六十話目
一応交渉の成果としては上々という所だろうかな?本来なら交渉の余地もなく断られる所だったろうし…
納税課諸君にはぜひとも十分な議論を交わしていただき、納得できる答えを用意してほしいのものだ。
さしあたって議論がどの程度の時間を要するのかという所か。
しかし、これ以上何もすることがないというのは暇すぎるわ。
そろそろ、魔族界での狩猟活動を再開したいな~。
……あかん、自分今命懸けの戦闘を行いたいと願ったのか?はぁ~…大分頭がいかれたかな。
エ「しかし、アンタのやる事は一体どれだけこの世界に喧嘩を売れば気が済む訳?」
鬼「……もっとだよ。もっと自分の起こす波がどうなるのか…まだまだ気はすまん」
ア「そんな事はどうでもいいがな。後は何をするんだ?」
鬼「炎錬工房側からと今回の納税提案でどこまで事態が好転するのか。
数日か、数週間か…まさか、数か月かな?さっさと答えを出してほしいがね」
エ「こんな無茶な提案が飲まれるわけないでしょう?断られるに決まっているわよ」
ア「確かに通常ならな。だが、通常というのなら考える事すらしないはずではないか?
向こうが考えるというのならまだ可能性は残っていると思うが」
鬼「とりあえず、今日は帰ろう。今は返答待ちという事だ。
それ次第でまた悩むのか、次の段階へと進めるのか決まるわ」
交渉が終わって数日してからエルト工房に客人が訪れた。
炎錬工房の代表ホルロス・ケインとその秘書だ。
ふむ、国よりも先にこっちの策が上手くいったかな?
鬼「さて、代表本日のご用向きは?」
ホ「分かっているだろう。以前聞いていた話の結論を伝えにな」
鬼「それで、結論はどうなりましたかな?」
ホ「幹部とも協議した結果、御話を全面的に受けようという事になった。
ついてはだが、材料の受け渡しと金額を…」
鬼「ちょい待った。そちらはそれでいいがこっちの条件はどうなったんだ?」
ホ「ああ、そっちに関しても近日中にそちらの望んだ結果になると思うぞ」
鬼「わぉ、マジで上手くいったんだ。一体どういうコネがあるんだ?」
ホ「それに関しては企業秘密だ。では後の細かい事はこの書類に書いてある。
しかし…君はまた今回も偉い無茶苦茶な事をしだしたな」
鬼「無茶?さて、何の事でしょうかな?」
ホ「聞いたぞ?ギルドに所属しない経済活動、それに関しての独自の納税システム。
国やギルドに軽く喧嘩を吹っ掛けたようなものだぞ?
国の役人共はえらい揉め事になったらしいしな。お陰で禁止令撤回、それなりに苦労したのだ。
見返りはきっちり貰うぞ?」
鬼「当然だ、材料の引き渡しに関しては工房の責任者であるエルトに一任してある。
自分じゃ素材の良し悪しなんざ分からんからな。金額等はエリーゼとエルトで決めといて」
エ「分かったわ。後で報告書でも渡せばいい?」
鬼「頼むわ、じゃあ自分はこれで。後は任せた」
諸々の交渉事が終わり、頭の中では仕入れた素材の事ばかりを考えていた。
これで他の工房との距離を一気に引き離せると。
物を見ていないので何とも言えないが、今回の取引は良いモノだったと確信をしている。
工房を出て炎錬工房に戻る途中、秘書が少々笑いながら話しかけてきた。
内容はさっきの禁止令撤回について。
カ「代表も悪い人ですね。
今回我々が動くことなど殆ど無しに彼への禁止令撤回は決まっていたじゃないですか
なのにさもえらく苦労をしたみたいに振る舞って」
ホ「まぁ、そうも言うなよ。それはあいつには決してばれない事実だ。
であるならば、多少恩着せがましく言うのは人間の性というものだろ?」
カ「どんな極悪人の性ですか?」
ホ「そこまで言わんでも良かろう?さぁ、これから忙しくなるぞ。
早速素材の搬入の準備をしておけ。職人達にも言っておけ。これから飛切りの素材が届くぞ!」
訪問の次の日には炎錬工房の職員が材料の引き取りに来た。
うわ、行動早っ!!まだエリーゼから報告書だって来てないのに!
持ち出しているのは殆どアブルート関係ばかりか。
それ以前の物はすでに製作予定が立っていたため、交渉でそうなったらしい。
エ「わっ、本当にもう来てる!?ごめん、キリュウ。これ報告書。
素材の量と引き渡し金額。これでいいならここにサインして」
鬼「牙に爪、骨とある程度の組織、後は…鱗か。全部で…5千万ディア!?
何の加工もしていない素材でか!?…ちなみにこれ全部で何割程度の量?」
エ「全体の三割程度かな?丸々引き取って貰ったら億は軽くいくわ」
鬼「う~ん…あまりにも高ランクばかり狩ると価格崩壊が起きそうだな。
そこはある程度考えながら市場に流さないとまずいか」
貰った書類にサインをし、エリーゼは家の方に戻っていった。
うむ、資金面はまたしばらく心配はなくなったか。
金はともかく後は材料の在庫だな。これである程度の素材が減ったわけだし。
早く禁止令撤回の正式な発表でもしてくんないかな~。
そこから数日後、禁止令はいとも簡単に解かれた。
国からの呼び出し?大々的な発表?疑ってごめん的な謝罪?
等々いろんな期待や妄想をしていたが、面白い位いろんなものを裏切られた。
鬼「手紙一つですか…何だろうな…」
ア「あんだけ色々こちらを翻弄しておいて紙切れ一枚とはな。良い国じゃないか」
エ「ま、まぁいいじゃない。これで活動再開でしょ?よかったじゃない!」
鬼「そうだけどよ~…ちったぁ謝罪の一つも寄越せよな。
人の所の経済活動こんだけ止めたんだし」
ア「全くだ。誠心誠意頭を下げてもいいのではないのか?」
鬼「まぁいい。これで問題の一つは片付いた。後の問題の方の国からの返答だけか~。
こっちの方も上手い事いってくれりゃ助かるんだがな」




