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六十五話目

人間相手、しかも高位契約者相手に奥の手状態で戦うのは初だったんだが…

龍のこの人数でもさしたる相手ではないことがよくわかった。

まだ聖ランクとは戦闘したことは無いが…そんなにてこずるとは思えんか。

今回は龍がなんと十人という大盤振る舞いだ、アクアビス国も意外に自分を怖がってたのね。

戦闘はそれなりにてこずってしまったが、奥の手の前には碌な戦いにもならなかった。

途中まではいきがっていたイゴル君も最早戦闘を行う意思も失せたらしい。

最後まで立っていた…いや、立たせていたかな?ラリウス君は逃げ出さずにここに居た訳だ。

それだけは認めてやってもいいかな?

では、ここまで頑張っていたラリウス君には精一杯のプレゼントを贈ろう。


鬼「じゃあ…死んでも文句は言うなよボケェェェ!!!!!」

?「大地よ、我が意に従い彼の者を囲め、ストーンウォール!」


何処からか何かの言葉が聞こえたかと思えば目の前を石の壁が立ちはだかる。

眼前のみではなく四方を完全に石の壁に囲まれてしまった。

自分をとらえに来た騎士団員は全員叩きのめしたはずだな?

意識を持っているのはラリウスだけ。この場で法神契約者はたった一人。


鬼「エリーゼ、今はとてもとてもいい所なんだ。邪魔をしないでおくれよ」

エ「何がいい所よ!?友達を殴ろうとするのが何をどうすればいい所なのよ!?」

鬼「友人関係を拒否したのは彼等自身だ、であるならば彼らは敵だよ?

敵に情けをかけれる程自分は出来た人間ではない」

エ「それはそうだけど…でも!!」

ラ「エリーゼ、魔法を解け!法鬼程度の魔法でこいつはどうにもならん!

法龍の使う魔法ですらこいつと鎧には何のダメージも与えられなかったんだ!」

鬼「そうだよ~無駄だよ~だから~早く解いておくれよ~。エリーゼさん」

エ「……」

鬼「なんだいなんだい、無反応かい?それはないんでないかい?」

ラ「お前もお前だ!お前の攻撃力ならこんな壁なんてことはないだろう!?

さっさと俺を壁越しで殴ればいいだろうが!?」

鬼「いやいや、壁越しだときちんと殴れる自信がないんだよ。

変なところを殴って変なダメージを与えるのは不本意なんだよ。

自分の誠心誠意ある一撃を送りたいのだよ。それにだ」

ラ「なんだ、まだあるのか!?」

鬼「ぜひエリーゼに選んでほしいんだ。彼女が思う正義はどちらにあるのかな?

散々自分を見下し、人扱いすらせず久しぶりに会った自分に剣を向けるイゴル君とラリウス君。

片や見下されながらも力をつけ、国を恨むことなく平和に生きる自分。

さぁ、エリーゼ。選んでほしい、君はどちらが正しいと思う?

自分が正しいと思うのならすぐに壁を解いてくれ。彼らに正義があると思うのなら壁はこのままでいい。

では選んでくれ」

エ「そんな…どっちがなんて…」


自分の言い様は恐らく卑怯だと思う。彼女はたいへん優しい娘だ。

その優しさゆえに自分を見放さず、今でも自分と友情を保っている。

だが、それであいつ等を見放すような心の狭い娘ではない。彼等とも友人だと思っているはず。

それを、今この場で選ばせようというのだからえらく卑怯なのだろうな。


鬼「では答えを聞こうかな?どうする?」

エ「私…」

ラ「構わん、エリーゼ!魔法など解かんでもいい!どうせどうしようとこいつは止められんのだからな!

であるならば勝負は負けようとも正義は我らとともにあるのだからな!」

鬼「正義は我に有か…では自分は極悪人という事になるのだろうな…」


これ以上の問答は最早無駄だろう。恐らく彼女は壁は解かんだろう。

いや、解かんのではなく解けんのかな?動けないというのが正解だろうし。


鬼「では正義の味方は悪になす術もなく負けた、でいいか。

では友よ、去らばだ。死んだら葬式に華ぐらいは送ってやるよ!!!」


思い切り腰を入れ踏み込みも全力で行う。恐らく今の状態でこんな全力を使えば死ぬのは確実だ。

アイツらが使っている鎧がアブルート以上の防御力でもあれば別だが…

さっきこいつも言ったがこの程度の壁なんてものはあってないようなものだ。

エリーゼは多少傷つくだろうが…仕方ないか。ここで自分が引くという答えもないし。

ああ、これでこいつらとの因縁もケリがつくかと思うと…


鬼「嬉しくて嬉しくて涙が出てくるな!ウォォォオオ…」

?「大地よ、我が意に従い彼の者をとらえよ!ストーンロック!」

鬼「なんだ、エリーゼか!?」

ア「いや違う!魔法の威力が違う!この威力は!?」


エリーゼの魔法とは違い、今度のは岩が自分の体を隙間なく埋めていく。

威力が法鬼以上という事で、ちょっとやそっとでは体が動かない。


鬼「うわ、マジか!体が動かん!?ていうか誰だよ!?エリーゼ壁どけてくれ!状況が全く分からん!」

エ「え、あ、うん…」


エリーゼの反応がさっきまでと全然違うぞ?キョトンというのか、無反応というのか。

とにかく反応が薄い。声を聴く限りは邪魔をしたのは女性というのは分かったが…

エリーゼが魔法を解き、壁が地面に埋もれていく。

ラリウスの不意打ちとか色々気にしてたんだが、それはなさそうだ。

何故なら目の前にいるラリウス自身も声の方を向いて驚いてやがる。


?「剣聖騎士団ラリウス!これは一体どういう事か!?なぜこのような状況になっている!?」

ラ「そ、それはこの者が反抗をしようとしたので連行を…」

?「連行?今回の件に関しては彼を賓客として迎えるよう指示を出したはずだが?」

ラ「いや、それは…」


ああ?ラリウスがえらく怒られてやんの、それに関してはザマミサラセだ。

でだ!一番いいところを邪魔してきやがったのは誰だ?

体は動かんが何とか首は動かせれる。声の方を見るとこら確かにびっくりだ。

まさか、こんな国の大物がいるとは考えもしなかったわ。


鬼「これはこれは。お久しぶりじゃないですか。

アクアビス国法聖騎士団団長オルガ・ドレイユさん。まさかこんな所でお目にかかるとは」

オ「ええ、お久しぶりね。キリュウ。ごめんなさいね、こうでもしないと貴方止まらないでしょ?

でも…本当にすごいのね。これだけ力を入れた魔法でも貴方…少し力入れたら壊せるでしょう?」

鬼「さて、何の事やら…まぁ、いいや。動きずらいから外すわ」


彼女の言う通りある程度力を込めて動かしたら岩が剥がれ落ちていく。

全ての岩を壊し終えてからやっと話の通じる相手が出てきてくれたわけだ。

しかし、今回に関しては自分は賓客だ?今までの対応とはずいぶんと違うじゃないの。

半ば犯罪者扱いまでしてくれたのに。ただ、わざわざ五騎士団の団長が来たわけだ。

賓客ねぇ…さてどういう話を持ってきたのかな?

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