六十三話目
いきなり旧友が訪ねてきたと思ったら因縁吹っ掛けられてこれまたいきなり戦闘開始だ。
色々振り返っては見たものの…自分悪くないよな?
後で事情説明をしたときにエルトとエリーゼに怒られるのは勘弁よ。
しかし、我ながら頭おかしくなったかな~、こんだけの事しといて心配するのが怒られるかどうかだもの。
悪さやらかした子供かっての!とりあえず、この喧嘩を乗り越えますか。
怒られるってのはその状況が怒られて住む程度のモノって事だろうしな。
ラ「総員戦闘準備だ!!殺しても構わん、いや…殺せぇぇぇええ!!!!」
騎「「「「「おおおおおおお!!!!!」」」」
ラリウスとイゴルはともかく何故他の騎士団員までもここまで殺気だってんだろうか?
彼等には何もしていないはずなんだが…
鬼「とりあえず、鎧展開!全力出すのは何手か打ち合ってからって事でどうだアレイス!」
ア「龍ランクでこの人数か。それなりに手応えはありそうだ!構わんお前のやりたいようにやれ!」
流石に十人一辺にかかってくるほど彼らも馬鹿ではない。
近接戦闘の三騎士団と遠距離の二騎士団で距離を取り、各騎士団が順番に仕掛けてくる。
剣が終われば槍に襲われ、槍を凌げば撃が襲い、距離を取って交わせば弓矢が狙う。
弓矢を受けていれば魔法で追撃が続く。相手もいい装備してやがる。契約者自身の身体能力も確かに高い。
こらちょっと戦闘方法変えないとやら…れるのかな?今の所ダメージらしいダメージは無いが…
ただ、大変ストレスのたまる!!とりあえず、攻撃を手で裁くのは最小限だ。
多少当たった所で鎧の上なら死にゃせんだろう?大丈夫だよなアレイス?
今目の前にいるのは槍組、片方が顔面に突き込んできた。今までなら手で大きく裁いていた。
今度は手で裁かず、面の表面を滑らせるようにして思い切り踏み込む!!
これで両手は自由に動くし、体勢も整っている。
鬼「これで一人目…!!??」
ギィィィン!!!
今の音はこちらの一撃ではなくもう片方の槍の胴薙ぎを食らった音だ。
踏ん張っていたので何とか吹き飛ばずには済んだが…マジか、隙が無いの!?
鬼「ああ~、もう!!追撃が出来ねぇじゃねぇかよ!!
それに各騎士団本当に仲悪いのか!?めっちゃ連携取れてんじゃん!」
ア「連携というよりかは完全に別担当というような感じだな。他が動けば自分達は止まる。
自分達が動けば他が止まり次の隙を探す。同じ騎士団員同士なれば四方囲んでボコボコだろうな」
鬼「ああ、それもそうか…っつかこの状況でもかなりうざいんだが!!!」
ラ「何を独り言をブツブツと言っている!!この状況で余裕だなキリュウ!!」
鬼「おお、やっと名前を呼びやがったな友よ!自分は嬉しいぞ!!」
ラ「黙れ、何が友だ!!貴様などと友情を結んだ覚えなどないわ!」
鬼「はぁ…何を訳の分からんことを言っているのだお前は…」
ラ「何が訳の分からん事だというのだ!」
鬼「月並みだが言っておくぞ。過去を無くす事など誰にもできん。
お前に消したい過去があるように、自分には見えなかった過去もな」
ラ「……黙れええ!!!!」
ラリウスと打ち合う何合かの内の一撃が胴を思い切り薙ぎ払う。
やっば、話に夢中で喰らっちゃったじゃねぇか!
ギィィィン!!!金属同士のぶつかり合う音が周りに響いていく!
流石に龍ランクの腰の入った一撃、百m近く吹き飛んで地面に叩きつけられる。
ドァオン!ガン!ボキボキボキ!!
岩が砕けるわ、樹を薙ぎ払うわで周りの地形が変わっていく。
このランク同士の戦いは周りの被害が尋常じゃないな。
鬼「くそったれ!誰よりもアイツから喰らうとマジでムカつく!!」
ア「もう少し対等にやれると思っていたんだがな。ありゃ実力というよりも人数の差だな。
全力を出すのはお前と対峙している時だけ。それ以外は力を温存できる。
お前は龍ランクの契約者の全力を常時相手にしているようなものだ。集中力も続くまい」
鬼「こっちも体勢を崩しながらの攻撃では思うような一撃を与えられてないか…
最初に教会であった龍ランクは一撃で叩きのめせてたんだがな~」
ア「あれは、殆ど不意打ちだっただろうが。相手自身も訳も分からなく訳の分からん威力の一撃だ。
きちんと意識して対処しろというのが無理だろう」
鬼「まだ二、三人なら多少喰らいながらでも攻撃叩きこむんだが…
こんだけの人数だと距離とっても他の組の追撃が待っているか。しゃ~ね~か~…
アレイス、奥の手といこうじゃないか」
ア「そうだな、もうあれしかないか。では…始めよう」
ラリウス含む騎士団員は全員で吹き飛んだキリュウの追撃に向かう。
しかし、あれだけの一撃を叩き込んだんだぞ?生きているのかどうかすら怪しいものだ。
手ごたえ自体はかなりの自信がある。だが…
イ「ラリウス、すごい一撃だったね!あれじゃあアイツも起きてこれないんじゃないかな?
一応医者位は呼んでやるかい?」
ラ「…まだ確認するまでは分からない。油断は禁物、とにかく着地点まで急ぐぞ」
イ「おいおい、何をそんなに慎重になってるんだよ?あれだけの攻撃を防げる防具なんか中々ないよ?
もう向こうで気絶しているか下手すりゃ死んでるよ」
ラ「確かにな。手応えもかなりあった。あいつは碌に防ぐことも無くあれを喰らった。ただ…」
イ「ただ?」
ラ「一瞬吹き飛ぶアイツを見たが、鎧は壊れるどころかヒビ一つ見えなかった。
…ひょっとすれば無傷という事すらあり得るぞ」
イ「む、無傷…それは流石にあり得ないんじゃあ…」
ラ「教会であいつに一撃の元に倒された剣龍の話、知っているだろう?」
イ「確か…ギデオンとかいう契約者だったよね?」
ラ「龍という能力におぼれず剣技そのものも鍛えていた騎士団でも指折りの実力者。
…どんなイカサマをすれば倒せるのだと考えていたが…これだけの人数の龍でも仕留めきれんとなると…」
イ「……駄目だよ、それ以上言うのは許されないよ?」
ラ「イゴル…」
ラ「決めたはずだよ。あいつとの縁はあの日教会で断ち切った。
ここで僕達があいつの実力を認めるなんてのはあってはならない事だ。
全ての契約者の為にも僕達だけでもあいつのすべてを否定し続けなければならない。
そう心に決めたはずだよ」
ラ「そうだったな…そうだ、そうと誓ったはずなのにな。さぁ、行こう。何としてもとどめを刺さないと。
アイツのすべてを否定し続けるために」




