六話目
若干の時間はかかったが何とか無事に神玉の間には行けそうだ。
しかし、この神様はすごいな。軽く殴っただけであの威力だもんな。
いや、すげぇすげぇ。こら他の5神が恐れるのはなんとなくわかるわ。
鬼「しかし、この鎧もすごいな。あんだけの攻撃に傷もつかないし衝撃も伝わらない。
龍すら余裕って」
ア「当たり前だ。お前のランクは神だぞ?聖とやったって楽勝だ」
鬼「ああ、そうか。ランクが違うっての圧倒的な壁だったっけな。
しかし、素手ってのは何とも馬鹿にされる風潮があるよな。何でだ?」
ア「この世界ではそもそも素手での戦いなど考えられてはおらん。
攻撃力は武器の方が圧倒的に上だしな。戦闘をより効率的に勝つには武器は当然の結果だ。
どこの世界に自分より圧倒的に戦闘力が上の生物に素手で挑むバカがいる?」
鬼「そうなるとこの世界では自分は大バカ野郎か?除け者扱いの次はバカ扱い…
どんだけ人をコケにすりゃ気がすむのよ?」
ア「徒手格闘自体こちらの世界ではない発想という事だ。お前の居た世界と違ってな」
鬼「…知ってたのか。自分の事情」
ア「一応な。さっきお前の記憶を読み込みもしたし、親父から聞いてもいたしな」
鬼「親父ってのは誰だ?まさかとは思うが…」
ア「お前も一度会ったろ?あれだよ、私達契約神の生みの親。オディアス教の神王」
鬼「…あれはなぜ自分を選んだんだ?何か知っているのか?」
ア「それは兄弟達に会った時に話をしよう。向こうも気になるところではあるからな。
話しは一度にした方が手間も省ける」
この世界に放り込まれた理由。一応それが今一番知りたい事かな?
とりあえず神玉の間に急ぐとしよう。さっきの奴みたいに突然割り込まれるのも面倒だし。
契約の儀以来のこの部屋。ここで一度自分の人生は壊された。
まさか、また来るとは思わなかったんだけど…
扉を開けると、中は相変わらず殺風景だ。デカい玉が一つあるだけ。
鬼「んで、これからどうすんの?」
ア「まぁ、見ていろ。…兄妹!私だ、アレイスだ!久しぶりに顔くらい見せたらどうだ!?」
アレイスの呼びかけに応じる様に玉が光りだし、玉から5人の人間が出てきた。
おお、これが5神の本来の姿なんだ…初めて見た!てか一人女性が混じってるけど…誰これ?
鬼「5神に女性が居たんだ。初めて知ったわ」
ア「これが本来の姿だ。人間達には神性を保つため知られてはいない。
教会のほんの一部の人間のみが知っている姿だ」
?「アレイス、元気そうだな。契約者が一人の割には中々の力じゃないか」
ア「あれが剣神エバークス。長男だ。…やあ、エバークス。そっちも元気そうで何よりだ」
?「…あれが本当にアレイスなのか?…力が溢れている。おかしいじゃないか?」
ア「お次が槍神アレイクス。次男な」
?「なぜ我々の契約者があれだけ圧倒される?数も質もこちらが上のはずだ」
ア「撃神ホルホース。三男坊」
?「……」
ア「あのこっちをじっと睨んでるのが弓神トリゲイ。四男坊、私はあれが一番嫌いだ」
?「あの…アレイス…」
ア「最後に心配そうな顔をしているのが法神マリアス。…最後まで封印に反対してくれた私の姉さんだ」
鬼「…他の御兄弟方は全く歓迎してはくれないみたいね。目が物語ってるわ。
あのジジィが無契約者の自分を見る目と一緒だ」
エ「話をしようというならお前も姿を出したらどうなのだ?」
ア「…いいだろう。それが家族へのせめてもの礼儀だな」
鎧を解除し、服はいつものレザー製の服へとチェンジだ。
アレイスはいつもの烏に戻り自分の肩へと止まっている。
さて、話を再開…あれ、おかしいな?御兄弟方えらく驚いておられますが?
ア「な、なんだその姿は!?」
ホ「以前の姿はどうしたのだ!?」
ア「あんな胸くその悪い姿などとうに捨てたわ。今はこれが私だ」
エ「……まさか貴様その契約者に力を全て与えたのか!?」
ア「流石は長男、頭の回転が早いこと」
ホ「なんということを…」
マ「だから人の形を保てないのね。その子に全てを与えたから」
ア「…姉さん、そんな悲しい顔はしないで。貴方に泣かれるのは私もきついよ」
鬼「はいはいはい、知ったもの同士で話を進めないでよ。わかるように説明を求めます」
エ「我々が契約者相手にやっているのは力を分け与えるというもの。
武器を通して我々の力の一部を貸してやっている状態だ
だがこいつが貴様にやったのは持てる力をすべて貴様に移植したのだ。
故に自分の体の構成を小さくせざるを得ない。人型まで構成、維持する力はもうないのだから」
マ「それをすると確かに最高位の契約者が出来るわ。でも私たちはそれは出来ない」
鬼「出来ない?」
ホ「我々は自身を維持していくのに人の魂の波動を受け続け泣けねばならない。
力の維持には大量の波動を常に受けねば維持できない。一人の人間では維持などできん。
契約者の数を増やし数で補う。だが移植は貴様との専属契約。他の人間とは契約できない」
鬼「神は力を与えて、人間は魂の波動を与える。よくできたギブ&テイクじゃない」
ホ「では何故貴様は一人の契約者で自身を維持出来る!?維持どころか力まで…」
ア「それはこいつの魂が特別製だから。…こいつはそれなりに絶望を味わった。
それがいい具合に魂を熟成させてくれたようだ」
鬼「絶望?でもさ絶望ったって自分のなんかはそんなでもないだろ?
こっちの世界でももっとひどい目になった奴はいくらでもいるだろうし」
ア「別に絶望=魂の熟成ではないのだ。なんど絶望してもしない奴はしないしな。
その点お前は一度の絶望でかなりの物になった。だから親父はお前を選んだのだろう」
鬼「…要は自分の魂は美味しいって事?」
ア「そんな感じでいいさ。…お前らもこいつの魂に触れればわかる。
中々強烈な波動の魂よ。それに…こいつ以外契約する気もない。
ここまで境遇が似ている奴も居ないしな。身内に捨てられ、世界から拒絶された。
中々できない経験だろう。兄弟方?」
マ「それは…」
エ「で、お前は今後何をする気だ?そんな化け物をつくって」
鬼「化け物?」
エ「人間の最高位は聖。だが貴様はその上になり、我々と並ぶほどの力を得たのだ。
そんな者人間と言えるのか?」
鬼「化け物か…ああ、いいねそれ。だったらまだ納得いくわ」
エ「何?」
鬼「いやさ、今までは何でみんな同じ人間なのにって思ってたの。
なぜ自分だけこんな目にって。ただ人間じゃないと言われれば気持ちがいい具合にはまるのよ。
だったらここまで拒絶されるのも仕方ないかなって」
ア「…普通は化け物と言われれば落ち込まないか?」
鬼「いいじゃないか。自分が納得してんだし。でだ、今後どうするか?ってのは…お前なんかある?」
ア「そうだな…兄弟方の契約者を片っ端から抹殺!てのはどうだ?
実際我々に勝てる契約者はいないわけだし。こいつら全員困るってのは大いに笑い種だね」
鬼「この世界の人間にもリベンジできるわけか。それもいいか?」
エ「…お前たちはこの世界を滅ぼしたいという訳か?」
ホ「何と傲慢な!そんな事出来る訳がない!」
ア「我々の契約者がどれだけいると思っている!聖ランクの力も知らぬ癖に!」
鬼「はいはいはい、そんなマジで捉えんなよ。だけど、それだけの慌て様。
やられては困るって感じかな?」
ア「そうだな。まさかここまで慌てふためくとは…私の想像以上だ」
エ「図に乗るなよ貴様ら…世界をすべて敵に回して生きていけると思うな!」
鬼「だからさぁ、できないって思うなら適当にあしらえよ。鼻で笑うとか、無視するとか。
まぁ、そんな事する気はさらさらないけどね」
ア「折角自由の身になったんだ。楽しまねば勿体ない。さてと、話はもう終わったし帰るか」
鬼「そうだね…では皆様御機嫌よう」
踵を返しこの部屋から出て行こうとする瞬間一つ釘を刺しておこうと思った。
今後我々の平和を守るために。
鬼「そうだ、一つ御忠告。
今後貴方方の契約者や教会等が自分達に何らかの危害を加えようとした場合。
我々はさっきの事を実現させる可能性がありますので」
エ「貴様…神を脅す気か?」
鬼「脅す?違いますよ。これはお願いでも提案でもない。…命令だ。
もし、貴女方の契約者が来た場合…一切の例外なく殺す。ああ、あのくそジジィにも言っといて。
ではお互いの平和は守りましょうね」
一応優しく言ったつもりだったんだけど…ああ、駄目だ。
えらくおっかない表情で睨んでやがるわ。これ以上なんか言ったらマジで喧嘩になりそう。
では、今度こそ出て行くとしましょうか。
さて…これからどこ行こうか?




