二十六話目
祭りもどんどん夜が更けるにつれていくにつれて村人のテンションは上がっていく。
脱落者も出始めてきたが…この辺の気候は基本的に過ごしやすい。
一晩くらい外で寝て過ごしたところで死にゃあしないだろう。
ユ「おお、キリュウこんな所にいたのか。村人が捜しておってな、少々付き合え」
鬼「はぁ、別に構わないけど」
村人の要件で村長が捜しに来るのか?
一体この村の上下関係はどうなっているんだ全く。
ユリウスに連れられて行った場所は人だかりが出来ていて一番盛り上がっている。
中心部分では獣装をつけた戦士が戦っている。
鬼「…この村の喧嘩はあんな全力でやりあうのか?」
ユ「喧嘩などではない。アゴン族伝統の競技だよ。
ここにはビストガンによる守護炎で空間が囲まれている。
局所的な境界線が引かれているという感じだな。この中で戦えば周りに被害は出ないからな」
鬼「そこまでやって本格的にどつきあいをすんのか?なんともはや血気盛んな種族だな」
ユ「これは獣神ビストガンに我らの力を示す伝統競技だ。殺生は禁止、相手が負けを認めるまで続く。
長いのになると数日間続いたという記録もあるそうだ」
鬼「…よしそれは分かった。でだ、なんで自分はここに?」
ユ「折角だ、お前も参加しろ」
鬼「ああ?自分がか?アゴン族でもないのに参加していいのかよ」
ユ「お前はもうビストガンから祝福を受けたんだ。別に問題はあるまい」
鬼「いや、そういう乱暴なのは自分苦手で…」
ユ「よく言うわ。アレイス、お前はどうだ?折角の祭りだ、楽しまねば損だぞ」
ア「そうだな…面白そうだ、キリュウやるか」
鬼「まぁ、いいか。楽しんでやりましょう」
鎧を展開し、結界炎の中に入る。
周りは意外な挑戦者にテンションが跳ね上がる。
歓声を受けて、力の限り戦い合う。普段の戦闘には無い気持ちの高ぶりが有る。
鬼「あらら、意外と歓迎されてるのね。ちょっと嬉しいじゃないの」
ア「本当にここは居心地がいいものだ…
さぁ、お祭りだ。思う存分楽しもうじゃないか!!」
鬼「じゃあもう行くわ。まさか一泊までするとは…同居人にこれ以上心配かけさせられないし」
ユ「くっくっくっ…昨日は傑作だったな。結局お前に挑戦した者は全員ぶちのめされるとは。
我が村の戦士ももう少し鍛えておかねばならんな」
ア「こいつはあんまり教材には適さんがな。あまりに常識から外れている」
ユ「それでもやる気を引き出させる材料位にはなるだろうて」
鬼「じゃあ、また」
ユ「ああ、また今度な」
お祭り騒ぎは夜通し続き、朝まで続いた。
村の中には一部の見張りを残し、ほぼ全員が夢の中だ。
伝統競技の結果は…多分自分の一人勝ちという結果に終わった。
最初の勝負が終わり、結界炎を出ようとしたら次から次へと挑戦者が現れる。
ゲーセンの格闘ゲームかっちゅうの。
鬼「まさか一泊する羽目になるとは…やばいな。エルトが本気で心配してるんでないか」
ア「この世界の常識で照らし合わせるなら…魔族界で一夜を過ごすという暴挙としか思われんだろうな。
きちんとした装備もなく、メンバーも組まず、単体で過ごすなど死んだと判断されても仕方ないな」
鬼「ワァオ、結構まずいんでないのか。死亡届とか出されたりして」
ア「とにかく戻ってみない事には分からん話だ。さっさと我が家に帰ろうか」
鬼「という事はだ…またあれを担いで持ち帰るんか。あ~、しんどい」
移動を続けること数時間、やっと門までたどり着いた。
ア~しんどい…こら何か手段を考えんと面倒だわ。
さて、さっさと門をくぐって…
守「なんだ、この魔族は!?初めて見たな~」
ここを通るときにサンドスネイクとやりあった時に守備隊を指揮していたおっさんだ。
めんどくさいのに会っちまったなぁ。
鬼「ああ、どうも。じゃあ通りますんで開けてもらっていいです?」
守「いやいやいや…少しくらい説明してくれよ!こんなもん初めて見たぞ!?」
鬼「魔格は8。破龍アブルート。素材を探すのにうろうろしていたら出会いました。
これ幸いと狩猟しました。以上
守「8!?そんな魔族をどうやって狩ったんだ!?どういう意味だ?
一人で!?それはもう何かの冗談なのか!?」
鬼「冗談というなら今自分が抱えているこいつは何なんだという話になりますよ」
守「はぁ~…君何者だ?8なんか龍が複数、下手をすれば聖が出動するランクだぞ?」
鬼「キリュウ、名字は無し。今流行りの素手で戦う人間です。しかし、貴方はいつもここに居ますね」
ザ「ザカリー・クロウリー。第三境界門守衛団ザカリ―隊隊長。そういえば自己紹介は初めてだな」
鬼「名字付って事は…」
ザ「剣鬼。私のランクだ」
鬼「それはどうもご丁寧に。ではこれで失礼しますよ」
門を開けてもらい、久しぶりの人間界だ。
さっさと狩りに出て戻るつもりが蓋を開けてみれば一泊までしちゃったもんな。
まぁ、そのおかげでこんな素材に巡り合えたんだけど…
エルトは怒ってるかなぁ。




