三十二話目
各国には国家としての機関とは別に民間を支える組織が有る。
ギルド。この世界の国家機関以外の民間事業を支える大きな組織だ。
国に仕える公務員以外すべての人間が所属していると言っていい。
各国に支部があり各々の国で国家機関とは別に国を支えている。
大陸のどこかにギルド総連というものが有るらしいのだがそれはまた別の機会に。
ギルド、教会、国家。国というものはこの三つの勢力で成り立っている。
各々が国を運営していく上で欠かせない組織だ。
人間が暮らしていく上での集団生活を支える国。
その暮らしている人間が経済活動を行い、金銭を得て生活を成すために必要な集団がギルド。
その人間が弱い自分の身を守るために力を神より得るため、神を支えるための集団が教会。
さて、私キリュウがいるアクアビスにも当然ギルドは存在しそれぞれのギルドには長がいる。
闘人ギルドは契約者を管理し魔族の討伐依頼、各ギルドへの素材の流通。
魔族の素材の売買や素材を扱った商品は国家の財政に直結する重要な組織だ。
アクアビス闘人ギルド長、オリバー・ライフェン。
彼は只今、別のギルドのギルド長との面談をしている最中だ。
オ「やぁ、べリンダ。久しぶりだ」
べ「あら、闘人ギルドの長が商業ギルドに何か御用かしら?」
彼女はべリンダ。アクアビス商業ギルドの長だ。ランクは法人、故に名字は無い。
この世界で店を作り、商売をして利益を得るという事を行う場合全員ここに加盟する。
オ「少々相談があってね。今この国で一番噂になっている者を知っているかな?」
べ「黒い服に黒い鳥を連れた無契約者。オディアスの五神に見捨てられた者。
黒い鎧をまとって武器を持たず戦い、剣龍を一撃の元に叩き伏せた者。
私の知っているのはこの位かしらね」
オ「その通り。正直正体は分からないがこの世界における実力としては聖に匹敵する実力者だ。
それゆえ、アクアビス王も彼の者を国に仕えさせようとしたんだ」
べ「断られたんでしょう?」
オ「ほう、流石に分かるか」
べ「無契約者。彼がそれだと分かった時この世界の人間がどういう態度だったか…
法人として契約した時のあの周りの反応。それらを考えると結構な扱いを受けたんじゃないの?
そこら辺を考えるとこの国のために働こうなんて考えは無くなりそうね」
オ「そこら辺の詳しい事情は知らんがね。彼の事で教会側からちょっとした要請がありましたよ。
まぁ、どうせ圧力は国から来てるんでしょうけどね」
べ「国とギルドはお互い不干渉というのがこの世界の基本ですからね。
それでどんな要請だったんですか?」
オ「彼の実力からして闘人ギルドに来るのは間違いない。
彼の者をギルドに登録させないようにという内容でしたよ」
べ「それは…かなりの越権行為では?そのような行為がまかり通るのなら、
国が目をつけるような優秀な人材がギルドには居なくなってしまう。
それはギルドの弱体化につながり、お互いに不干渉というルールが守られなくなる。
まさか、それを飲んだんですか?」
オ「いやぁ、教会に恩を売れるならいいかなって思ったんですが…
それが少々事情が変わってきたんですよ」
べ「変わったとは?」
オ「彼が魔格8破龍アブルートを狩った話は聞いていますか?」
べ「そんなもの、国で知らない者は居ないんじゃない。
噂で持ちきりよ。無契約者と一緒に戦った物好きは誰かって」
オ「それがだ、聞いた話によると無契約者が単体で狩ったらしい」
べ「……はぁ?冗談にしては中々の出来ね」
オ「本当だ。少し考えてみれば分かる話だ。無契約者と共に戦う物好き。
この世界にそんな人間がいるとも思えんしな」
べ「魔格8なんて龍が複数、下手をすれば聖が出ても可笑しくないレベルよ。
そうなるとその者の実力は…」
オ「聖ランク。それに匹敵するのはもう事実だろうな。契約者だけではなく魔族にも有効な実力者。
そうなると教会に恩を売るよりも闘人ギルドで仕事をしてもらう方が利益が大きい」
べ「そうね…国に嫌がらせも出来るわね。先程の越権行為も腹が立ちますし…
分かりました、貴方の言う通りにしましょう。
それで私に何を要請するのかしら?オリバー・ライフェン?」
オ「彼がギルドに入りたいと言うようにしたいのだよ。彼の方からね」
べ「そこは貴方の方から言えば済む話じゃないの?ギルドに入る許可が下りたとか何とかで」
オ「今後の関係上、私は彼の上に立たねばならん。その場合私が頭を下げるのは今後に不利なのでね」
べ「…委細承知しました。で具体的には?」
闘人ギルド、商業ギルド。国の安全や経済活動を司る重要なギルド。
この二つのギルドのトップ二人の密談んだ。内容としてもかなりおっかない。
しかしだ、今更ギルドに入るわけもなく国に仕えるなどそれももっての外だ。
ただし、今の状況自体は大変ざまぁ見ろと言える。
あれだけ馬鹿にした教会。こっちの言い分も聞かず教会の言う通りにしたギルド。
さらにこの国の王。国の主要組織が今自分を取り込もうと躍起になっている。
こういう話は人の口を流れてまた国中に流れる事だろう。
家族に知り合い、今は国に仕えている元友人たち。
彼等は今どう思うんだろう。あれだけ馬鹿にし、コケにし、あまつさえ殺そうとまでした人間がだ。
今は国、教会、ギルド。この三つが欲しがるような存在になったのだ。
悔しがるのか、もっと自分を恨むのか、後悔するのか。
もっとだ、もっともっとこの国の人間に自分の名前を知らしめよう。
自分を否定し、拒絶した存在がどのような存在だったかを。




