが。どうしろというのだ。


『リリ、さっきも言ったと思うが俺はプレイヤーで元は人間でしかも男なんだ、もう少し、その、……恥じらいとかなんかないのか?』


 恥じらっているのは一方的に俺だけのようだ、目を塞ぐのは止めて顔を上に逸らしつつ、なるべく視界がリリの顔だけ見えるようにして聞いてみた……首が痛い。


「んーなくはないかな」


 だったらどうして……。


「恥ずかしくないけど獣使いの契約ってそういうものなんだよ、レオは経験ないから知らないだろうけど、獣人種の人と契約する獣使いの人とかはそのままカップルっていうか恋人同士になるんだよ」


 俺は経験ない、確かに無いが……お前にはあるのか。という疑問が顔に出ていたのかリリがすぐに訂正してきた。


「あ、私もそういう経験はないよ……けどね、私レオと会えたのはそういう意味での運命だと思ったの、一目見た時に助けなきゃって思ったのと同時に不思議とこの人だ――――みたいな」


 リリ自体良くわかっていないのか少し曖昧な表情をしている。


『ふむ、では君はこの俺と男女の恋仲的なお付き合いがしたいと?』


 一時の気の迷いではないかと思うんだが果たしてどうなのか。


「そうだよ、言っておくけど私本気だから、ちょろいとか思われそうだけど、あの時契約してくれたのが本当に嬉しかったし街でも私のこと心配してくれてたし……レオならいいかなって」


 そう言われると俺も断る理由もないが……ほんと、ちょろいな俺も。


『そうか……俺もリリとならそういう関係でもいいかと思うが……いきなり一緒に水浴びはハードルが高いぞ』


 野宿で添い寝ならいける気がする。モフベッド化する事なら可能だ。


「そうかな……この先一緒に行動するんだから私の裸ぐらい慣れておいたほうがいいと思うんだけど」


 それはどういった理由でなのか。


「とにかく! このままじゃ私風邪ひいちゃうから早く来てよ!」


 そう言われてはやむなし――――何がやむ無いのか分からないが俺は渋々小川の中に入った。

 猫科混じりに水はどうかと思ったが濡れる毛皮が水を吸い重くなる以外に特に不快感もないのでそのままリリへと近づくと。


「えい!」


 俺を押し倒す様にリリが飛びついてきた……別にその程度では倒れることはないのだが足元が滑りそのまま水柱を上げて川底へ半身を叩きつける。

 ゴシゴシをリリが俺の体に自分の体を擦り付けてくる、なんか垢擦り替わりに使われている様な気がしてならない。


「レオも綺麗にしないとね」


 手櫛で髪の毛を梳かす様に俺の毛皮を洗うリリ……悪くないな、割と。


『手馴れているな、現実ではペットでも買ってたのか?』


 たてがみを洗い終わると背、腹、尾の順に丁寧に洗ってくれるとは獣冥利につきる? というやつだ。


「うん、犬だけどね……元々いろんな動物が好きで学生時代は飼育員とか獣医目指してたんだけど、ああいう現場のドキュメンタリーとか見てたらどうにも腰が引けちゃってねー普通に事務員とかに就職しちゃってお給料もそこそこもらって特に趣味もこのゲームぐらいだったから」


 課金しまくって現在のこのアバターだと……となると他の課金アイテムや課金システムも使っている可能性があるな。


『俺も似たようなもんだな……俺の場合怪獣映画とかの着ぐるみの中の人をやりたかったんだが時代の流れでCGとかが主流になったり映画そのものが減ってきたし高校に入った頃にはもう無難な会社に行って普通に暮らすみたいな事考えてたけど結局フリーターになって、日々課金と飯とネカフェ以外に金を使わない所謂ネカフェ難民みたいな事してたんだが』


 実に情けない話ではあるが、人間金の使い道が見つからなければこんなふうにもなる。現実で俺たちが付き合っていたら間違いなく俺がヒモであるが、今の契約という主従関係はまさしくヒモそのものではないかと思う。


「まーいいんじゃない? 今はレオはレオで私はリリ、元の世界とか関係ないよ」


 そう言ってもらえると実に助かる。


『そうだな……さてそろそろ上がるか、あまり水に使っていても風呂ではないんだ体を冷やすのは良くないだろう』


 水から上がるとリリはまず俺に付加魔法をかける。


「ヒートボディ!」


 体に熱気が生まれ濡れた毛皮が一気に乾いた、と思ったら未だ全裸のリリが濡れた身体を擦り付けてくる……タオル代わりに使われているようだな、再び濡れたところから瞬時に乾いているので何も問題はないが。

 それからリリは課金パジャマに着替え、倉庫を操作し始めた。

 倉庫システムとは所謂アイテムバッグの強化版とも言える機能で、課金者ならばいつでもどこでも使用ができる便利な収納機能だ。俺も使えるはずだがこの前足()じゃなぁ。


 そして倉庫から取り出されたのはトレントというモンスターの(うで)を数本、これを焚き火の薪に使うらしい。本来は装備作成の素材だったりするのだが今はもはやゲームとは違うのでこんな事もありだろう。

 リリはブレイズクローを俺に使い、それで火を起こすという……まさかこんなふうに使うとは……。

 そして最後にキャラット用に買ってあった人参魚を細いトレント枝に突き刺し焼く野菜と魚のミックスなので生でもいけるそうだが、今夜は焼いて食べるらしい。


「んーちょっと火が弱いかな……もうすこし焼こうか」


 チリチリと音を立てながら焼ける人参魚、しかしまだ半分も焼けていないようだ。


「焼けないね……」


『そうだな……諦めてこのままで食うか? 炙り焼き程度ぐらいにはなっているだろう』


 そう言って俺は半焼けの人参魚を咥え、枝をリリにとって貰ってから咀嚼した、表面はいいが中は芯でもあるんじゃないかというぐらい固い、生の人参を齧っているようだ……どこが生食可能なんだよ。


『生はやめた方がいいな、固くて食えたもんじゃない』


「そっかぁ……じゃあ仕方ないね、固形食料でも食べようか」


 そう言ってリリは倉庫を操作して豆腐のような塊を取り出した。いやどちらかといえば紙粘土か。「食べる?」と言われたが俺は残りの人参魚を処分すると言って遠慮した。

 食事も一段落したら眠くなってきたのでそろそろ寝ることにしよう。

 リリは案の定、俺をベッド代わりにしてその日は寝ることにした、つまり添い寝である……寝るに寝れない状況となったが先に寝てしまったリリの代わりに見張りすると考えればそれも悪くはないのか。


 こうして俺達の契約初日は終わったのだった。

【名前】レオウルフ

【種族】合成獣(獅子・梟・狼)

【職業】神獣

【性別】オス

【所属】リリの契約獣

【スキル】

 主従念話

【アビリティ】

 神化(付加)

 硬質化(付加)

 透過(付加・非戦闘)

 狂化(付加・戦闘/操作不可)

 自動回復(最大/常時)


【名前】リリ

【種族】人間

【職業】獣使い

【性別】女

【所属】レオウルフの主

【スキル】

 ブレイズクロー(付加・炎/爪)

 サンダークロー(付加・雷/爪)

 ゲイルウィング(付加・風/翼)

 ブリザードウィング(付加・氷/翼)

 グランドインパクト(付加・土/足)

 アイアンインパクト(付加・鋼/足)

 ウォーターテイル(付加・水/尾)

 アイビーテイル(付加・木/尾)

 クイックスピード(補助・速度上昇)

 ストロングパワー(補助・馬力上昇)

 ハードガード(補助・防御上昇)

 デュアル(補助・二重)

 ヒーリングキュア(瞬間治癒)

 ヒーリングフィールド(瞬間治癒/広範囲、遠距離)

 デスヒール(即時復活)

【アビリティ】

 コンボ(職業固有)

 危険予知(種族固有)

 直感(職業固有/常時)

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