VSタイチと合成獣の両親達
たぶんグロ注意。
そこまでえぐい描写は書けませんが、読む人によっては想像できてしまうかもしれませんのでご注意を。
後、この物語で本当の意味で死人は多分出しません、元々死んでいるアンデットとかはいるかもしれませんが、それ以外では極力ない方向で、のほほんとしたジャンルを目指します。
「やっと会えたね、俺のリリ……どうして君が一人でこんな危険な場所にやってきたか、聞きはしないよ……君がそんな子じゃないっていうのはわかっている、全部そこのモンスターが君を操っているんだね? かわいそうに、今その呪縛から開放してあげるよ」
どうしたらそこまで執着できるのか……リリは可愛いから分からなくもないけど、リリにその気がないのは見たら分かることじゃないか……まるで自分の魅力に気がつかないのは全部俺のせいみたいに言ってくれるが、そんな魅力ないだろ――――ま、アビリティに魅了でもあれば別だが……恐らくあるんだろうなレナ達の様子からも伺えることだが、でもそれだけじゃあんな命令されなければほとんど動けないでく人形にはならないはずだし。
「どう思われているか知らないけど、私ほかに好きな人が居るからいくら君がそんな風に言っても靡かないよ?」
おお、今回は割とリリがガツンと言ってくれる、もしなにかあっても奥に進んで助けを求めればいいだけなので気が楽になっているのだろうか。
「好きな人? どこにそんな奴がいるって言うんだ! 君は騙されているんだよ、本当に君のことが好きな奴だったら君一人をこんなダンジョンに行かせはしない、いや自分もついていくと言うだろうさ、俺みたいにな!」
それは偏見だろう……好きな奴=両思いとも限るまい、リリの片思いだったりするという可能性を考えていないのか。――――そんなことないがな、ちゃんと両思いでこうして一緒にダンジョンに来ているんだ何の問題もない。
『リリ、下がっていろ……アレはどのみち倒さねばならない、とりあえずは手出し無用だ』
俺の念話に対して頷いて答えたリリは一歩下がりすれ違いで俺が前に出る、リリを守るようにタイチ達に立ちはだかる。
「グァアアアォーン!!」
雄叫びをあげ俺はタイチ達に突進していく、部屋の広さはそこまでないので俺の全力の走りであればほんのニ、三歩でタイチと肉薄する。
右前足を振り上げ、押しつぶすつもりで振り下ろしたが易易と躱され、タイチと交代でシャラサとミミルが飛び出してくる、その表情は困惑に満ちており、俺が敵に回った事を受け止められていないようだった。
シャラサは俺の額に零距離で弓を射ろうとし、同時にミミルも俺の顔面目掛けて斧を振り下ろしていた、が……甘い、既に戦う前から俺はレオンとネメアを交代して防御力を底上げしていた。
刺さらない矢と砕け散る斧……俺の頭には衝撃と言えるほどの物もなく素早く二人を翼で打ち払い、壁際まで吹き飛ばす――――甘いと思われるかもしれないが、俺の目的はあくまで英雄なので構ってられないんだ。
「エレメンタルヒール:ガイア!」
レナの精霊治癒術が発動する、その意図に気づいた時には既に対応が遅れ、俺は足元から盛り上がった土に前足を絡め取られて身動きがとれなくなった、治癒スキルをこんな使い方するなんて、意外――――いや、確か俺を洗った時も水の精霊治癒を使ってたな、もしかしたら焚き火も治癒使って起こしてたかもしれない……あまり知りすぎて情が湧くの恐れすぎて相手のことを何も知らなかったというのもあるが、こいつは手痛いミスだ。
「よくやったレナ!」
俺の動きが止まった一瞬を奴が見逃すはずもなく剣に炎を纏い、進化した銃が吹雪を吐き出し俺の命を絶とうと迫り来る。
『ここらで奥の手でも出しておくか! いくぜ野郎ども、骨格変化:三頭種、素材変化:神狼派生!』
念話で数秒、変化は一瞬、炎龍剣を持つ腕を火山狼が、氷狼銃を持つ腕を氷山狼がそれぞれ噛み砕き、骨を粉砕し、真ん中の首、俺本体となるフェンリルの顎がタイチの悲痛に満ちた顔を、頭蓋を噛み砕く、中からにゅるにゅるした気持ち悪い物体が出てきたのですぐさま唾液と一緒に吐き出し、フェンリルの力で大地を操り足元の拘束を解いてバックステップで距離を取る。――――この間十五秒ほどの出来事。
立ったまま逝った英雄の首から血の噴水というほどの出血はなかったが両腕からも血が流れた事によってタイチだったそれが地に倒れるまでには十分な血溜りが出来上がっており、首と両腕を失った体がパシャっという音を立て血溜まりに沈み込んだ。
『呆気ないな』
「クォォォオーン」
両脇のが勝利の遠吠えを上げる……正直耳元でうるさい。
雄叫びが終わる頃にはタイチの死体は忽然と姿を消していた……これが噂の復活転移か……残されたのは僅かばかりのこちらの通貨で金貨三枚と奴の代表武装日輪の盾だった、俺は使えないしリリも使わないからここに埋めておこう。
もしかすると盾の木が生えてくるかもしれないしな……せっせと穴を掘っていると未だ動けるレナが近寄ってきた、さっきまで動ける様子じゃなかったのにな。
「あの……ありがとうございました、彼を倒してくれて」
なんと、お礼を言われた……俺は驚き穴を掘る手――――前足を止め、レナをじっと見つめる。
「彼には不思議なスキルがあって、初めて会った時に助けられて恩を感じて以来ずっと逆らえなくなってまして……私やシャラサ、ミミルはずっと彼の奴隷でした」
それからレナは奴の悪行の数々をぽつぽつと話し始めた、最初は喋れない俺の状態もあって聞くに徹するしかなかったが、徐々にレナの感情が高ぶってくると相槌を打ったり、左右の首が慰めるようにペロペロしたりして――――ロリエルフペロるとか変態か、お前ら。
「そんなわけで私は彼から逃げたかった……そして彼が倒れた今なら逃げられる……本当に、ありがっ……と……」
は?
である……だってそんな突然レナの胸から見覚えのない剣が二本も生えてたんだから驚きもする……ましてや返り血を顔面にもろに浴びたらな。冷静でいられたのは左右の首が素早く下手人の首を噛み砕いたからだろうか。
首から上を失くし崩れ落ちるシャラサとミミル……この二人はきっとレナとは違って本当にタイチの事を好きで付き従っていたんだろう。
シャラサが最後に呟いていた言葉は「裏切り者……」だったからな、二人が倒れた事によってレナの胸から剣が抜けたが、レナもそのまま地面に倒れてしまった。
「ああ……死にたくない……せっかく逃げるチャンスだったのに、このままじゃ、また振り出しに……」
復活ポイントが同じなのだろう、このまま逝けば間違いなく先に逝ったあいつらが待ち構えている。
どうにかしてやりたいが、俺にはどうすることもできない。どうしたものかと悩んでいたらリリが横までやってきて、倒れたレナをじっと見つめていた。
「あ……」
その呟きを最後に彼女は動かなくなった。
「デスヒール」
即時性復活治癒スキルだったな、死んでからじゃないと使えないから完全に息絶えるまで待っていたのか。
彼女の致命傷になった胸の傷が塞がり、何事もなかったように無傷になる……しかしレナが起き上がる様子はない、一応呼吸らしいものはしているがなんだかすごく苦しそうである。
「これも一種の瞬間系治癒だから、痛みが残ってるんじゃないかな……ほっといても復活するだろうけどこのままにはしておけないよね。レオ、悪いけど少し屈んでくれる?」
どうやらレナを背中に乗せろという事らしいので俺はフェンリルの力で大地を迫り上げ、レナを背中に乗せた。
『これでいいか?』
「仕方ないね、早くエキドナさん達に会って帰ろうか」
特に括る必要もなく小さなレナの体なら例え寝返りを打っても落ない程度に俺の背中は広いのだが、如何せんレナが小さく、また軽いのでちゃんと乗ってるか分からないのでリリも乗せてレナを支えてもらっている。
二人を乗せたまま部屋の前に立つと、扉が勝手に開き奥へと続く通路が出現した。
そのまま通路を進んでいくと奥に再び扉が――――自動ドアのように開き、コンビニとかでよく設置されている、ドアが開くと効果音で知らせてくれるタイプのアラームがなる。
「おや、遅かったね……英雄殺すべし、きちんと果たしたようで母さん嬉しいわ」
部屋の中は他の広間と違いどっからどう見ても六畳間というやつだった、ご丁寧に畳まである……そこに下半身と髪の毛が蛇で出来てて翼が生えた裸エプロンの女性が一人……もっとデカイ化物みたいなの想像してたんだけど、エキドナ母さん。
「キサマらの大きさに合わせてやったいるのだ、感謝するが良い」
下半身が蛇……だけど一本じゃなく数本生えてて上半身はムキムキのマッチョが半裸を見せつけている……貴方も腹筋女神の同類か、と思ってしまうダンディなドラゴンヘッドが渋いテュポーン父さん……つか、この人どういう生物かまるではっきりしないな。
「とりあえずこれをくれてやるからさっさと帰れ」
テュポーンが何やら光るものをリリに向かって投げつけた。
「鍵、ですか?」
「そうそう、次のレオちゃんの行くべき場所の鍵よね、神獣力を高めたければ金色の鍵の方、四聖獣ダンジョンと言えば分かるでしょう? そこの最奥に通じる鍵よ。そして銀色の方が魔王力を高めるためのダンジョンの鍵ね、これは言わなくてもレオちゃんなら知ってるでしょうし、私からは以上ね」
そういうとエキドナは姿を消した。続いてテュポーンも消え、最後に声が聞こえた。
「その英雄の匂いのついた娘を連れて早く帰れ、関係こそ切れたとは言え未だ根深くその痕跡は残っているのだからな……くれぐれも扱いには気をつけろよ」
そして誰もいなくなった部屋が突然揺れ始めた、まるでさっさと帰れと急かしているみたいだったので俺は背中のふたりを落とさないように慎重かつスピーディにその場を後にした。
結局あのエキドナとテュポーンが何者で何故俺に協力してくれるかは最後まで分からず終いだったがとにかく、俺は念願のパワーアップをすることができたのだ、まずはその喜びと様々な素材変化でリリにたっぷりとモフってもらうことを楽しみにして俺達はアイノスへと転移するのだった。
【名前】レオウルフ
【種族】合成獣(獅子・梟・狼)
【職業】神獣
【性別】オス
【所属】リリの契約獣
【スキル】
主従念話
【アビリティ】
形態変化(分岐派生)
神山狼形態/火山狼形態/氷山狼形態
三頭犬形態/双頭犬形態/海蛇座形態/竜座形態/蟹座形態/獅子座形態
骨格変化(基礎派生)
合成獣種、 三頭種、双頭種
素材変化
神化(付加)
硬質化(付加)
透過(付加・非戦闘)
狂化(付加・戦闘/操作不可)
自動回復(最大/常時)
【名前】リリ
【種族】人間
【職業】獣使い
【性別】女
【所属】レオウルフの主
【スキル】
ブレイズクロー(付加・炎/爪)
サンダークロー(付加・雷/爪)
ゲイルウィング(付加・風/翼)
ブリザードウィング(付加・氷/翼)
グランドインパクト(付加・土/足)
アイアンインパクト(付加・鋼/足)
ウォーターテイル(付加・水/尾)
アイビーテイル(付加・木/尾)
クイックスピード(補助・速度上昇)
ストロングパワー(補助・馬力上昇)
ハードガード(補助・防御上昇)
デュアル(補助・二重)
ヒーリングキュア(瞬間治癒)
ヒーリングフィールド(瞬間治癒/広範囲、遠距離)
デスヒール(即時復活)
【アビリティ】
コンボ(職業固有)
危険予知(種族固有)
直感(職業固有/常時)
【名前】レナ
【種族】エルフ
【職業】精霊治癒師
【性別】女
【所属】
【スキル】
エレメンタルヒール:アクア(持続治癒)
エレメンタルヒール:フレア(瞬間治癒)
エレメンタルヒール:ゲイル(瞬間治癒)
エレメンタルヒール:ガイア(持続治癒)
【アビリティ】
精霊の加護(常時)




