七十二話目
国からの御呼び出しが来たかと思えば石昌は国家に所有権があるだの、自分には貸し出すだの…
あまりにも斜め上というか上から目線と言えばいいのか、とにかく滅茶苦茶な命令がただ出されただけ。
色々話し合った結果正直面倒なのと腹が立ったという二点の結果を踏まえて話し合いは終了。
この国では一切石昌は使わない。何せ所有権は自分には一切なく、面倒な運用管理を自分でしろと。
それ以上の話はしていないので詳しくは分からないが、利益が自分にどれだけ流れてくるかは甚だ疑問だ。
利益が見込めず、訳の分からない部署の責任者?であるならば出てくる答えは一つだ。
鬼「アンタらにどう思われようが自分には関係ないね。ではこれで失礼しますよ。
まぁこれは貴方方に奪われたわけだし置いてくけど。精々使えもしないを後生大事に持ってれば?」
オ「待ってください!…全く交渉の余地はなしですか?」
鬼「交渉?何、今まで交渉してたつもりだったの?そっちから命令を一方的に出してるだけで?
こっちの希望も聞かずに?交渉って目的のためにお互いが歩み寄って妥協案を探すことだろ?
であるならば今まで交渉なんてことはなされてないんだよ」
オ「……ここでもう暫く待っていてもらえない?ここからは貴方の言う交渉をしたいと思うわ」
そういって法聖騎士団団長と王立法神研究所の所長の二人が部屋から出て行った。
この二人で何らかの答えが出ないという事はそれ以上の権限がある人間と相談に行ったのだろう。
ただどうあっても石昌を取り上げたいらしい、この国の人間は。
鬼「アイツらで決めれないとなると…それなりの条件は期待できそうかな~。
少なくともそれなりの利益は見込めそうか」
ア「だが、そうなると国に何らかの形で所属するという事にならんか?
正直それは腹正しい所もあるが…あれが使える効果を考えると折れねばならんか」
鬼「ある程度の利益供与は折れても国への所属はする気は無い。
例えそのせいで石昌を使えないという事態に陥ってもだ」
ア「後はあいつ等が持ってくる話次第か。内容によっては一度持ち帰って考えた方がいいかもな」
鬼「面倒だからさっさと済ませたいんだがね~」
オ「お待たせしました。では交渉を始めましょうか」
鬼「本当に交渉になんのか~?また命令ばかりしてくるんじゃないの?」
オ「まずは貴方方の希望を聞きましょう。どう?まだ交渉っぽいでしょ?」
鬼「一歩前進だな。…そうだな、こちらの希望としては国家、ギルド、教会。
いずれの組織にも属せずこっちだけで石昌を運営、管理の一切を行う。
石昌の権利のすべては自分に属するものとする」
オ「…それですべてかしら?」
鬼「第一段階としてはそんな所かな?今後は運営をしながら出てくる問題に随時対処するってことで」
オ「……これだけの事業を個人で全て行えると本当に考えているの?
貴方が属さないと言った組織で世界は成り立っているのに?」
鬼「むしろどこかの組織に属した方がこれだけの物、上手く回らないんじゃないの?」
オ「どういう意味?」
オ「どこの組織に入ったってそれぞれの思惑や考えで弊害が起きる。
下手をすればお互いで足の引っ張り合いだ。利益の配分、運用の権利、誰が動かして誰が得をする。
そういった所でゴタゴタするだろ?仮に今これを国家が所有して他の組織が黙ってるのか?」
オ「……」
鬼「沈黙は肯定と捉えてもいいかな?」
オ「しかし、これを得たのは貴方だ。どこの組織もに入っていない貴方だ。
であるならばこれを国が使ってもいいではないですか?」
鬼「それは他の組織にも使える理論だろ?黙らせるどころか余計揉めるわ」
サ「では貴方は何を妥協してくれるというのですか?」
ア「妥協?なにをだ?」
サ「貴方は交渉はお互いが目的のために妥協案を出し合うと言った。
でも今までの交渉は一方的に貴方の要望だけを聞いている!それを憤慨したのは貴方だったはずよ」
鬼「そう、今までアンタらがやってたのがこれだ。どうだ?腹立つだろ?」
サ「なっ…!!」
鬼「ただし、団長が言った通り今は交渉だ。こちらとしてもそちらの希望を全く聞く気がない訳じゃない。
聞こうか?そちらの望みは何だ?」
オ「それならば…一番の望みは国家主導の元、石昌をアクアビス国の利益にしたいと思っています。
その為に貴方には何らかの国の部署に所属をしていただきたいと考えています」
鬼「利益と従属。それがそちらさんの最大限の希望だ、ということでいいかな?」
オ「そうですね。それが私共の希望です」
鬼「こちらとしては自由と利益だ。となればおのずと妥協点は見えてくるわな」
オ「…どういう意味でしょうか?」
鬼「お互い希望点は二点。一方は相反するが一方は一緒の訳だ。
であるなら相反する方を話し合うのが交渉でしょ?」
オ「…全く意味が分かりませんが?一体何をするつもりですか?」
鬼「ちなみに聞くんだけど従属というのはどういう形を言ってる?
さっきも言ったように要は国に所属させて自由に利益を搾取して、命令し放題!という事かい?」
オ「流石にそこまで言う気はありませんが…」
鬼「ただ、それに準ずる形ではある訳だろ?しかし、それはまったくもって御免という訳だ。
となればだ…う~ん、どういう落としどころがあるかなぁ」
ア「そちらとしては此奴個人でというのが問題ある訳か?これだけの物を一個人が自由にするというのが」
オ「そうですね、そういった意味合いもあります。国内にも国外にも」
ア「であるのならばもう片方のお互いの妥協点を探すとしようじゃないか。
なればこの話はすぐに片付こう?」
鬼「そらそうだが…何するのよ?」
ア「こちらとしては国仕えは嫌だ、そちらとしては何らかの形で国が関与している形をとりたい。
双方これでいいかな?
鬼「…何?いつの間にお前の仕切りで進むんだよ?この話」
オ「鳥に仕切られる我々って…」
ア「キリュウ、これは私個人の提案なんだが聞くか?」
鬼「まぁ…名案なら」
ア「ちょっと耳貸せ」
そういいながらアレイスはキリュウの耳に何らかの話を聞かせている。
この場にいる人間全員が思っているだろう。この鳥は何だと。
ここにいるのは三人と一匹だ。その半分が国家の中でもかなりの要職についている。
であるのに後半部分特にこれからの話の行く末を決める提案を鳥が耳打ちしている。
いったいこの鳥が何を言い出すのか、二人は変な緊張感を覚え始めた。
鬼「ああ~…成程。そういう事か…そこら辺が落としどころか」
ア「双方の意見の最大限の譲歩じゃないか?」
鬼「じゃあ、それで行こう」
一人と一匹が何かを納得したような満足げな顔をこちらに向けている。
一体何が譲歩で何を納得してこの連中はこんな表情を浮かべている?
ああ…なんであの石昌に手を出したんだろうか?
アクアビス国法聖騎士団団長になって初めて覚える最大限の後悔を味わってしまっている。
今国側の頭にあるのは一刻も早くこんな交渉を終えてしまいたい。これだけだった。




