四十四話目
カミラが人間界に来るという危険を冒して知らせてきた内容。
それはユリウス村が魔族の群れに襲われ、存亡の危機に瀕していると。
同胞の村は救援を要請するだけで数週間かかってしまう。
そこで一番近くにいる実力者という事で自分に白羽の矢が立った。
ただ、現在禁止令が出ているため普通に通してといっても通しては貰えない。
とりあえず、現在守備の任に就いているザカリー隊と話し合いの末通ることを認められた。
ただ、ザカリー隊のここでの任務は残り24時間。それを超えると別の隊が任務に就いてしまう。
そうなると自分はもちろん、通してくれた隊のみんなにも迷惑がかかってしまう。
まぁ、迷惑かけるどころか犯罪の共犯、下手をすれば国家反逆罪になっちゃうかもしれないと。
移動は鎧を展開してカミラを抱きながら全力でだ。
鬼「とにかく門の外に24時間以内に出ていかないとまずいんだよな!
悪いけどカミラ、頑張ってしがみ付いていてくれよ!
落ちて拾いに行くのもロスだ!」
カ「………!」
ア「しがみ付くのに必死らしい。とにかく急げ。私達なら一時間とかからない」
村では村人総員で迎撃と守備を行っていた。迎撃の支持は現場にいるユリウス。
村の中の支持はイザークがそれぞれ行っている。
戦士を交代制で戦わせて戦力を減らさないようにギリギリで指示を行っている。
村の中では非戦力の人員が食料の配給、ケガの手当て等をイザークが指揮している。
ユ「1,2,3番隊は村で手当てと補給を受けろ!4,5,6は戦線を維持!
7,8,9番隊にはすぐに出動!総員何とか踏ん張ってくれ!」
村「「「「「おっしゃぁぁぁぁぁあ!!!」」」」」
交代を続けてはいるが疲労の蓄積はどんどんたまっていく。
正直、これ以上の魔族が攻め込まれたら全員滅びてしまう!
ボ「何とか皆の士気は保たれているが、正直…」
ユ「言うな、ボリス。まさか魔族共がここまで群れで襲ってくる事など今までないのだ。
慣れない状況に危機感。全員の体力もかなりきつい所まで来ている」
ボ「……せめて私がアブルートを使いこなせていれば!」
ユ「仕方あるまい。儀式が終わってお前に適性があると分かってすぐにこれだ。
修練の期間無しではとてもじゃないが使わせるわけにはいかない。
お前が飲まれてしまう可能性のほうが高い。
それを言うなら獣神装を授かりながら使いこなせない私も同罪だ」
戦闘自体は今のところ五分五分というところだ。
ただ、こちらの戦力は徐々に減っているのに向こうは奥から次から次へと出てくる。
一体ここら辺の魔族共の間で何が起こっているのだ?
村「村長、4番隊が崩れ始めています!これでは補給のための交代ができません!」
ユ「やはり出たか…4番隊下がれ!すぐに7,8,9番隊が来る!
5,6番隊で何とか戦線を維持しろ!
…ボリス、指揮は私がとる。お前も自分の獣装で戦場に出てくれ」
ボ「分かった。…だがこれ以上は死者が出るな」
ユ「恐らく。…何とかその数を最小限にできるように」
?「おお!ユリウス発見!」
場にそぐわない明るい声が聞こえた。この場にいる誰もが望んだ声。
上から落ちてきたのは最愛の娘を抱えた黒い鎧と不気味な面を着けた人間だ。
恐らくここ数百年でアゴン族がこれだけ人間を待ち望んだのはないだろう。
ユ「キリュウ…本当に来てくれたんだな…」
ボ「全員もうひと踏ん張りだ!キリュウが増援に来たぞ!」
ボリスの声が戦場に響いていく。その瞬間戦士の士気は間違いなく上がった。
魔格8の魔族を一人で屠った人間族。そのキリュウが来たと。
戦士達は確信した。それなら勝てる!
鬼「これまた、歓迎されてんな。それで現状は?」
ユ「何とかまだ死傷者は出ていない。だが守護炎の結界に相当攻撃が当たっている。
正直どれだけ持つか…」
鬼「だったら先に守備の問題を片そう。戦場には行けないがもう少しくらい持つよな?」
ユ「それはいいが、お前何をする気だ?」
鬼「いいからいいから。じゃあちょっと失礼。ああ、カミラも中に放り込んどくから」
これ以上話し合いをしている時間も惜しいな。
とりあえず、カミラを下ろさないと。もう体力も限界だろうし。
村に入り、入り口近くでカミラを下ろすと立つ事もできないらしい。座り込んでしまった。
鬼「はい、ご苦労さん。よく頑張ったな」
カ「はぁ~、怖かった。よくあんな重そうな鎧着込んであんなスピードが出るわ」
鬼「落ちなかったな、偉いぞ。後はこっちで勝手に動く。まずは神殿に行かないと。
結界が崩れられたら村の守りにまで神経を使わんといけんからな」
村の中の神殿中は避難している村人でごった返している。
年寄りと手伝いの出来ぬ年端もいかない子供ばかりだ。さて、あいつと話をせにゃならんか。
神殿の中で燃え盛っている炎の中に飛び込んでいく。
中では獣神ビストガンが座っていた。案の定かなりお疲れのご様子だ。
ビ「あら、久しぶりねキリュウ。こんな時に遊びに来たの?」
鬼「んなわけあるか。救援要請を受けたから来たんだよ。カミラがわざわざな」
ビ「なんという無茶を…下手をすれば殺されたいたかもしれないのに」
鬼「だがそれが功を奏した。優しい役人が自分の所まで案内までしてくれたよ。
で、そっちはどうだ?顔色が悪そうだが?」
ビ「これだけの攻撃に耐えれる結界を張り続けるのも中々一苦労なのよ。
…まだもう少しくらいなら耐えれるけれど、これ以上激しくなると自信はないわね」
鬼「神といえども限界はあるという事か。では、少々力を貸そうか。
迎撃と守備の両方なんか見れないっての」
ビ「力っていったい何を…」
鬼「アレイス、やるぞ」
ア「承知した…出ろ!!」
アレイスの掛け声と共に全身からは炎があふれ出ていく。
驚愕しているビストガンを無視して炎はどんどん広がっていく。
アレイスや鎧と同じ真っ黒に染まった炎だ。
ビ「なっ!?キリュウこの炎は何!?」
鬼「以前お前から魂に紋とやらを刻まれたろ?
その時からお前の守護炎に似た力が使えるようになったらしい。
ただ、この炎はちょっと違う性質も持っちゃった」
ビ「違う性質?」
鬼「自分に敵対する存在には容赦なく牙をむく。
守備だけではなく迎撃もしてくれるって訳。いやぁ、ありがたい力をもらったわ」
ビ「どういう事?今までそんな力を持った人間なんかいないわ。
今までだって何人もの人間に紋を与えたわ。でもそんな事なんか一回も…」
ア「紋はいわば火種のような物だ。
その火を強く大きくするには普通の人間の魂では到底出来ん。
こいつの魂は他とはだいぶ違う。お前の炎を扱えるようになったのはそういう訳だ。
色と本流とは違う炎はこいつの資質だろうな」
鬼「この炎を村を覆う結界に広げた。これで守備は問題なしだ。
結界への炎の供給は自分でやる。アンタはしばらく休んでくれ」
ビ「…貴方本当に人間なの?こんな事ができるなんて…」
鬼「自分にも神がついている。黒き鳥の神が。…なんてな。まぁ、そういう事で納得しておくれ」
ア「黒き鳥の神か。おお、それもいい響きだな」
鬼「じゃあ獣神ビストガンよ。我はこれより貴方の子等を救いに行く。
とくとご覧あれ。黒き鳥の神と黒き鎧の戦士の戦い様を!!」




