二十一話目
建物の外にはたくさんの妖族でごった返しになっている。
子供や老人、女性。所謂非戦闘員と呼ばれる方々だ。
その人だかりを超えると、今度は男性陣が固まっている。
全員腰には獣装を下げて待ち構えている。
中心には村長のユリウス・バボラーク、イザーク・ベルカ。
更にもう一人、周りから比べると少し小柄で年齢も30代位の若い男性がいる。
あの二人と対等に話しているからあれが獣神装を持つ三つ目の一族
ボリス・ブラーハという所だろうか。
周りのごついアゴン族をかき分けてその三人の近くに行く。
進みながら村人は誰だこいつという険しい顔をこちらに向けてくる。
鬼「いやぁ、何か大変そうだね」
イ「貴様、まだ村にいたのか。さっさと帰っておけばいいものを…」
ユ「現時点、外には魔格8破竜アブルートが接近している。それも二頭。
今の所、まだ村には気づいては無いだろうが…」
鬼「8!?こんな所にそんな危ないのがいるの!?」
イ「それだけの高位魔族になるとおそらく見つかる可能性が高い。
そんな高魔格の魔族が二体同時。村の戦士総動員しても勝てるかどうか…」
鬼「そら、大事だ。で、この村の方針としては?」
イ「必ず見つかると決まったわけではない。このまま静観というのが一番だろうな」
鬼「…気づいているかどうかは別として近づいてくるのはなぜだろうな」
イ「何!?」
村の出入り口の方に目線を向けると段々と近づいてくるのは分かる。
ただ、この村の存在に気付いているかは確かに別だ。
目線は周りをキョロキョロと見渡し、ここに気付いているとは思えない。
ユ「気付いては無いだろうが…あのまま近づけば境界には気づく。
このまま村に近づかれるよりは距離のあるうちに迎撃した方がいいな」
イ「戦力はどうするのだ?ここも空にするわけにもいかんだろ」
ユ「…その点なのだが、キリュウ。君に片方を任せたいのだが?」
イ「なっ!?人間に頼むのか!?」
ユ「彼の実力は皆も知っていると思う。どうだろうか?」
戦士達も自分の実力は聞いているとは思う。
こういった村では噂も広がるのは早いだろう。
だが…
イ「それでもだ!こいつを信用できるのか!?危なくなったら逃げたりしないと!」
鬼「うわ、信用無いのね」
ユ「…だが現時点あれらを我が村の戦士達だけで掃討、もしくは撃退できると?」
イ「最終的には我らには獣神装がある!それならば…」
ユ「今私たちの一族の誰か一人でも使いこなせる者がいるのか!
最悪、魔格10の魔族を作ってしまうだけだ!そうなったらこの村など簡単に滅ぶぞ!
イザーク・ベルカ!貴方は一体何を守ろうとしている!この村か!?
人に頼りたくないと言うあなたの誇りか!?」
イ「私とてこの村を守りたい!だが、この場にいる戦士達にお前は人間を信じろと言えるのか!?
命を預け、共に戦えと!」
周りの戦士諸君の顔を見る限り、意見は半々という所か。
先頃の騒動を見ているものは自分の実力を見ているが全員という訳ではない。
根本的に自分が人間という部分が気になってるみたいだし。
鬼「悪いんだけど、そんなに信用できないなら自分帰るよ?
こんだけ言われてここのために戦いたくもないし」
イ「そうすればいい。であるならば話は終わりだ」
鬼「ただ、今自分でてったらあの二匹完全にここに気付くんだろうな…
まぁ、いいか。人間の自分には関係ない話みたいだし」
イ「ふざけるな!この村を危険に」
鬼「だったらゴチャゴチャ言ってじゃねぇよ!人間だ妖族だと下らない事を!
今、自分とあんたらがやらなかったら簡単に滅ぶんだろうが!?
…信用しろとは言わん。自分は素材の為。あんたらは自分の村の為。
それぞれの目的のために戦う、それでいいだろうが。これ以上は議論の無駄だ」
ユ「…それでいいか?イザーク」
イ「しかし…」
ボ「では戦闘中私が彼と共にいましょう。何かあれば私が何とかしますよ」
ユ「ボリス、何をする気だ?」
ボ「私の獣装は魔格7の魔族です。倒せないまでもけど時間稼ぎ位は出来るでしょう」
鬼「何これ、もう自分が逃げるって確定事項かよ。ここまで信用が無いとねぇ」
ボ「いえいえ、これは絶大な信頼の元に私がそちらに行くんですよ」
鬼「信頼?どこがよ」
ボ「私の実力はこの中でも指折りです。その私が貴方と共に行くんですよ?
村としては痛い戦力ダウンです。それだけでも信頼の証と取れませんか?
イザーク、彼の実力は私も聞いています。なれば私が入る事で戦闘時間も大幅に短縮できる。
そうなれば一秒でも早く村側に加わり残りの一頭もすぐに討伐します。
それが一番の最善策と言えませんか?」
イ「…いいだろ、お前がつくと言うなら私もお前を信用しよう。
しかし、もしこやつが逃げた時はどうするのだ?お前はどうやって責任を取る?」
ボ「決まっています。命に代えても時間を稼ぎ、同胞の加勢を待ちますよ」
ユ「では決まりだ!総員、獣装を装着して戦闘準備!」
村「「「「「おおさ!!!」」」」」
全員獣装を装着して戦闘準備に入る。
この光景は確かに人間ならかなりおっかない光景ではある。
数十人もの人が一斉に魔族化していくんだもの。
全員すぐに準備を整えて村の外へと一斉に飛び出していく。しかし…完全に乗り遅れたな。
とりあえず、素材確保といきますか。
魔格8か…いい値段で売れそうかな。




