三十話目
若干の集団暴動になりかけたが、脅しが聞いたのかやっと全員帰ってくれた。
貴重な素材だから寄越せとか中々図々しい要求があったもんだ。
後学の為?あの男もどの面下げてここに来れたもんだ。
鬼「しかし、あの魔族は面倒事しか起こさんな。これ以上狩るのはマジ考え物だな」
ア「人間界では滅多に入らん代物だからな。国にギルドにまさか個人まで動くとはな」
エ「そうだね、リアム辺りは本当に力づくを考えてたんだろうね」
鬼「うわ、エルト見てたの?まぁ、そこまでは行かなかったけどね」
ア「何か分かったのか?リアム辺りとは?」
エ「集団で武器持ってた半分くらいはリアムの工房の人間だったよ。
見慣れた顔がいくつかあったしね」
鬼「工房奪って、素材も力づく?もう盗賊と強盗とかの分類じゃん」
ア「しばらく私達はここから動かない方がいいな。もっと過激な人間が出てきてもおかしくない。
護衛役に居た方がいいだろう」
鬼「え、マジ?そこまでしなきゃいけないの?本物の強盗とか来る訳?」
ア「まぁ、流石にそこまでの事は起こらんだろうが…
一応お前の事も噂として流れている。そんな者が居る所に盗みとかは無いと思うが」
エ「じゃあそっち方面はお願いね。こっちは作業に集中するから」
鬼「防犯ねぇ…何か手を考えないとな」
アレイスから言われた防犯の手段をいろいろ考えてみた。
地球なら防犯設備や警備会社なんかを考えるだろう。
ただ、これから起きるかどうかも分からないような事にそこまで経費はかけられない。
ただ一応見張り等の原始的な手段で対応しようと思う。
とりあえず家の周辺を監視のしやすいように改造をしよう。
ア「それでまずは何をするんだ?」
鬼「とりあえず家の周辺の樹や遮蔽物になりそうな岩なんかをどかそう。
家の周り100m位は何も無い状況を作ろう。それで監視はかなり楽になる」
夜に向けての家周辺の大工事を開始した。
といっても木や岩を引っこ抜いて動かすだけなんだけど。
しかし、一人でやるのは疲れるわ~。
ア「よし、これだけ視界が確保できるのであれば大丈夫だろう」
鬼「後は実際に来るかどうかを待つだけだな。たく、来ないでくれよ~」
数時間後、日も暮れて夜を迎えた。
ここいら辺に該当設備などなく、夜と言えば真っ暗だ。
近づかれたところで普通に見ているだけでは分からない。
鬼「アレイス、鎧を展開。さてさて鬼が出るか蛇が出るかだな」
ア「出ない事を祈るがな」
夜も遅くなり一般人はもう寝て次の日の仕事のために休養している時間帯。
ましてやこんな街から外れた職人しかいない工房に来る人間などいない。
…やばい、ちょっと眠いな。
鬼「今日はもう来ないかなぁ~」
ア「流石に慎重になり過ぎたか…」
鬼「いいか、今日はもう」
ア「…いや、粘ったかいがあったぞ。誰か近づいている」
鬼「おお~、来ちゃったかぁ…じゃあやりますか」
周囲が暗闇に染まりきり視界が段々奪われていく。
近づいた賊は四人。二人が剣魔、一人が槍人、一人が撃鬼。
彼等も街の中で工房を持つ職人なのだが、徐々に客足が遠のいて行っている。
理由としてはある客との揉め事が原因だ。
預かっていた防具の整備がきちんとできていなくその防具を駄目にしてしまった。
幸い戦闘中などではなく普段の生活で見つかった。死人が出たとかではなくその点は幸いだった。
しかし、人の噂というものはすぐに回っていき客は引いていく。
それが原因で職人も段々と辞めていき、今はこの昔からの四人だけが残っている。
そんな折、エルトの噂は昔から聞いていた。一人で工房を継ぎ、端材を貰い生計を立てている。
彼等もそんなエルトを馬鹿にしていた集団の一人だった。
そんな時新しい噂が彼等の元に届いた。世界で唯一の無契約者と組み仕事はし始めたと。
大いに笑った、恥の上塗りだと。そこまでして何をしたいのかと。
所がその噂を聞いてすぐに彼らの造った武器を見た。
出来もそうだが使われた素材を聞いてさらに驚いた。すべて魔格が7。
普通に手に入れようとしたら数千万ディアでも足りるかどうかという金額だ。
それを簡単に三体も手に入れた。そして次が魔格8。
恥の上塗りどころか国中で今大注目の工房となって言っていく。
それが彼等には許せなかった。沈んでいく我らと上がって行くあいつ等。
工房で酒を飲み気分が高まった時仲間が言ったのだ。
「あいつらに8なんて勿体ない!自分達の様な経験豊富な職人が扱ってこその素材だ!」
酒を飲んだ悪酔いなのか、日頃の鬱憤がたまっていたのか。
仲間全員がそれに乗ってしまった。
まずは頭目の撃鬼、トーマス・ジャーマン。
剣魔の一人、メイナード。
同じく剣魔のウォーレン。
槍人、ニール。
ト「いいな、行くぞ皆」
メ「ただよ?ここにはあの無契約者もいるんだろ?色々物騒な噂が…」
ウ「大丈夫だって。無契約者に魔族なんか倒せないって」
二「いいから、行こうや。その魔格8の魔族楽しみだなぁ~」
近づくにつれて遮蔽物が全くないのに気が付いた。若干不安にもなったが今は深夜だ。
目に見える訳などないのだ。今更引くわけにもいかずこのまま直進だ。
ゴン!!バァァン!メキィィ!!ドォォン!!
ト「なっ!?何の音だこれは!?」
ウ「ギャァァ!?」
二「ウォーレン!?どうした!?」
メ「何かがと!?」
メイナードの言葉は途切れて聞こえなかったが事の事態は分かった。
自分達の居る周囲にでたらめに何かが飛ばされている。
気がつけば周りにいる仲間は全員飛翔物で気を失っている。
石に樹!?何だ、何が起こっている!?
ウ「ガハァア!?」
とうとう自分にも当たってしまった。
こんな暗闇で何故自分たちの居場所が正確に分かるんだ!?
周りに明かりなど全く無いんだぞ!?
?「おしおし、全滅してんな。しっかしいきなり現れるか。こりゃしばらく気は抜けんな」
?「四人。よし、とりあえず縛って尋問といくか」
現れたのは一人の人間だ。訳の分からん面に黒い鎧だ。多分これが今話に聞く無契約者か。
罰が当たったのか、まさかいきなりこんな目にとは…
ああ…やめときゃよかったかな…




