モフ地獄とモフ天国……そしてリリの真実
短いけど内容が濃いと思います、ちょっと?表現的に微妙なところもありますのでお気をつけください。
奴は部屋の中央に居た、見た目は真っ黒な毛玉で背中と思わしき所に二つのコブがある、動かなくとも生きていけるようにラクダの様に栄養を蓄えているんだとか。
丸まっている体からのっそりと顔を上げて欠伸をする、その頭は熊だった。
そして再び丸まった……相手しなくていいんですかね?
「それじゃあやっちゃいましょうか、ご覧のとおりあちらにはやる気も伺えませんしね」
ロリコンがまずは駆け出し、それからホモが続く、レレレノとレナは一応治癒の用意だけしている、ショータはいつものようにただ見ているだけだ、しかしそれで相手が弱体化できるというのだからしっかりとした戦力だ。
『リリはレナ達と一緒にいてくれ、あいつは純粋に打撃のみでないと倒せないから手出し無用で頼む』
「わかった、レオも気をつけてね?」
そうして俺はボスに立ち向かった、やるべきことは一つだ、とにかく攻撃を加えること、それだけである。
幾ばくかの時が経った、未だ健在であるボス……名前は確か【超サンドバッグ君】だったか、たしかにサンドバッグなのだが、どうにも手応えがな。
三人がかりで膨大な時間をかけ殴り続けているのだが、一向に倒れる気配がない、それになんだか膨張しているような気もする、ホモとかが殴るたびにコブが蓄えるように肥大化したと思ったらロリコンが何発か加えるととたんに萎れて、体がおっきくなる……そんな感じだ。
俺は組み付いて牙を突き立てているので大きくなる瞬間というものがはっきりと分かるが他のふたりは気づいている様子もない、ショータ達後衛もショータが首を傾げている程度でリリ達は違和感を感じていないようだ。
そして異変は突然起こった、ホモの渾身の一撃がボスのコブにヒットしたと思ったらコブが焼いた餅のように膨らみ、そしてしぼむと同時にボスの体が急激に肥大化した。
重厚な肉厚とそれを覆うふっくらとした柔らかな毛皮……覚えているのはそれだけ。
ギチギチと締め付けられるように俺達は肉壁と土壁に挟まれ圧死した。
このゲーム的世界に来て初めてだろうこんな死に方した奴は。
唯一そこに救いを求めるのならば女性陣とショータが窒息死したことだろうか、圧死したのは多分耐久力に優れていた俺、ロリコン、ホモぐらいだろう。
毛によって口を塞がれ俺たちより先に死に戻った四人、それを見送る形で押しつぶされ出来の悪いトマトジュースみたいなった俺たち、果たしてどちらがマシだったのか……そんな議論不毛すぎて言及するつもりはないが、俺とリリは久方ぶりにアイノスへと帰還していた。
周囲を見る限りレレレノやレナは見受けられないので二人はロリパラにでも居るのだろう、思わぬ展開によってふたりっきりになれた俺とリリはその日の残りの時間全てをモフモフタイムに当てることにした。
アイノスにいつの間にか建造されたワクワクふれあいドームなる建物の中に入る俺たち、そこは床が全面クッション材で出来ていてどんなに寝転がっても平気な空間になっていた。
リリは早速倉庫を操作して身につけていた装備品を全て脱ぎ、全裸になった……なんでも、やっぱりモフモフを全身で楽しむなら素肌面積が多い方がいいから、とのことだ。
『眷属召喚、フェンリル! ネメア! オルトロス!』
俺はリリの夢のモフモフ天国を叶えるために強力な助っ人を呼び出した。
リリはあの地獄でも割と平気だったというが、それでも俺ら以外の毛玉にまみれたという事実が俺には許せなかった、故に俺はまず仰向けに寝そべり隣にオルトロスを配置した。
そこへリリを招き入れ、更に押しつぶさない程度にネメアとフェンリルをのしかからせた、これでモフサンドの完成だ!
「ちょっと重いけど最高の気分だよ、ありがとねレオ。私のために色々としてくれて……私はレオにしてあげられることも少ないのに」
『そんなことはないぞ、俺はリリと一緒に居れるだけで、それだけで十分だ』
一緒にいるだけでいいという意見にはフェンリル、ネメア、オルトロスも同意しているように頭を縦に振り、ついでに尻尾を振っている。
「それはそうだけど……ボス戦とかダンジョンじゃ私何もできなかったから……今度は私に任せてくれないかな?」
『何を? ……まさかボスをか?』
うんと頷くリリの目は真剣そのもので、何か勝算があるようにも思える……ここは任せてもいいかも知れない。
『それじゃあ今日はしっかりと英気を養って明日に備えよう……まずロリコン達と合流するところから始めなければならないが、今は気にする必要ない、しっかりとモフモフするといい』
そう言ってやると、リリは俺たちの体を撫で回し始めるその手つきは絡みつく毛を楽しむ様であり、俺たちのツボとも言えるところをはっきりと網羅しているかのような手つきには感動すら覚える。
それから時間切れでフェンリル達が帰った後はリリによる俺の蹂躙が始まった……テンションが上がっているのか少し手つきが際どいリリの目は妖しい輝きを放ち、妙な色気と艶やかさを見せてくれる。
腹部から下腹部にかけて舐めるように撫で回され、ちょっとそこはダメだって!
そして成すがままになされて……気がついたときには朝だった――――リリはまだ隣で寝ている、な、なにもやましい事などなかった。
いや、まだ日が昇り始めたばかりだしリリを起こさないようと思い立ち上がろうとすると……何やら違和感があった。
それはちょうどラグビーボールぐらいの大きさで、色は白くうっすらと銀色の模様があり楕円形、つまり卵のような形をしていた。
というか卵である、それもちょっと大きめでそんな謎卵をリリが抱えて眠っているではないか。
やっちまったか、と思った確かに昨日はそんな気配もあったがこの世界でそんなことができるとも聞いたことはあまりないしそもそも俺は人だった時が男だっただけで今現在の肉体がオスなのかどうかもよくわからない。
多分オスだろうとは思っているが、この体になってからは排泄などを全くしなくなったこともありそのへんは毛に覆われているので自分では確認のしようがなかった。
焦る俺に追い打ちをかけるように、朝日が差込みリリの顔を照らした……眩しいのか「んぅん」とかよくわからない声をだしてリリは目覚めた……リリの顔は俺の方を向いていた為、すぐさま目があった。
「んふふ、おはようレオ」
何がそんなに嬉しいのかリリは朝からにこやかだった。
『お、おはようリリ……えーとその、卵っていうかそのリリが持っている物体はなんなのか、リリは知っているのか?』
なんとなく聞いてみた、リリの表情からなにやら知っているという文字が読み取れたことや、恐らく俺の方が先に眠りについてしまったという確信があったので寝ている間に何かしたとしたら犯人はリリしか居ない。
「あ、これ? これはー……既成事実?」
『既成事実? 別に俺達はそんなものなくたって……ずっと一緒にいるぞ?』
何がリリにそこまでさせたのか俺には分からず訳のわからないことを口走ってしまう。
「でもレレレノさんとかどうもレオ目当てっぽいし、それに何よりルナちゃんが出てきちゃったら、取られないか心配だったんだ……あの子は昔から強敵だったしね」
『昔から……? それはどういう意味だ?』
「そうだね、レオその前にこの間は嘘をついたっていうかずっと黙ってたことがあるの」
黙っていたとか嘘を付いてたとか……騙していたと言いたげなリリに対して急に不安になる……実は体目当てだったとか、そんなのはどうでもいいんだが別に好きでもなんでもなかったとかならショックで立ち直れそうにない。
「実は私にはお姉ちゃんなんて居ないんだよ……そして初めて会った時からレオ様のことは知ってたしあのダンジョンに居たのも本当はレオを少し前から尾行してたからなんだ」
「私のね、サブキャラクターの名前はねリノーリラって言うんだよ――――レオ様久しぶり、それとこれからも末永くよろしくね?」
全く予想していなかったと言えば嘘になるが俺の目の前にはいつものリリではなく魔王軍大幹部、『色欲のりノーリラ』があの頃と変わらない笑みで座っているのだった。
衝撃のラスト! もうちょっと引き伸ばしても良かったけどなんか魔王ダンジョンやってるうちに明かしておきたかった、後悔はない。
そして卵!
【名前】????
【種族】卵(合成獣人)
【職業】卵
【性別】女の子
【所属】レオとリリの子供
【スキル】
なし
【アビリティ】
親族継承(常時)
生まれるまでに両親の能力やスキル、アビリティを継承する。
継承できる能力の数は子供のポテンシャルによるが、一番最初の子あるいは一人っ子の場合その殆どを受け継ぐ。
神獣の加護(常時)
卵の状態であっても下級モンスター程度の存在に畏怖され、またそれらを使役して孵化するまでの護衛にできる。




