四十七話目
村での激しい戦闘を終え本来ならザカリー隊の事もある。
ただ、村長含めた三氏族が折角だから泊っていけという。
まぁ、夜の魔族界が怖いわけではないが夜道を歩くのも面倒だ。
いつもの通り、村長の家に泊まらせてもらう事になった。
村長達三氏族は何やら話し合いがあるそうで家でのんびり待っていてくれと。
まぁ、村の今後を話し合ってんだろうな。いやはやトップというのも大変だの~。
あんだけの大戦が終わったのに休まず、話し合いとはね。
三氏族たちは村にある神殿の一室に集まっていた。
彼らアゴン族は本来なら人間族とはそれはそれは因縁浅からぬ仲だ。
かち合えば即命の取り合いという同胞も人間もいる。
そんな中で二度も村の存亡の危機を救ったキリュウという人間にはそういった感情は一切ない。
それどころか村の中でも彼の評判はもはやうなぎ上りだ。
今回のこの要請も人間族たる彼には委細関係のない話だ。
ボ「人間族であるんなら金銭という礼とかができるんですけどね~。
多少の魔族の死骸を渡して礼というには自分達はあまりにも大きな恩を貰いました。
今日の議題はキリュウにどうやって恩を返すかという事でいいんですよね?」
イ「議題はそれでいいが、今言うようにどうするというのだ?
人間と我らでは価値観が違う。何を渡すというのだ?」
ユ「……娘のカミラから聞いたのだがな。
キリュウは所属する国家から魔族界への立ち入りを禁じられているそうだ。
現在ここにいる事自体ばれればキリュウにとっては相当重罪に課せられるそうだ」
ボ「嘘でしょ!?」
イ「それは事実か?ユリウス」
ユ「境界を守っている契約者とそのことで揉めていたそうだ。まず間違いのない話なのだろ」
イ「であるのなら、この件の重要度は跳ね上がる。我ら三氏族だけで決めていい話ではないぞ。
この村の住民すべてがこの件に向き合わねばならん。
我らアゴン族受けた恩も返さないで安穏と暮らせるほど腐ってはおらんぞ」
ボ「まさかそんな事になってるとは…何故キリュウはそこまでアゴン族に肩入れを?
我らは彼に何もしていないのに」
ユ「そうだな…この件は後日村の全体会で話し合おう。
だが…ここへの進入禁止令をキリュウがどうするかだな。
魔族の遺骸を取りに来るまでに決めねばならんか…」
ユリウスが家に戻ったのは出て行ってから二時間程経った頃だ。
こんなに長々と話し合いとは、ご苦労様なこって。
鬼「村長も大変だね~。一息つく間もなく今後の相談かい?」
ユ「まぁそんなところだ…カミラから聞いた。お前の人間界での状況をだ」
鬼「ああ…あれね。カミラも話さなくてもいいのに」
ユ「本当にすまない。本来なら人間のお前には関係のない…」
鬼「はい、やめやめ。そういう事は言いっこなし。…ここに来たのは自分の意志。
それに一気に大量の魔族の素材を獲得できるんだ。こっちとしても利益はある。
全くの無料奉仕という訳じゃないんだからさ」
ユ「…ありがとう。村を代表して心から礼を言おう」
鬼「それで十分だ。さて、ユリウスも帰ってきたしだ!飯を食おうや」
食事も終わり、戦闘の疲れもあったのだろうか。
殊の外早く夢の中へと落ちて行ってしまった。
目が覚めればあまりにぐっすり寝ていたのか、やっと夜が明けたというような時間だ。
ユリウスやカミラもまだ眠っている様だし…
ちょっと申し訳ないがこちらも用事がある。このまま出ていくとしようか。
家の外に出るとどの家もまだ眠っている様だ。
明かりも灯ってなければ火を使っている様子も無し。
誰かにあってもめんどくさいし、ちゃっちゃっと出ますか。
ア「しかし、お前どうする気だ?」
鬼「どうって?」
ア「取りに来るって言ったが、国の禁止令忘れてるんじゃないのか?」
鬼「そこら辺は一応考えてはいるんだがな。帰ってから色々動いてみようかと。
何せここでの活動が自分の今後をになっているし~」
ア「国家相手にいったいどういう策があるのだ?」
鬼「策って程の物じゃないがな。後は帰ってから話そう。
工房の製作状況も見てみないと判断がつかんな」
ア「製作状況?本当に何をする気だ?」
鬼「まぁまぁ、帰ってのお楽しみだよ」
そういえば、バッカスのおっさんの改築計画どうなってんのかなぁ?
店が作れれば計画もいい感じになるんだがな。
後は進めている話も上手くまとまればいいんだが…
とにかく、国に感づかれる前にさっさと帰ってザカリー隊を安心させないと。
移動を猛スピードで進んだ結果、来た時と同じような時間で着くことができた。
正直道中何体か見つけたんだが…
鬼「あ~、くそ!やっぱり狩りたかったよ~!何で止めたんだよアレイス!」
ア「言ったろうが!心配をかけさせては申し訳ないだろう。
それに急な事態が発生して隊が変わっていたらどうするんだ?」
鬼「それは…考えすぎじゃない?」
ア「ほう、そんな事はあり得ないと?そう言い切れる根拠はなんだ?説明して見せろ」
鬼「いやま、そうですけど…まぁ、門まで着いたんだ。とりあえず隊長に会いますか」
門をこっちの方で勝手に開かせてもらった。
開けるとアレイスの指摘は外れたようでそこにはいつもの通りザカリー隊の面々だ。
緊急事態は起きなかったようだ。
ザ「おお、キリュウ。早かったな。…戦闘は簡単に終わったようだな」
鬼「いや、そうでもない。規模でいえば数百体単位の群れだ。
村も自分が行かなかったら本当に消えていたかもしれん。
…それに原因が分からない以上、ここまで攻めてこないとも限らん。
そんなことも無いと思うが…」
ザ「何!?数百体単位の群れでの襲撃!?そんな戦力がか!?
…そうなるとこっちとしても無視はできんぞ」
鬼「あ、やっぱりそうなる?」
ザ「こちらとしてもこの門を守るという任務がある。
今後この門が脅威に晒されると知った以上しなければならない事がある」
鬼「だが人間界への報告はどうするんだ?情報の出どころを聞かれたときは?
この件がばれると自分も隊も犯罪者になるが?」
ザ「そうだが…しかしだ!」
鬼「…じゃあこうしよう。調査は自分がする、それを隊に報告。
その報告内容で国に報告するか、胸にしまうか。決めてほしい」
ザ「ああ?お前は」
鬼「例の件は何とかする。それで?返事は?」
ザ「…報告を聞いてから返事をしよう。それでいいな?」
鬼「承知した。じゃあ近い内に」
色々と考えることも多いが、とにかく家に戻るとしよう。
エルトも心配しているだろうし…ボチボチ次に進みたいんだけどな。




