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七十八話目

国からきた書類の内容は立ち上がった部署用の部屋が城内に与えられたそうだ。

名前にアクアビスが入っている以上自分も一応とはいえ国に仕える公僕になってしまった。

こちらが出したオーダーは誰からの命令も受けない全くの独立した組織だ。

国側もその条件を飲みこの話が成立した。ただ、あちらも譲歩した分こちらも譲歩を余儀なくされた。

それが対面上は国に従っている風を装ってほしいそうだ。

他の国家への体面やプライド面の要素が限りなく強いのだが。

そういえばいつも城に来るときは問題や面倒事の時ばかりだからあまり他を見る余裕はなかった。

今回は部屋の受領という緊張した面が無いので初めて城内をゆっくりと見る、という事が出来た。

各部屋に決められた部署が割り当てられており、執務室や資料室、倉庫や各部署用の客室。

大小様々な会議室など部屋の用途は多岐にわたっている。

こちらは国としてもそれはそれは重要な部署だ。与えられる部屋もそれは豪華に…











鬼「…………なにこれ?」


当たられた部屋を見た第一感想はこれしかなかった。

家具と呼べるものもテーブルと椅子が幾つかしかなく部屋全体が誇りにまみれている。

広さだけはやたらと広いがこれは一体どういう扱いなのか本気で考えてしまう。

窓も一つしかなく、採光というものや風通しというものはあまり考慮されていない印象だ。

明らかに倉庫かなんかを慌てて片づけて余った家具を適当に置きましたと言わんばかりの状況だ。


鬼「なるほど、これは最早嫌がらせの域に達していると考えていいのかな?」

ア「周りに人間も通らず、静かで良い所ではないか。ごちゃごちゃとしているよりも余程好きだぞ」

鬼「いやいや、国の重要機関の城内に構える部屋にしてはおかし過ぎるだろう?

もう少し居心地のいい部屋くれてもいいじゃんよ~」

ブ「ここの内装や調度品に関しましては局長の自由にしてくださって結構です…

ただし、改装工事となると業者の選別などはこちらで致しますのできちんと書類を通してください…」

鬼「え、こっちで勝手にはまずいのけ?」

ブ「はぁ…ここは城ですよ?城内には需要機密がごろごろしているのです…

信用のおけるギルドでなければ入れることなどできるはずがないじゃないですか…」

鬼「ああ、すんません…」

ブ「ではこれがこの部屋の使用書と鍵になります…では私はこれで…」


愛嬌もなく愛想もなく、まさしく必要最低限の仕事だけをこなしてブルーノは部屋を出ていく。

……キャバクラや風俗店ではないがぜひチェンジで!!と大声で叫びだしたい気分だ。

これが担当官でこれから長い付き合いだというから非常に残念だ。

とにかく現状を嘆くよりもこれからの事を考えていこう。

部屋を見渡すが本当に急ごしらえというのがよくわかる。

奥に一枚の扉があるので開けてみると此処は本当に窓もない真っ暗な空間だけが広がっている。

こちら側にある壁に掛けてある照明用のソウルマシンを引っこ抜いて部屋を照らしてみる。

有線とかではなく何らかの充填式なのか壁から引っこ抜いても明かりは保たれていた。


ア「おいおい、いきなり受領された部屋を壊すこともあるまいに。全く乱暴な人間だお前は」

鬼「仕方ないだろ?他に照明が無いんだから。しかし、こっちは本当にただの倉庫だな。

備え付けの家具もなく壁や床も飾り気の欠片もない。何ともありがたい部屋だ。

唯一の利点は狭さに悩むことは無いという所だけか」

ア「増築の費用と手間を省けたのはまぁ…助かったか」

鬼「しかし、これだけ何もないというのも流石に味気ないわな~。

家具とか多少の調度品位は揃えたい所か。ちょっとエリーゼに頼んどこうか。

そういうのは女性の方がセンス良さそうだし」

ア「また仕事が増えると文句を言われるぞ」

鬼「仕事をするうえで環境は大事だろ?それを整えるためならエリーゼも手間を惜しみはせんよ。

それにだ」

ア「それに?」

鬼「女性は買い物が好きだというのは古来からの決まりだ」






鬼「という訳で買い物でもどうだいエリーゼ君?」

エ「……一体何がどうなってという訳でとなったのか聞いても?」


家に戻るとエリーゼは大量の書類の片隅で休憩中だったようだ。

エルト家の邸宅で与えられたエリーゼの部屋は仕事の内容上、かなりの広さを与えられていた。

私室兼執務室と言った所か。うん、こういうのをこれからは全部城で行えばいいのか。


鬼「城で与えれた部屋なんだけど、家具も調度品も飾り気もないから少々殺風景でさ。

これから長く使う仕事場なんだし多少手を入れようかと思ってね。

自分の職場があまりにも殺風景で生活感が無いというのは女性としてはあまり気分が良いモノじゃない、

そうでないかい?」

エ「それはそうだけど…」

ア「それにこれから様々な来客や交渉事、エリーゼの事務仕事などはあちらで行う事になる。

今の状況ではとてもじゃないが客人をもてなす、という観点からはあまり向かんのでな」

鬼「そういう事、それにそういうのは女性の方が綺麗に出来そうだし」

エ「……なんかキリュウは全く関知しないって言っている様に聞こえるんだど?」

鬼「エリーゼの裁量に任せるって事よ」

エ「はぁ~…炎錬工房への資材搬入の手続きとかも残ってるんだけど?

まだ増やすんだ?まだ仕事増やすんだ?」

鬼「ハハハハ……すいません」

ア「やはり私の言った通りではないか」

鬼「う~ん……どうだろ、もう一人くらい事務員的な人材を増やすかな」

ア「その方がいいだろうな。この書類の量、もはや国からの嫌がらせとしか思えんわ。

それにこれから魔族界での土地所有の手続きなんかも増える事だ。

一人と言わずもっと増やしてエリーゼの負担を減らさんと倒れるぞ?

今エリーゼに倒れられてみろ。お前一人で処理できるのか?」

鬼「ムリ、ゼッタイムリ。だったらまだ魔族の群れでも相手している方が万倍マシだわ」

ア「そちらの方が私も助かるがな。だが役所相手なればまだまだ書類地獄が続くだろうしな」

エ「助かる!それは本当に助かる!だったらこれらの書類も全部城の方に移してもいいんだよね?

ああ…これで人間らしい生活ができる…」

鬼「そういえば…この局の正式名称ってどうなってるんだろ?受領書にも書いて無かった様な…」

エ「え、そんな重要な事忘れてたの?エ~…」

鬼「もう一回城に行ってブルーノ辺りに聞いてみますかな」

エ「ブルーノって?」

ア「総務取扱局との連絡員だそうだ。向こうに行ったら半ば強引に押し付けられたが。

辛気臭い暗~い雰囲気醸し出す不幸感抜群の人間だったな」

エ「連絡員ってことは?キリュウの部下とかいう訳ではないの?」

鬼「そういう事。じゃあ、行って来るかな~。ああ、肝心の土地所有の話も聞きそびれちゃったし」



確か国からの要請の中には正式名称の中にアクアビスを入れるってのがあったか。

アクアビス…すでに五文字も使ってしまってるな。

あんまり長い名称も覚えるのが面倒だし…ていうかそれ以前に名前決めるのって自分なのか?

いや、いいんだよな?決定権は全部こっちにあるんだし…大丈夫だよな?

なんか変な名前もう決められてるとかない…よね?

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