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四十五話目

アゴン族の祀る獣神ビストガン。その神の持つ力に守護炎というもがある。

アゴン族の村を隠し、壁をもって村を害する存在から守る。その炎は太古より青と決まっていた。

それが突然黒に変わり村全体を覆っていく。

当然村の中も外も大騒ぎだ。村人はすぐさま責任者であるイザーク・ベルカを呼びに行った。


イ「これは一体…何があったというのだ?守護炎の色が変わるなど聞いたことも無いぞ…

一体何があったのだ?誰か説明してくれ!」

村「それが、キリュウがビストガンの炎に入ってしばらくしたら炎の色が…」

イ「キリュウが?本当に来てくれたのか…しかし何が?」


中心にあるビストガンがいる炎も黒々と燃えている。

その炎の中から黒い鎧を着た者が降りてきた。

相も変わらず不気味な薄ら笑いを浮かべた面をつけている。


鬼「おお、イザークのおっさん。アンタは村の中の指揮か。お疲れさん」

イ「キリュウか、よく来てくれ…じゃなくて!お前ビストガンに何かしたのか!?

この黒き炎は一体何事か!?」

鬼「ああ、これ?そうだ、おっさんの方から村人に説明しといてよ。

この炎はキリュウの魂だ、故に村を守ってくれる。そう説明しといてくれ」

イ「魂?それはどういう意味だ?」

鬼「悪いがこれ以上時間をかけているわけにはいかない。外のユリウス達に合流しないと」

イ「ああ、では頼んだ…」


それだけ言い残してキリュウは走って出て行った。

意味は分からんが…村を守るというなら深く聞いている時間などないか。


村「イザーク様、それでキリュウはなんと?」

イ「よく分からんが…いや、それはいいだろう。村人には私が説明する。

こんな状況だ。不安を少しでも解消しないといかんからな」


戦場からでも守護炎の色の変化はすぐに分かった。

それにしても、あの炎の色はなんだ!?黒き炎など聞いたことがないぞ!?

村の中から飛び出してくる人影が一つ。キリュウだ。


鬼「よし、問題は片付いたなと。ユリウスちょっといいか?」

ユ「キリュウか。いや今はそれ所では」

鬼「あの色は自分のした事だから気にしないでいい」

ユ「お前が!?いったい何をしたのだ!?」

鬼「今は時間がないから説明はすべてが終わってからだ。それよりも話がある」

ユ「そうか…で、話とは?」


話の内容は今から行う戦闘への準備のためだ。

何せそれをしておかないとこちらが生き残れないからな。


ユ「何!?それはどういう意味だ!?」

鬼「そのままさ。それ以外の意味なんかあるかよ」

ユ「しかし…」

鬼「いいからいいから。じゃあ頼むよ村長」


今回魔族達は別段アゴン族を襲った、という訳ではなかった。

ある理由があり偶々かち合ったのがこのユリウス村だ。

そして村を襲うという凶暴性のある行動に出たのはそのある理由というのが原因だ。

現時点の魔族共の精神状態はただ一つ、錯乱というのが正しいだろう。

その錯乱状態の魔族共でもおかしいと思う行動をアゴン族は取り出した。

何と今まで戦っていた戦士達が一斉に村の中に戻り始めたのだ。

別段指揮官というものがない魔族の群れだ。

一瞬おかしいとは思うがすぐさま村に追撃をかけ始める。

襲撃から何度も攻撃を加えている村と外の境界へ向けて。

所が今度の攻撃はダメージを与えるどころか今度はこちらに牙を向けてくる。


「ギィヤァァァ!!!」「オォォゥ!オォォォウ!」


そこかしこで突っ込んでいった魔族の体を黒い炎が焼き始める。

本来なら脅威を感じれば逃げるという本能が警鐘を鳴らすはずなのだが…彼らにはそれも起きないらしい。

それだけの目に遭ってもまだ村を襲おうとする魔族達。

だが、炎で焼かれるためどう攻めていいのか迷っている頃、一人そこに立っている存在がいた。

アゴン族ではない。魔族としての形を成していない。


鬼「う~ん…こいつらなんでこんなにここ躍起になって攻めるんだ?

ここになんかあんのか?」

ア「さてな。こいつらに生きる以外の目的があるとも思えんのだがな」

鬼「まぁいいや。逃げてくれないなら、返り討ちにするしかないわ」





村の中では外とは違った戦場が広がっていた。

戦士達への食糧供給、ケガの手当て、そのための物資の準備。

そのすべての指揮をイザークが担っていた。

そこに疲弊しきった四番隊達が流れ込んできた。


イ「ケガの手当て、食料の配布、医療品等は四番隊を優先しろ!

休息の取れた戦士は戦場へ!キリュウが来たとはいえ、戦はまだ終わらんぞ!」

村「イザーク様、外から村長たちが戻ってきました!」

イ「何!?」


中にいるすべての村人が入り口に視線を集める。

そこには外で激戦を繰り広げているはずの村の戦士すべてがいたのだ。

外からはまだ戦闘の轟音が鳴り響いている。何故全員がここにいるのだ!?


イ「ユリウス、どうしたのだ?まさか全員負傷したとかではあるまい?」

ユ「…これほどわが身が不甲斐無いと思った事はない。キリュウに言われたのだよ。

アゴン族はすべて戻ってくれと」

イ「何!?では外の魔族すべてとキリュウ一人で戦うと!?一体どうしてだ!?」

ボ「キリュウからしたら魔族と獣装アルマを装備したアゴン族は区別がつかない。

同士討ちは一番起きてはならない事態だと」

イ「そんな…無茶にも程があるぞ。一切の増援をあいつは要らぬというのか?」

ユ「…お前らは邪魔だから退け。他と一緒に殴りつけたらそれこそ死人が出るぞ。

自分に殺人を犯させる気かとな」

イ「……村長、どうするつもりだ?すべてをキリュウ一人に任せて我らはここで待つのか?」

ユ「我らとて誇りがある。だが…」

ボ「キリュウの攻撃を間違えて一発でも食らえばこっちが死んじゃうのも事実ですしね。

…彼のアブルートとの戦いぶりを見ました。とてもじゃないが我々で共闘できるレベルではないですよ。

あの鱗を素手で砕けるような攻撃を食らって無事な戦士がここにいますか?」

イ「それは…だがしかし!」

ボ「忘れないでください。彼はアブルートを一人で屠った人間です。

我らの精鋭があれだけなりふり構わず、時間もかけて倒したあいつをです。

どう思おうと、どうしたいと願っても我らでは邪魔でしかないのは変えようのない事実です」

イ「……」

ユ「今は…待つしかあるまい。

情けないな…この村を守るために戦っている者になんの助けも送ってやれないというのは」


ユリウスの言葉はアゴン族の戦士すべてが思っていることだ。

ここの戦士達も様々な戦闘を勝ち抜いてきた精鋭だ。

誇りも高い。その彼らが何もできないのだ、これほど悔しい事はあるまい。

それが分かっていながらも外で鳴り響く戦闘音をただ黙って聞いているしかないのだ。

色の変わった境界の守護炎を眺めながら。

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