七十五話目
えらく久方ぶりの魔族界での狩猟活動。出足は上々だ。
というのも本来狩猟活動の難易度は戦闘もさることながら見つけるというのもかなり割合を占めている。
生活拠点は何処か、縄張りなどはどの辺なのか。さらにすべての魔族が他の種族に襲うという訳ではない。
当然のことながら他の種族を見つけた場合逃げるという選択肢を取る魔族もいる。
そこでアレイスとの共同作業ではあるが以前よりある訓練を行っていた。
アレイス曰く自分の力の源は桁外れに強い魂の資質らしい。
故に掌神アレイスという神を身に宿し、その持っている力のすべてを使えると。
このアレイスは特徴として一切の武具を持たずに力を発揮するところだ。
その特徴故にアレイスは魂そのものを使う技術を考案、体系化する事が出来たらしい。
愚者の遊びとアレイスは皮肉を込めて自分でそう名付けたそうだ。
効果としては魔法に近いものが多いらしく、意外にもマリアスは喜んでいたらしい。
やはり私達は姉弟なのだと。他の兄弟方はかなり気味悪がりより嫌悪されるようにはなったが。
流石に法神契約者程バリエーションは無いが、それでもかなり有効な技術だ。
そういった特殊な力の使い方は法神の領域だ。そんな事が他の兄弟神には到底出来様はずもない。
他の兄弟が武具を使う事を極めたようにアレイスは掌神の名の如く自らの身体を使う技術を磨いた。
その中には生命の根源たる魂も例外ではない。
法神契約者の使う魔法というものは神のサポートを受けながら使役する。
それ故、人間側の負担は大分軽減される。
それと違いはこちらの力の出力もコントロールも全てを契約者が自分の感覚で行わなければならない。
さらにはそこで得た情報の処理も全てを自分の身一つで行う。
まぁ、最初のころはえらく疲れるわ得た情報量が多すぎて意味が分からんわ最悪だった。
一番最初に取り組んだのがこの生命探査と呼ばれる方法だ。
自らの魂を薄く細かく放出していく。それらが他の魂に付着した瞬間自分にその魂の情報が送られる。
その生物の魂の強さ、位置、体躯の全長、それらが脳内に情報化される。
マーキング法、二人で相談してつけた名前だ。せっかく作ったのに名無しというのはあまりにも不便だし。
流石にその効果は永続ではなく、精々数日間だけだ。
ただ、これは魂のある生物全てに反応してしまう。魔族以外の獣や虫と言った輩もだ。
さらにそれらの判別までは実際見てみないと分らんという残念仕様。
それらを判別して刈る対象かどうかを選ぶのに相当時間を要してしまった。
ようやくまともに使えるようになったのはつい最近だし。
ただ、この技術のおかげで今後はかなり効率よく仕事が出来そうだ。
お陰でどこに何がいるか、は分からないがどこに居るかだけでも分かるのはかなり便利だ。
それを狩りに実際使ったのは初めてなんだが結果は上々。
戦果を引っ提げて村に着いたんだが…あれおかしいな?何でこんなに村内が緊張してんだ?
鬼「あり?なんでこんな厳重な迎撃態勢がひかれてんの?」
ユ「はぁ~…全く…皆戦闘態勢は解除、各々の作業に戻ってくれ!」
鬼「え、戦闘態勢整えてたの?はっ、まさか自分メッチャ嫌われた!?」
ユ「馬鹿者!!!少し前にここで何があったか忘れたのか!
複数の魔族が同時にこっちに向かえば、緊張するのは当たり前だろう!」
鬼「いや、そう言っても…事前に連絡なんてできないし…これ置いとくと盗られそうだし…」
ユ「あ、いやこちらも言いすぎた。…まぁ、この件はもういいだろう。でだ、今日の用事は何だ?」
鬼「今後人間界側から魔族界に対する侵攻が進められる事になる。
様々な形ではあるが主に資源調達、食糧生産、魔族討伐。これらを大々的に行う。
それらに関してアゴン族と話し合いをしておこうかと思ってね」
ユ「話し合う?」
鬼「アゴン族と人間族が遭遇した場合どうするか。アゴン族の生活に関わる拠点の有無。
あった場合のその所在…とまぁ、要は今まで以上に人間界がここにいる時間が長くなる。
自分としては当然アゴン族との武力衝突は是が非でも避けたい。そのための話し合いよ」
ユ「そうか…だが基本アゴン族は結界内にすべて入っているからな。
それ以外にアゴン族にとって重要な拠点と言われても…」
鬼「だがここら辺に急に人間が我が物顔で拠点作ったらそれこそこの村の人もキレるでしょう?」
ユ「ではとりあえずこの村の周囲は一切手出しをしない。
拠点づくり、資源調達、魔族の狩猟活動。それら全て。人間族の活動の一切をだ。
あいまいにしておかず最初のうちに厳しく決めておきたい。こちらとしても戦争状態なんてのは御免だ」
鬼「そこら辺の細かい条件はもう少し人間側と詰めとくかなぁ…
他の氏族関連の村に関しては今後の進捗状況によるか。
そちらはそれでいいとしてもう一つはアクアビス国近郊の資源情報に関してなんだけど。
例えば食糧生産に適した場所とか鉱物が豊富な場所とか。
そこら辺の情報はアゴン族の方が詳しいと思うだけど?」
ユ「食糧生産となると土の性質なんかがそちらの主な生産物が何か分らんと何とも言えんな。
水資源の近辺やあまり他の魔族の生息領域とは当然離れた場所の方がいいか。
…口頭では説明できんか」
鬼「その辺は書類や地図なんかがどうしても必要か。
アクアビス国にそんなに細かい地図があればいいが…無いとなると地図製作から始めないと。
うわぁ…メンド」
ユ「では情報開示は書類が届き次第、という事でいいのか?」
鬼「そうだな、今聞いてもそんな細かくて重要情報暗記だけじゃおっかないわ。
じゃあ、後はまた今度…」
ユ「ああ、すまんがこちらとしても頼みがあるのだがいいか?」
鬼「頼み?内容は?」
ユ「今後魔族界には多数の人間が入り、活動時間も大幅に増える。それは良い。
だがそこには当然起きるであろう多種多様な問題も起きるだろう。
その際には我らと人間側の間に入るのはお前を指名したい。それ以外の人間は一切認めん。
当然だろう?我らがあれを渡したのはキリュウ、お前になのだから」
鬼「ああ、それに関しては問題ないよ。
今後自分はアクアビス国におけるアゴン族関連の部署の責任者になったから。
危険も利益も今後の全てを自分は担うつもりだ」
ユ「…それはまた…」
鬼「他の人間入れると完璧に人間よりの活動されちゃうしね。とてもじゃないが他人を入れる気は無いわ」
ユ「その言い分だとお前は人間側ではないような印象だな」
鬼「いやいや、自分は自分だけの味方よ?人間側でもないしアゴン族側でもない。
ユリウスとしてはこの言い方だと駄目かな?」
ユ「いや構わんさ。…では今後ともよろしく頼むよ。キリュウ」
鬼「この関係が自分にとって有益だと信じているよ。ユリウス・バボラーク
その中にはアゴン族も入れてあるつもりだ。人間は…まぁ、不利益にはならん程度には勘定にいれるか」
ユ「同じ種族をその程度の扱いか…クックック…お前は本当に人間か?」
鬼「さてね…どっちかっていうと…化け物かな?」
ユ「化け物かぁ…まぁ、否定は出来んのではないか?」
鬼「ワォ、そこはもうちょっと否定してくれてもいいんでないかい?」
ユ「おや?ではお前は人間でいたかったのか?」
鬼「さてねぇ…」
意外にもユリウスの言葉を自分は肯定も否定もする気は起きなかった。
人間でいたいのか、前に五神に言われたように化け物だったのか……どうしたいのかねぇ。




