五十六話目
今回闘人ギルドに若干喧嘩を売ったような形にはなるが、とにかくこれで自分の力は認められた…はずだ。
ただ、自分の存在を認めさせるにはこれしか思い浮かばなかったのも事実だ。
何せ、魔族狩ってもなんかズルしたんちゃうか?みたいに疑われる。
騎士団ボコボコにしたらプライドだか何だか知らんが情報回らないし。
教会に至っては出来れば関わり合いになりたくはないし。
そうなると後はもう一つの勢力に御協力を願うしかなかった訳だ。
彼らはなんとも自分の期待通りの働きをしてくれた。何せこれだけ情報を国中に広めてくれたのだから。
エ「は~…遊んでると思ったらそんな事してたんだ。でも、よくいきなりそんな事できるよね。
序列10位以内なんかもう雲の上の存在も同じだよ?そんな所にツテも無く…」
鬼「とりあえず、その点は横にでも置いといて。これで一応炎錬工房との条件はクリアした。
後は向こうがどう判断するかだな」
ア「これでダメだと言われたらもうこれ以上手の打ちようがないがな。
そうなるとこの国での活動自体を考えねばならんか」
鬼「それも考えないではないがな。だがそれだとエルトとの約束を破る事になる。
まだまだ工房は動き出したばかりだ。もっとこの工房を大きくしないとな」
エ「キリュウ…」
ア「だが、あの炎錬工房にそんな力があるのか?相手は国だぞ」
鬼「それに関してはあっちに任せるしかないよ。まだ自分らにはコネも影響力も無い。
であるならば持っている人間に頼るしかないからね~。そこら辺も今後の課題だね。
という訳でエルト。今後狩ってきた素材の何割かを炎錬工房に売ることになっちゃったんだけど…
ごめんな、勝手に決めちゃって」
エ「いいよいいよ。そこら辺の采配は全部キリュウに任せるよ。僕はあくまで職人。
そういった駆け引きとか交渉は分かんないしね。それに僕の工房だけで製造するには量も多いしね。
今後は狩ってきた素材は自分達用と転売用に分けとけばいいの?」
鬼「ある程度状態の良いやつをね。あんまりひどいの渡すとこっちの信用問題にもなる」
エ「分かっているよ。言ったでしょう?僕は職人だよ」
エルトとの話し合いはこれにて終了、また工房に戻ってもらい作業を続けてもらう。
さて、禁止令の方はこれである程度メドが立った…かもしれないという方向で少し置いておこう。
一回バッカスのおっさんの方に行って建築の方の報告で聞いとこうか。
敷地内で店舗用、素材の保管に使う倉庫用、この両方の設計等をおっさんに任せている。
もう大分出来ているみたいだけど…完成はまだなのかな?
今もおっさんは建築系工房の職人と話し合いをしながら仕事をしている。
鬼「ご苦労ご苦労、仕事ははかどっているかい諸君」
バ「キリュウか。どうした?」
鬼「いやね、外見は大分出来てきたみたいだけど完成はまだかな~?ってね」
バ「ああ、これか。安心しろもうすぐできる。
倉庫の方はもう出来上がっていて余っている材料はもう入れてある」
鬼「え、マジ?それ初耳なんだけど?」
バ「エルトにはもう言ってあるぞ。お前が忙しそうだから忘れてたんじゃないのか?」
鬼「まぁしばらくバタバタしてたからな。そうだ、じゃあ折角だから倉庫入っていいか?」
バ「ああ、構わんぞ」
しかし、バタバタしてたとはいえ報告聞き忘れてたか~。
しかも倉庫に関してはもう出来てたとは!不覚だ!
倉庫内は魔格ごとに区切りが入っており、区切り内を棚で細かく分類してある。
といっても中はまだ6と8の棚にしか入ってはいない。
ただ、アブルートに関してはまだ手付かずで大量の素材がまだおいてある。
鱗や爪、牙や骨、さらには何に使うか分からない血や内臓、その他肉?の様な物まで置いてある。
前半部分はともかく、後の体組織は何用だ?
鬼「こんな体の組織まで取っておくのか?これ何に使うんだ?」
ア「体の組織の方は魔族研究や医学、中にはソウルマシン系のギルドでも使う事があるらしい。
高位魔族の体はまさに宝の宝庫。中には捨てる部分がないという魔族もいる。
アブルートクラスになると研究機関やギルド関連にしたら喉から手が出る程欲しいだろうさ。
他の6クラスも以下同文だ」
鬼「はぁ~、そんなものまで商品になるとはね。いやはや魔族も人間界にとっては資源か。
本当に強欲な種族だこと。まぁそれに思い切り乗っかってる自分が言うのもおかしな話か」
倉庫方面に関してはすでに完成済み。店舗の方もおおよそ出来上がりつつあると。
基本方針である商会ギルドに入らないというのは変わらないとしてもだ。
後の活動が面倒になるというのはこちらとしても勘弁してほしいと…
そのためにまた少々動いておいた方がいいかな。
鬼「炎錬工房がこっちに接触してくるのは明日以降か…いい返事だといいんだがね~」
ア「それは大丈夫だろう。お前の話を聞いた時のあいつの顔見たか?
おそらく周りの幹部連中が何を言おうが聞く耳を持つまい」
鬼「大分野心というか上昇志向が強いって聞いたもんな。
この契約が成功すれば他の工房を追い抜くこともできると」
ア「そうだ、だがメリットばかりを見ている訳にはいくまい。
契約を結ぶにはこちらの出した条件を飲まなければならない。
奴等が国とある程度の喧嘩をしてまでお前の条件を飲めるのか…そこが問題点だ」
鬼「とりあえず今後向こうがどう言ってくるかだ。それを聞かにゃどうしようもない。
主導権をどちらが握れるか…頭が痛い話だ」
正直確率的には五分五分だと考えている。メリットも確かにデカい。
だが、国相手に一工房がどこまでできるのか。禁止令が解かれる程のコネクションがあるのか。
これで禁止令が解かれないとなると…そろそろ本当に犯罪者になるか?
まぁそれは今後話の進み具合だな。とりあえず、部屋に戻りますか。
ア「おい、家の前に誰かいるぞ?」
鬼「ああ?まさか、もう炎錬工房が来たのか?今日例の条件をクリアしたばかりなのに?」
扉の前にいたのは一人の女性だ。はて、炎錬工房の幹部の誰かか?
……いや、待て、あの後ろ姿は見覚えが…
?「あ、キリュウ。久しぶり。元気にしてた?」
鬼「エリーゼ…どうしたんだよ?わざわざこんな所まで来るなんて」
ここに来た目的をエリーゼに問いただす。
それを聞くとエリーゼは少し困ったような顔をしながらこう口を開いた。
エ「ちょっと色々あっちゃって…ここで雇ってくれない?」
鬼「………おおう?」
突然友人が訪ねてきたと思えば、その口からはおおよそ予想の出来なかった頼み事だ。
騎士団に入団し、数少ない法神契約者になり、ランクもまぁまぁの法鬼。
そんな明るい未来があるはずの友人が何故?
何をどう好意的に見たって碌な問題ではないだろうな~。
ああ…どうしようか…




