二十三話目
この世界で数回の戦を経験した。
今回初めてのアレイスとの共同での戦闘だ。どの程度の力が出ているのか、それを今から確かめよう。
とりあえずアレイスからは普段通り動いてみろと言われたので…とりあえずこっちも撃ちますか。
さっきは先手を打たれたわけだし、やり返したる!!
鬼「おっしゃぁ!!!行くぞこらぁ!!」
思い切り足を踏み出し、アブルートに当たる距離まで詰める。
今まで出した事の無いようなスピードでアブルートの懐まで飛んでしまう。
通常なら制御しきれないようなスピードだが…イケる!!
キチンと感覚面も強化されていて動く止まるが自由だ。
アブルートの体の周りを練習がてら動いてたら…
鬼「おお、おお、おお!!すげぇなこれ!!動ける動ける!」
ア「遊ぶなって言っただろ!こっちだって早く終わらせたいんだ!」
鬼「悪かったって。真面目にやるから」
アブルートの巨体の周辺を周回しながらどこを攻撃ポイントにするか調べていく。
アレイス曰く、かの素材は鱗一枚すらかなりの価値があるとされている。
防具にしろ武具にしろだ。そう言われたらなるべく被害の少ない場所を選びたいじゃん。
ただ…無いな。全身、それこそ隙間なく鱗が生えてやがる。
少し距離を離してアレイスと相談だな。
鬼「おい、どうするよ。あれ隙間なんかないじゃんよ」
ア「そうなると、後は一つだな。損害は最小限に止めよう。
殴る場所を決めてそこのみ拳打を与え続ける。首の根本あれの急所が有る」
鬼「一つの場所に留まって殴るか。急所だろ、時間かけると反撃食らうよな…
よし、練習がてらちょっと試すか」
しかし、高魔格の魔族相手にこっちが心配しているのは素材の事のみ。
傍から見てりゃこいつらは馬鹿なのか?て感じで見られてんだろうな。
ただ、これが今の自分達の力なんだろう。
現に今自分は死ぬどころか負ける気すらしていないのだから。
あまり時間をかけるとこちらも戦闘不能になってしまう。
取る手立ては一つ。最速の動きで片付け、最高の素材を手に入れる
こちらとしては普通に近づいたつもりだが、アブルートは見えてはいなかったようだ。
明らかに狼狽して周囲を見渡し自分を探している。急所の真ん前に敵がいるのに…
丁度いいのでしっかりと腰を入れて殴らせてもらおうか!!
鬼「一発目、どうだ!?」
しっかりと腰を落とし力を入れて急所への正拳突き。
ガァァァン!!
「ゴアアアアアア!?」
いきなり敵が現れてしかも急所への剛拳一発。さっきの蹴りよりも威力は上がっているはず。
鱗上からだが衝撃は伝わっているらしい。
その証拠に蹴りの時はすぐに体勢を立て直したが、今度は大分弱っているのが分かる。
このままイケるか!?
鬼「まだまだ!!!」
殊の外相手の動きが無いのでこのまま殴らせてもら…おうと思ったがまだ体力は残ってたらしい。
前足でこちらを払いのけようとしてくる。
動くのも面倒なので蹴りで迎撃。あ、やべ。前足砕けたかな?
血を吹きだして形が原形をとどめていない。
ア「あ、こら!体を傷つけるなと言ったろう!?」
鬼「てめぇ、こっちの体よりも素材の心配か!?食らったらどうすんだ!?」
ア「鎧出してるんだかから無傷に決まってるだろ!何を心配しているんだ馬鹿者!」
鬼「…いいだろう、その点に関しては後で話し合おうじゃねぇか。とりあえず…これでラストだ!」
これ以上時間をかけるとさらにアレイスとけんかになりそうだから終わらせよう。
前足を砕かれたことで体勢を保てず、崩れ落ちてくれた。
反撃は打ってこなさそうなのでこのまま殴り倒す!!
ガン!ガァン!!バァァン!グジュ!!
ああ、いい音だ。鱗が砕け、肉を裂き、中の急所を潰した音だ。
アブルート君は口から大量の血を吐き倒れてくれた。
ドォォォン…
最後は叫び声も出ずに倒れこむ。一応確認のために顔の方に寄っていくが反応はなし。
間違いなく生命活動の停止を確認と。体を見渡すと他に特に傷は無く、状態はかなり良しだ。
オオ…これが大金に変わるのが目に浮かぶ…
鬼「おっしゃ!無事終了と。いやぁ、お前との初めての共同作業中々いいんでないかい?」
ア「これも訓練で時間も扱う力の量も上がるだろう。
要は元であるお前の体が壊れなければどれだけでも無理が効くって事だしな」
鬼「…うん、頑張る!さてと、とりあえず村側の様子を見に行くか。ボリスはどこ行った?」
ボ「私はここに居ますよ」
鬼「おお、居たんだ。で、どうだった?自分の力は?」
ボ「…正直恐ろしいですね。貴方が見えたのはほぼ最初だけ。
後は貴方が動くのが点でしか見えませんでした。
あそこにいたと思えば間の動きは見えず、次の瞬間には別の場所へ。
そして離れたと思えばアブルートに止めを刺していましたし。もう意味が解らなかったですね」
鬼「傍から見ればそんな感じなんだな。時間にしてどれくらい経ったかな?」
ボ「十分。かかったかからなかったか、程度ですよ。
このアブルート相手にこれだけの短時間で片づけるとはね」
鬼「OK、じゃあ村側の様子でも見に行きますか。
あちらは数は多いんだ、何とかはなるだろう。ボリスも参加するんだろ?」
ボ「無論ですよ。もう監視役はお役御免、なれば後は同胞の加勢にいかないと」
鬼「先に行っててくれよ。こっちはこれ運びながら行くから」
ボ「運ぶ?どうやって?」
鬼「担いで」
ボ「……分かりました。ではこれで失礼します」
ボリスは村側の戦闘が行われている方向に走り去っていく。
まだ轟音が鳴り響いているからあちらさんはまだ戦闘中らしい。
鬼「向こうはまだ続いているみたいだな」
ア「このランクが相手だ。あっちは数もいるが…もうしばらくかかるだろうな」
鬼「しかし、この鱗がかなり厄介じゃね?これ無かったらもっと楽に勝てたのに」
ア「このランクだと鱗が有ろうが無かろうが体はかなり強固だ。
それにダメージを与えるのが各々の力量だな」
鬼「では、あちらの力量を見に行きますか」




