五十三話目
工房ギルド序列5位炎錬工房、責任者ホルロス・ケイン。
彼は年齢45歳、元は職人だが責任者になってからは現場からは遠のいている。
経営は序列の示す通り順調そのものだ。ただ彼自身は今の地位に甘んじるつもりは一切ない。
機会あらば是非上位の序列の工房を押しのけて自らトップに立ちたいと考えている。
だが、現在人間界で陥っている原材料の高騰には生産系のギルド全般頭を悩ましている問題だ。
それは序列が1位だろうが最下位だろうが関係は無い。
現在材料の仕入れ担当のブロウリーと今後の相談をしている最中だ。
ホ「また原材料が上がったか…そろそろ販売価格と相談をせんといかんか…」
ブ「そうですね…金属系は今後も上がっていきそうですしね。
しかし、魔族系の素材も慢性的に在庫不足。闘人ギルドでの材料仕入れも安定的ではありません。
開かれるオークションも時期も分かりませんし…」
ホ「生産系のギルドの悩ましい所ではある。
ただ、この状況で一歩抜ければ他の工房を抜くのも可能なんだがなぁ」
ブ「これ以上のやりくりはもう無理ですよ。後は販売価格を上げるしかないですよ」
ホ「…営業の方とも相談をせねばならんか。どこまで販売価格に反映させるか」
コンコンコンコン。
扉が開き、別室に控えていた秘書のカリアスが中に入ってきた。
しばらくは誰も取り次ぐなと言ったはずだが…
カ「代表、失礼いたします」
ホ「客はしばらく取り次ぐなと言ったはずだが?急用か?」
カ「お客様が代表に会いたいと受付にきております」
ホ「客?この時間に約束があったとは記憶にないが?」
カ「はい、アポはありません」
ブ「アポなし?序列5位の工房の代表に会うのにか?いったいどこの馬鹿だ?」
カ「……それが…」
ホ「なんだ、早く言いなさい」
カ「お客様のお名前はキリュウと名乗っています」
ホ「キリュウ?というと…」
ブ「あのキリュウか?」
カ「はい、そのキリュウです。どうされますか?お会いになられますか?」
ホ「いやいや、会うも会わないも要件は一体何なんだ?」
カ「なんでも仕入れに関しての商談があると言っております」
ホ「仕入れに関して?ふむ…どうしたものか…」
ブ「ではとりあえず私だけで会ってみましょうか?」
ホ「…ではそうしよう。カリアス、会議室に通してくれ」
ブ・カ「分かりました」
いきなりの面会の提案だ。ましてやこんだけデカい工房のトップだ。
簡単に会えるとはこちらも思ってはいない。何回か足を運ぶ必要があるかと思ったが…
カ「私はホルロス・ケインの秘書のカリアスと言います。しばらくこちらの方でお待ちください」
通された部屋にはデカいテーブルといくつかの椅子、壁には図書館で見たようなディスプレイもある。
日本なら会議室って辺りかな~。
ア「意外とすんなりと通されたものだな。もう少し時間がかかるかとも思ったがな」
鬼「いんやぁ~、自分もビックリ。方向性はともかく名前が売れてるってのも効果があったか」
ア「それで、ここからどうする?」
鬼「鬼が出るか蛇が出るか。後は交渉次第よ」
お茶も出ず、お菓子も出ないと。ここの接客にはかなりの難ありだな。
無礼な接客にそれなりに不快を覚えつつ待っているとやっと誰かが入ってきやがった。
ドンだけ待たせりゃ気が済むんだよ、ああ!?
ブ「失礼します、キリュウ殿ですな?」
鬼「突然の訪問にも関わらず御会いいただき感謝いたします。
私がキリュウ、こっちが相棒のアレイスと言います」
ア「アレイスだ、初めまして」
ブ「これはご丁寧にどうも。ほう、これが噂に聞く人語を話す鳥ですか。
しかし、ペットではなく相棒と?」
鬼「ええ、そうです。ですので彼にも礼儀をもって接してほしいのです。怒らせると面倒なので」
ブ「…私は炎錬工房仕入れ担当の責任者のブロウリーと言います」
鬼「…なるほど、では代表ではないのですね?この炎錬工房の」
ブ「ええ、代表はお忙しのでお話は私が聞きましょう」
鬼「そうですか…しかし、困りましたね。代表以外となると話をしてもなぁ」
ブ「私とでは意味がないと?これはまた随分な言い様ですな」
鬼「決定権のない人と話をしても時間がかかりますから」
ブ「なるほど…では私も対応を変えましょうか。…いい加減にしろよ、小僧。
急に来て代表に会わせろだ?何様のつもりだ、貴様は」
鬼「あり、怒らせちゃいましたか」
ア「この程度で怒らんでも…なんとも心の狭い」
ブ「黙れ、鳥風情が。人間の話に入ってくるんじゃねぇよ。
大体、鳥が相棒だ?やっぱり5神にも選ばれないようなクズはいかれてんな」
鬼「ワォ、えらく怒っちゃったじゃないの」
ア「この私を鳥風情だ?いい根性してるじゃないか。人間風情が」
鬼「まぁまぁ、怒んなよ。まだ話が終わってないんだから」
ブ「話だ?」
鬼「最初に言ったろ?商談があるってな」
ブ「もういいもういい、お前等もう帰れ。商談てのは信用の出来る相手とやるもんだ。
まともな話し方も知らんようなアホとはする気にもならん。
おい、誰かいるか!?お客は帰るそうだ!!」
ブロウリーが叫んで数秒、部屋には三人のごつい男が入ってきた。
全員剣を所持と。う~ん、この感じだと警備員的な感じかな?
しかし、いきなり力で対抗ですか?物騒ですな~。
鬼「アレイス、彼らは?」
ア「剣魔二人に剣鬼一人」
ブ「なっ!?何故それを知っている!?」
鬼「それなりにここの事は調べてるって事よ。…いいんだな?
話をする気がなく、喧嘩がしたいというなら…それなりの対応をこちらもするが?」
ブ「構わん!多少のケガはさせてもいい!こいつをどかせ!」
三人は指示に従い、すぐさま武器を構えようとする。
ただ、こちらを甘く見ているせいで動きは緩慢だ。
では、その間に…
鬼「ちょっと失礼!!」
剣を抜くまでの数秒の間に拳を隙だらけの御三方にくれてやる。
鎧を展開してはいないが素の状態でも鬼位なら倒せるだけの身体能力はある。
全力で動けばこの程度の人数なら余裕だ。三人はその場で膝から崩れ落ち、戦闘不能状態。
ブロウリーは口を広げて間抜けな表情だ事。
鬼「さて…どうする?追加の人員でも呼ぶか?」
ブ「お前…本当にただの人間か?何故契約者に打ち勝てるんだ?」
ア「いつもいつも同じ反応ばかりだ。つまらんな」
鬼「まぁ、それはおいといてだ。どうする?本当に聞く気がないなら帰るが?
一応言っておくがそちらにもそれなりに利益のある話のつもりだ」
ブ「しかし…」
なんだよ、こいつは。ここまで利益があるって言ってんだから話しぐらい聞きやがれよ!
あれかなぁ~、暴れたのがやっぱりまずかったかな?しかし、やばいな。
これで本当にここがだめならまた情報収集からやり直しだよ。…めんどくさ。
ホ「では私も話に参加させてもらおうか」
ブ「代表…」
鬼「なるほど、代表か。やっと出てきたか」
ホ「お初にお目にかかる。代表のホルロス・ケインだ」
鬼「キリュウ、そして相棒のアレイスだ。どうかよろしく」
ホ「では本題に入ろうか。…どういった商談を持ってきたのか。聞こうじゃないか」




