六十六話目
久方ぶりの友人たちとの再会。友人達はそれはそれは熱い歓迎をしてくれた。
なんと龍ランクの契約者達を引き連れての来訪。
恐らく何らかの要件で来たんだろうが今までが今までだ。
正直国やそれに連なる組織、ましてや騎士団なんてのは散々揉め事を起こした相手。
何をどう好意的に見ても厄介事だと思ってたんだが…
鬼「おいおいおい!話が全く見えんのだが!?説明を求める権利はあるはずだな?」
オ「話が見えない?どういう事?貴方は一切話を聞いていないの?」
鬼「話?なんだ、そんなものがあったのか?初耳だな」
オ「なっ!?…ラリウス・オルグレン!これは一体どういう事か!?何故任務を遂行していないのだ!?」
ラ「そ、それは…」
鬼「もういいっての!…もういいから団長さんアンタが説明してくれないか?
こんだけの戦力で攻め込まれたんだ。
こちらとしてはとうとう国が本腰入れて自分を殺しに来たのかと思ったが?」
オ「全く…この事は剣聖騎士団団長に報告します。いいですね?」
ラ「はい、申し訳ありませんでした…」
オ「では貴方方はもう行きなさい。貴方の任務は私が引き継ぎます」
ラリウスは自分が引き連れてきた人員全員を起こしながら運んで行った。
あんまり手加減したつもりはなかったんだが…残念、一人も死人は出なかったらしい。
ちっ、流石に龍ランクともなるとそもそもの基本性能が違ったか。
オ「幸い、怪我人だけで済んだようね。礼を言った方がいいかしらね?」
鬼「そんな一円の得にもならん礼など要らん。お前達の要件とやらをさっさと話せ」
オ「イチエン?なんです、それは?」
鬼「あ~…いや気にせんでくれ。で、要件てのは?」
オ「そうですね、時間も惜しいので早速本題に。
現時点をもって我がアクアビス国は貴方をアゴン族特別大使を任命いたします。つきましては…」
鬼「待て待て!何がつきましてはだ!?その前が滅茶苦茶重要だろう!?何をサラッと流してるの!?」
オ「では順を追って話を進めましょう。
現在アクアビス国とアゴン族との間に緊張状態が発生しています」
鬼「緊張状態?何でよ?」
オ「彼らが我が国の魔族界との境界線にある門で数十人という規模の集団が押し寄せています。
守衛団がその意思を聞いたところ、まずは戦闘目的ではない事を伝えてきました。
腰には獣装を携帯はしているものの装着している者は居なかったそうよ。
それに彼らの服装や村のシンボルである旗を掲げているという状態から対話を希望しているのは明白。
彼らが私達に伝えてきた内容はただ一つ、キリュウとのみ話し合いをしたいと。
それ以外の人間とは話す気は無く、その場合は自分達はこのまま帰る。
もしアクアビス国が戦闘を望むのならこちらは獣神装の準備もある。
冷静な判断を望む、以上よ」
鬼「すぐさま戦闘状態に突っ込まなかったのは唯一のいい知らせか。
しかし、一体何の用があってこんな無茶な事を?」
オ「それは貴方が今すぐに門まで来てくれれば分かる事よ。
で、さっきの話。今回の件において貴方を対話の代表である大使に任命いたします。
ただ、何らかの要求や国の内情にかかわるような重要な案件の決定権は国にあるという事。
その場での返事や貴方個人での感情に基づいての行動は禁止されるという事。
貴方はあくまでも国の代表として我が国の利益を優先するという事。
これらを納得したのであればこの書類にサインをお願いします」
鬼「ユリウス達がわざわざ人間界の領域にか…自分指名となるとなんだろうねぇ」
オ「それは行けば分かりでしょう。ではキリュウ、そこまで私もいっしょに行きますので」
鬼「ヘイヘイ」
久しぶりの境界門、いやぁここを通るのにえらく手間と時間がかかったな~。
さっさと片付けて資材確保に向かわんとな。おお、折角だからエリーゼも連れて行こう。
法神契約者なんて貴重な人材、ただ書類仕事だけってのは勿体無いわな。
オ「では門をくぐったすぐ先で守衛団とアゴン族が睨みあってるから」
鬼「睨みあうって…向こうはただ対話をしに来ただけでしょう?何をそんな物騒な」
と思って門を通過したら確かにこれは睨みあってるわ。
お互い武器に手をかけてきっかけがあればすぐさま戦闘状態に入れる臨戦態勢。
うわぁ…声かけづれぇ…
オ「双方一旦武器から手を放すように!アゴン族の諸君、希望するキリュウを連れてきた!
守衛団も私が来た以上この場は我ら騎士団の指揮下に入る。貴方方は門の守護の任に戻ってほしい」
守衛団側はそれを了解したのか、持ち場に戻っていった。
この場には団長と自分、そしてアゴン族が数十名ほど。…人間界側ちょっと少なすぎない?
ていうか団長ともあろう立場ある人間が一人でフラフラ出歩いていいのか?
まぁ、聖ランクがなんかあるとは思えんが…
オ「ではこれで貴方方の条件は満たしました。アクアビス国は彼を
正式にこの件の交渉役に任命いたしました」
ユ「突然の訪問にも関わらず、こちらの希望をかなえていただき感謝する。
アゴン族ユリウス村村長のユリウス・バボラークです」
鬼「んで、どうしたのよ?村長以外にもイザークのおっさんやボリスまで…
三氏族全部の当主全員そろってんじゃないの。まさかとは思うが獣神装
まで持ってきてんのか?」
ユ「一応準備はしてある。戦闘を行わない抑止力になればと思ってな。
まさか人間もこんな境界線上で魔各10の魔族三体を相手にしたくはないだろう?」
鬼「無茶苦茶すんな~。んで三氏族に村きっての精鋭引き連れて何しに来たのよ?」
ユ「アクアビスのキリュウ、貴方には我が村の村人全員の命を救っていただいた恩がある。
しかもその代償を我らは貴方に何も支払えなかった」
鬼「いや、狩った魔族の体を貰う約束したからそれで報酬は十分よ。
そろそろ取りに行くから準備だけはしといて」
ユ「だが、それらはお前が戦闘で得た結果というだけで我らからの礼と呼べるような代物ではない。
それらを得るのはお前にしてみれば当然の結果というだけだ」
鬼「村からは何も渡してないから報酬にはならんと?またえらくややこしい理屈だこと…
いやまぁ、何かそれ以外でくれるってんなら貰うがな。そっちにはこっちみたいな金銭の流通は無いだろ?
それで魔族の体以外でとなると…失礼だが渡せる物無いんじゃないの?」
ユ「その通りだ。正直魔族の狩猟という事に関しては我が村総出でかかってもお前に遠く及ばん。
であるならばお前に渡せる物は一つしかない。イザーク、あれを」
イザークのおっさんが抱えていたものは木でできた箱一つだ。
大人一人がしっかり抱えなきゃならない位デカい箱。なんだ?なんか高位の魔族の素材かな?
イザークが箱を開けるとそこには水晶か、何かわからんが何やら透明な結晶が箱一杯に詰まっている。
オルガ団長も何か気になって箱を除いた瞬間、見たことない位驚愕している。
鬼「あれ、団長これが何かわかんの?」
オ「こ、これは…まさかアゴン石昌!?これを彼に与えるというのですか!?」
ユ「そのために持ってまいりました」
オ「…彼にそこまでの信頼を寄せているという事ですか?」
ユ「何も言わずともこれがすべてを語っています」
鬼「お~い、誰か説明してくれよ~。訳が分からんよ~」
オ「この結晶はアゴン石昌といい、彼らの村を守る守護炎を張り続けるために使われる結晶。
つまりこれがあれば彼らの守護炎と同じものが使えるという事になるの」
鬼「てことはこれって以前人間とアゴン族が揉める事になった…」
ユ「そうだな、色々あった原因と言われているものだ。
それをキリュウ、貴方に譲るためここまで持ってきた。…是非受け取ってほしい」




