三十五話目
闘人ギルド長オリバー・ライフェンが家に来たもんだから流石に心配をかけたんだろう。
エルトと防具職人のトーマスが心配そうな顔をしている。
エ「ちょっと!何でギルド長なんかがこんな一般宅に来るの!?また何かしたの!?」
ト「お前は色々規格外だろうが流石に訪ねてくる人物がちょっとお偉いさん過ぎないか?」
鬼「はいはい、お二方心配しなさんなて。ちょっと世間話してただけだよ」
エ「世間話なんかこんな一般宅でしないでしょ?」
鬼「エルト君、どこでもするから世間話なんだよ。仕事の話ならそれなりの場所でするって」
ト「…私達四人はお前にただ雇われている身だ。とやかく言う気はない。
ただ、私達に何らかの害は無いようにしてくれよ」
鬼「了解了解、そこら辺の心配はしないでおくれと。さぁさぁ、お仕事に戻っておくれよ」
トーマスは自分の言葉を信じて作業に戻っていった。
…ん~、エルトは何で残ってるんだろうか?
鬼「あ~、エルト君や。どうしたんだい?仕事が残ってるんじゃないのかな?」
エ「本当に大丈夫なの?君の事は信用してるけど…」
鬼「心配ない。それ以上の言葉は要らないだろ」
エルトは一応納得したのか工房にに戻っていった。
トーマスにエルト、今この工房はこの五人で回っている。
今職人の信用を無くすのは非常にまずい。
ア「想像以上に職人達の動揺は大きいな」
鬼「そらま、急なお客さんにしちゃあまりにもお偉いさんだからな。
もう一騒動あったら流石に信頼を失うかなぁ」
ア「それはまずいだろ。人間界での拠点を失うぞ」
鬼「いいからいいから。さてと、後々やりやすいように今日は色々やる事が有るから。忙しいぞ~」
一日を掛けて国の中を色々歩き作業は終了だ。とりあえずこれで道筋は一応立つだろうが…
それ以上の事が起きたらその時はその時か。さてさて、この頭でどこまで行けるのか…
ア「どうだ?お前の言うやる事は終わったのか?」
鬼「まぁ、前から色々やってきたからね。それが実るか…
自分がやってるのは教会、国、ギルド。そこらへんまとめて喧嘩売ってるのと同じよ。
それぞれに誘われ仲間に入れと言われたが断り、ルールを無視して好き勝手。
こういうのは大人は許しちゃくれないのよ」
ア「単純に武力だけならこの国全員の契約者とやり合っても勝てるんだが…
これなら魔族と戦っている方が気が楽かもしれんな」
鬼「命を無くすかもしれん戦いの方が楽か。
やれやれ、自分達はいつからそんな戦闘狂になったんだか」
もう夜になろうかという夕暮れ時だ。今日はもう休もう。
飯を食らい、汗を流してゆっくりと横になり…
エ「キリュウ、大変だよ!」
鬼「よし、アレイス。今日はまだまだ終わらないらしいぞ」
ア「全く、次から次へと…」
家の中に入り、居間を見ると武器屋の店主バッカスがいる。
はて?防具はまだ出来てないから買取は頼んでないが…
鬼「おっさんどうしたんだよ?出張買取なんか頼んでないぜ?」
バ「…それ以前の問題が起きた。店が営業停止になってしまった」
鬼「……何それ?何があった?」
バ「お前達から買い取った武器。その武器の素材の入手経路に違法性がある可能性がある。
その嫌疑が晴れるまでその武器を流したワシの店には共犯として当分の間営業停止処分とする。
商業ギルドからきた内容は大体こんな感じだ」
鬼「お~お~、えらい言い掛かりつけられてんじゃねえか。何の根拠があってんな嫌疑が…
大体疑う根拠は何だよ?」
バ「オディアス教と契約を交わしていない普通の人間が魔族に勝てる訳がない。
ましてや今回集めた素材はすべて魔格7の高位魔族。
通常の戦闘行為の結果としてはあまりにも疑わしいも物がある。
恐らくは違法に盗む等をして得た素材の可能性がある。とまぁ、大体はこんな感じか。
ワシも聞いた時はどんな言い掛かりかと思ったわ。だがギルドは本気でこの処分を下した。
武器が合法だと嫌疑が晴れない限りワシの店は休業。すまんがしばらくは買取は出来ん」
エ「そんな…おじさんが謝る事なんかないよ」
鬼「そうそう。あの素材は間違いなく自分がこの手で倒して得た正当な対価だ。
全くどんな手を使うかと思ったら…」
バ「どうする?さっき工房を見たら今はアブルートを使った装備品だろ?
価格も前にお前らから仕入れた物の倍以上する。
そうなるとある程度の規模の武器屋でないと仕入れも出来ん。
他の武器屋を紹介しようと思ったんだがな」
鬼「…いや、駄目だろ。今のアブルートにしたって同じ嫌疑がかかるだろうしな。
この疑いそのものを晴らさないと根本的な解決にはならん」
エ「そんな…そこまでして何で僕たちの邪魔をするのさ!?」
バ「それは分からんが…実際問題どうする?武器が売れないとなると工房が止まるぞ。
やっと稼働しだしたのに…」
エ「……あっ!だからキリュウあんなにこだわったの!?店造るっていうのに!」
鬼「いやぁ~、取引先に手を出すのは目に見えてたから。
どうなるかはわからんかったが、まさか本当にそこまでやるとはね」
バ「話が見えんのだが…要はあれか?お前達と取引したから今こういう目に遭ってると?」
鬼「裏は取れてないから分からんが…いや言い訳はしない。
すいませんでした。何をどう言おうが巻き込んだ形になったのは否定できない」
エ「おじさん本当にごめんなさい!」
バ「…キリュウちょっと二人だけで話せないか?」
鬼「分かった。エルトちょっと外してくれ」
エ「で、でも…」
鬼「イイから。頼むよ」
エルトは部屋を出て行った。納得はしてないだろうがな。
鬼「さてと…話ってのは?」
バ「商売が古いとな、色んな所に知り合いが出来る。
流石にこの疑いはおかしいと思ってな。方々聞きまわったわ。
…今、国とギルドがお前の取り合いをしているらしいな」
鬼「おお、、それはまた光栄な…」
バ「今回の商業ギルドの処分もそこら辺が絡んでるんだろ?
でなければこんな嫌疑、聞いたことなどないわ。
素材が盗まれたとなればその被害者は何処にいる?
何故、未だに名乗り出る者がいないのだ?
…少し考えれば誰でもわかるわ」
鬼「オリバー・ライフェン。闘人ギルド長が前にわざわざここに来てな。
色々脅しをかけてきやがったわ。そう言ったことが嫌ならギルドに入れとな」
バ「そういう言い方をするなら入る気はなのだな?何故だ?」
鬼「最初にこっちが入りたと言った時に自分が契約者じゃないから駄目だと断りやがった。
それが自分の力が知れ渡るにつれて手の平帰して入れと言いやがる。
その身勝手さが気に食わないんだよ。無契約者ってのはまぁ…いろんな扱いを受けたのよ。
国も、教会も、ギルドも!!自分は許さない。あんな扱いをしやがって…」
バ「…この工房もエルトも、今お前がいるからこうやって前に進んでいる。
ワシはあんたに感謝をしているんだ。そのアンタがそう言うならワシはもう何も言わんよ」
鬼「そらどうも。ところでこれからどうするの?店開かないんなら暇だろ?」
バ「ん?そうだな…何も思いつかんな」
鬼「今さ~、この工房のすぐ隣に店造るんだけどさ。協力しない?」
バ「店?ああ、そういえばさっきエルトがそんな事を…
いやいや、商業ギルドが認める訳がないだろ?」
鬼「んなもん入る訳ないじゃん!こっちが勝手にやるんだよ」
バ「…何?」
鬼「おそらく今後こういう事はいくらでも起きうる話だ。
そこで買取からの資金収入ではなく、製作と販売をここで行う。
それが出来れば心配の種は一つ減る訳よ」
バ「それはそうだろうが…」
鬼「そこでだよミスターバッカス!その店の実現に手を貸してほしいのよ。
店の経営面に関しての協力をお願いしたい」
バ「いや、しかしだぞ。ギルドに入らないなど聞いたことが無いのだが…」
鬼「うんうん、心配は分かる。しかしエルトにとってはこの手しかないんですよ。
買取で工房が回らないなら自分で売って工房の収入にするしかない。
それは貴方の気に掛けるエルトの今後を左右する大事だ」
バ「……分かった。店の経営面には協力しよう。だが、それ以外の揉め事にはワシは関与しない。
それでいいか?」
鬼「契約成立だ。ではよろしくお願いしますよ。バッカスさん」
恐らく店を作った所でそれも込みで邪魔が入るだろう。
だが、それが出来れば少なくとも他人に被害が出るのは避けられる。
エルトやバッカスを巻き込んだ時点でそれを自分が言うのはそうなんだろうかを考えてしまう。
どうか自分で対処できる程度の邪魔でありますように…




