八十二話目
店舗は完成し、商品も質の良いものが揃った。
ここまでくれば後は上手い事客を呼んで商売繁盛!!…といきたい所だが、不安要素が数点残っている。
立地面に、自分自身のこれまでの所業に対する信用問題。これらは商売上では大変不利。
一応考えがあるにはあるんだが…
鬼「いやぁ…上手くいくんだろうか…」
ア「おいおい、あれだけ言い切ったんだから頼むぞ?」
鬼「とりあえず行きま…」
エ「キリュウ、ちょっといい?話があるんだけど」
鬼「ん?何?」
エ「店出来たのはいいけど店名はどうするの?店の代表はキリュウでいいんでしょ?」
鬼「いや、書類上の代表はエルトで。店名は後で考えとくから」
エ「え!?僕!?ムリだよ、そんな店なんかした事ないんだから!」
鬼「経営はおっさんと自分でやるから大丈夫だって。あくまでも手続き上の代表だから」
エ「でもここまで大きくしたのはキリュウの力だよ?だったら代表はキリュウにしないと駄目だって」
鬼「自分のままじゃ国との手続きとかで面倒が起きるかもしれんだろ?
普通の人間の名前の方が不利益とかも無いだろうし」
エ「でも…」
鬼「言ったろ?あくまでも手続き上だから。実務とか実際の決定権は自分だから。
あくまでも!あくまでも手続き上だから。いいだろ?」
エ「…そこまで言うならいいけど…」
まだ納得していないというのが目に見える程よくわかる。
エルトはそのまま工房の方に戻っていった。
こら、まだ何か言われる前にさっさと手続しちまって逃げれないようにした方がいいな。
ア「それで、何故エルトを代表にしたんだ?」
鬼「言ったろ、手続き上の…」
ア「これだけ、面と向かって喧嘩ばかり仕掛けたんだ。今更不利だの面倒だのを言うお前でもあるまい?」
鬼「おお、よく気付いたじゃん」
ア「馬鹿にするな。…エルトに作り上げた物を残す為か?」
鬼「…お前も言ったろ?今まで散々方々に喧嘩ばかりを仕掛けてきたんだ。
正直人間の世界を追われる事すらあるかもしれん。ここまで付き合ってもらったんだ。
多少のお礼はしとかんと流石に目覚めが悪い」
ア「…私も否定できんのが同罪の証という事か。…付き合うぞ、どこまでもな。私だけはな」
鬼「……きれいな美女にでも言われれば嬉しいんだがな。鳥もどきの神様に言われても…」
ア「飛んで逃げるぞ、こら」
鬼「冗談冗談。頼むぞ~、お前がおらんと自分の行動の根幹が揺るぐわ。
では…情報操作の方を何か考えんとな。バッカスにでも色々話を流してもらうかな」
ア「一応生産系ギルドを当たるというのはどうなのだ?
そこに上手い事流せれば信用度は大分高く評価されると思うが?」
鬼「となるとどういった立場の人間に流せるかがかなり重要か。そこらの一般職員じゃあねぇ…
上手い事、か。そこが大変だ」
生産系ギルド、食糧生産や資源の確保や加工など人間の生産活動の根幹を支える機関だ。
近年人間界では生産物資の値段が徐々に上昇しつつある。
食糧生産に適した農地などは開墾する余地が殆ど無くなりつつある。
それは総生産量が頭打ちになりつつあるという事の証明だ。
故に人間界の各国は新たな資源確保ができる土地の発見、開発にかなり資材を投じている。
アクアビス国も例外ではない。国内の生産ギルドに所属している団体も言うに及ばず。
生産ギルドの建物は鬼龍エリアの中にあり、国中から様々な生産品が届いている。
国の中心部分に立っており、いかに重要な組織かというのがよく分かる。
それは建物の全容を見上げれば理解もしやすいというものだ。
鬼「ギルドの建物なんてのはどうしてどれもこれもこうデカいのかね~」
ア「なにせ扱う物の量が半端ではではないからな。それらを保存する機能も必要だ。
かなりの量のソウルマシンが使われているはず。燃料たる魂の消費量もかなりだろうな」
鬼「……人の魂を燃料とするマシンか。なんとも気味の悪い装置だ」
ア「まぁ、ここではそれが通常だ。あまり言うなよ?それこそ気味悪がられるぞ」
鬼「今更な気がせんではないがな。さてここに来たはいいが、どうしたもんか…」
?「失礼いたします。お間違いでしたら申し訳ないのですがキリュウ様ではないでしょうか?」
鬼「そうだが…どちらさんかな?」
ダ「私は生産ギルド長秘書官ダンカン・ロナガンと申します」
ア「生産ギルド長…最近会う人間の肩書がえらい事になっとらんか?」
鬼「それに関しては全く賛成だ。少々現実離れしすぎな気がするが…冗談ではなさそうよ」
ダ「勿論です。ギルド長のジャスパー・クロズビーがぜひお会いしたいと申しております」
ア「しかも側面会希望だ。お前いつからそんな人気者になったんだ?
本来なら会うのにだって相当時間がかかるはずじゃないのか?
それとも、長と名の付く人間はよほどの暇人が揃っているのか?」
鬼「残念ながらそこも大いに賛成だ。ただ、会いたいというのを断るのもあれだ。
お会いしようじゃないか。こちらも要件があってきたわけだしな」
ダ「ではこちらに」
建物の中を秘書官という人間と歩いているとかなり注目を集めるらしい。
職員や用事があって来ている人間もこちらを見てくる。
ただし、自分のこの服装もかなり有名になってきたしな。アレイスもいる事だしな。
ダンカンが部屋の前で立ち止まり、失礼しますと声をかけ扉を開けていく。
アレイスの言う通り最近構築される人間関係がかなり豪華になってきている。
リストでも作れば中々に面白い物にでもなりそうだ。
ジ「おお!アンタがキリュウとかいうのか!最近大分大暴れしているそうじゃないか!
面白い、実に面白いぞ!さぁ、座ってくれ!話をしようじゃないか、楽しい話をな!」
扉を開けるとやたらとテンションの高いおっさんが中で待っていた。
今までこれだけ大声で話してくるような人種はいなかった。
正直それだけでもこの交渉が若干いろんな意味でメンドクサイ事になるような気が大いにしてきた。
……どうすればいいんだろうか。




