七十話目
アクアビス国内は現在大きな混乱を起こし、様々な部署でてんやわんやの状態になっている。
あの日、騎士団長が持ち帰った品を見て国に所属する人間は全員驚愕する事になった。
アゴン族と戦争までして手に入れようとし、結局入手もできず禍根のみが残った。
人間族にももうアゴン族と誠意をもって交渉のテーブルに着くことも出来ないような深い溝が残った。
あまりにも長い戦争を経て人間族とアゴン族ではお互い停戦状態にやっと移行した。
それでも魔族界での個人間での争い事は多少はあったが、大きな問題にはなったことが無かった。
それでも人間族は彼らの保有する力をずっと欲していたのだ。
魔族界において生活環境を維持できる彼ら独自の力を。
だがある日突然その力の源を持ってきた人間が現れたのだ。
アクアビス国法聖騎士団団長オルガ・ドルイユ、彼女が持ち帰ったのだ。
彼女はすぐさま自分の騎士団の王立法神研究所に運び込まれ様々な実験がなされた。
この結晶を分析し力を人間族の物として人間界に最大限の利益をもたらす為に。
だが、国の人間の期待に反して法聖騎士団からは何の報告も上がらず沈黙を貫いている。
城にいる人達は今か今かと心待ちにしている報告に胸を躍らせながら。
しかし、法聖騎士団はそんな周囲のテンションとは全く真逆の心中だった。
何せ法聖騎士団団長オルガ・ドルイユの元に上がってくる報告と言えば…
研「駄目です、団長!やはりこの石昌何の反応も示しません!」
オ「………またですか……」
とまぁ、このような感じで様々な一つとして成功した若しくはそれに類する物など一つとしてない。
何せ持ってきたはいいものの、ここに運んでから気づいたのらしい。
どうすればアゴン族と同様の効果をこの石昌が起こしてくれるのかを。
簡単に言えば使い方が分からない、という事だ。
徹底的に調べた結果はこの石昌が何らかの力を維持する類という事は分かった。
そこで研究員との会議の結果、アゴン族と同様というのは無理と判断。
ならばと法神の力を流し込んでその力を発揮しようともしたのだが…
研「反応どころかそもそも魔法が拒絶されています。これでは石昌に攻撃をしているも同じですよ」
オ「…それで石昌は?」
研「攻撃をすればどうなるか…という事です」
オ「また砕けましたか…注ぎ込む魔法の種類がどうこうというものではないのですね?」
研「攻撃系、守備系、結界系、探知系、生命操作系…どれも駄目です」
オ「量は大量にありますが、あれはあくまでもキリュウ個人の物という事になっています。
これ以上壊すというのは…」
研「今までの彼の行いからすると下手をすればここに殴りこんできそうですね」
オ「まさかそこまでの事はしないとは思いますが…」
研「ただ、この石昌に関してはこれ以上ここではどうすることも出来ません。
ただ闇雲にやっても石昌は壊れるばかりです」
オ「……そういえばアゴン族は何故これを彼に送ったのかしら?」
研「はぁ?ですから返礼だから、ではないのですか?」
オ「いえ、そういう意味ではなく。現状これは恐らくですが私達オディアスの力では運用できない。
そうですね?」
研「それはまぁ…他の契約神はあくまでも戦闘に特化した力です。
私達の様な力のバリエーションはありませんしね」
オ「であるならば何故人間族には使えないような代物を寄越したんでしょう?
人間の契約神はオディアスの神々です。確かに彼は無契約者ではあるが…」
研「まさか、アゴン族の神と契約していると!?まさか!?」
オ「いえ、それは無いでしょう。私も彼の力の一端を見ましたが、獣装とは異質な物。
…だが、そうなると彼の力の正体が本当に謎ね。あの石昌が本当に彼に扱えるのか…
扱えたら彼は本当に人間ではないという事かしらね」
研「現状あれらはここにあっても使い道がありません。であるならば…」
オ「彼に返すしかない、か…頭が痛いわね。あれだけえらそうに持ち帰っておいて返すとは」
研「できれば、彼がこの石昌を使う所を研究したいものです」
オ「……今後の事は一旦保留にします。とりあえず、研究は中止、報告書をまとめておいて。
結果を報告しろせっつかれてるので」
研「研究は失敗しました、という報告書ですか?」
オ「それをいかにも長たらしく偉そうに極力こちらの責任が無いようにお願い」
研究員は苦笑いをしながら退出するがこちらには笑う体力もない。
これでは偉そうに接収などせずにキリュウに持たしておけばよかった。
持ってきてしまったがために、私達に対する期待が想像以上に膨れ上がってしまっている。
それはそうだろう、あれを眼前にして何も思わない人間などいないのだから。
しかしこれが使えないとなった今、これは最早お荷物と言ってもいいだろう。
これがあるおかげで様々な部署から期待をされている。それが使えないとわかったら?
いかにオディアスの力では運用できないとは言ったものの、
法聖騎士団に対する信用はいくらかは失われる。全く本当に彼にかかわると碌な事が無いわね…




