二十話目
話しも終わり食事をしながら今度はこちらの質問をさせてもらう。
鬼「獣装ってのがアゴン族の武器なんだっけ?別名が獣面族」
ユ「そうだ。我らは倒した魔族の体と魂を使い、獣装を作り装着する。
体は倒した魔族と同一の物になりその魔族の力を使う事が出来る。
意識は我らのままなのだが、人からすれば同じだからな。我らが人に忌み嫌われる理由だ」
鬼「んで、さっきあのおっさんに言ってた獣神装ってのは?」
ユ「我らアゴン族に伝わる秘宝、魔格10の魔族を元にして作った獣装だ。
獣装は一族に代々伝わり継承されていくのだが、獣神装を持つ一族が村の意思決定者と定められている。
アゴン族の村はいくつかあって、一つの村に2つか3つ獣神装がありそれぞれの一族が保有している。
村長はそれらの獣神装を持つ一族の中から村人の意志で選抜されていく」
鬼「そうなると…ちょっとした派閥争いみたいなものもあるのか?」
ユ「それは無い。村の長に選ばれるものは信頼をあつめ、力を示し、皆から支持を受ける。
故にその時期に慌てて取り繕っても無駄というものだ」
鬼「この村にはユリウスとイザーク、あといくつ獣神装を持つ一族がいるんだ?」
ユ「あとひとつ、一族の代表はボリス・ブラーハという。
その三つの一族の代表で村の運営を行っている。ちなみにイザークの一族はベルカだ」
鬼「魔格10ねぇ…ちなみに自分が倒したあの四人の獣装の魔格は?」
ユ「全員7だ。我が村きっての精鋭…だったのだがあれだけ秒殺されてはな。
彼等も落ち込むだろう」
鬼「そこはほら、自分規格外だし」
ユ「だからなのだろうな。君の我らを見る目には恐れも侮蔑もない。
獣装を着ける我らを見てあれだけ無反応というのは初めて見た」
鬼「驚きはするけど、怖くはないか。だってこっちの方が本当の化け物寄りだと思うし」
ユ「あいつ等には聞かせられん言葉だな。まるで自分達は弱いと言われている気がするよ」
ア「実際そうだろうな。その獣神装を着けたアゴン族数人がかりでも勝てるかどうか…
こいつに私が与えた力はそれだけの物という事だ」
ユ「…なるだけ君には喧嘩を売らないようにするよ」
アレイスの言葉も他のアゴン族なら怒るかもしれない。
種族最強の力が負けるはずもないだろうと。だが彼は信じたようだ。
できればこうやって評判が広がって誰も喧嘩を売らないでくれたら、楽なんだがなぁ…
飯も食い終わったし、そろそろ行こうかな。
このままここに居ると夜になっちまう。そこまで長居するとエルトも心配するだろうし。
鬼「じゃ、これで行くわ。これ以上ここに居ると同居人も心配するし」
ユ「また、来い。これっきりってなるとまた下らぬことを言い出す奴も出てこよう」
鬼「ヘイヘイ…と言いたいが、どうやって入りゃいいんだよ?」
ユ「獣神殿に行ってビストガンより祝福を受けてこい。そうすればここに入る許可は出るだろう」
鬼「神様の祝福か…今の自分に一番似合わない言葉だろうな」
村の中央に一番大きな建物が建っていて入り口には2匹の狼の木像が建っている。
中に入ると壁一面に大量の青い炎が灯っていてかなり明るい。
一番奥には5mはあるだろうか、見た事も無い位デカい狼の像が建っている。
巨狼の前には一際大きな青い炎が灯っている。なるほど、これが彼等の祭る獣神ビストガンか。
ただ、そんな種族の一番神聖な所に部外者が立ってるんだ。周りのお方たちは睨む睨む。
鬼「襲って来るって事はないよな…さっさと出よう、しかし祝福ってどうやって受けるんだ?」
カ「教えてあげようか?」
鬼「あれ、カミラ。いつの間に居たんだ?」
カ「父さんに言われたの。キリュウが今度また来るために祝福を受けさせろって」
鬼「家に居なかったのか?食事時に居なかったけど」
カ「一緒に食べようと思ったけど、難しい話ばかりしてるんだもん。嫌よ」
鬼「それもそうだ。でだ、祝福とやらはどうやって受けるんだ?」
カ「あの一番大きな炎に入って。それだけでいいから」
鬼「…燃えない?」
カ「男でしょ?さっさと入る!」
思い切って炎の中に入ると意外と熱は無く、ただ周りの景色が青くなった。
炎が熱くないってのも面白い経験だな。さて、祝福とやらを受けますか。
鬼「で、これからどうする?ビストガンさん」
ア「兄弟達以外の神か。楽しみだ」
?「…あら、ここに人間が入るのは何百年ぶりかしら」
目の前に現れた青い体毛の狼、これが喋っているらしい。
体は像ほど大きくはないがそれでも伏せている状態で顔は立っている自分と変わらない。
これがオディアス教以外の神様らしい。
鬼「アンタがビストガン?このアゴン族の守護神」
ビ「そうね、彼等には力と守護の炎を、彼等からは私が存在するために魂を。
守護というよりも契約に近い物ね。お互いがお互いを必要とする。いい関係でしょ」
ア「存在の維持に他の魂。我らと何も変わらぬという訳か」
ビ「そうね、神なんてのはそんなに違わないでしょ。オディアスの子、掌神アレイス」
鬼「こいつ、知ってんの?」
ビ「そりゃあねぇ、この世界でオディアスは一番の勢力を持っているもの。
この世界の神と呼ばれる存在でオディアス教を知らない者はいない。
まさか、人間がこれだけ増えるなんて誰も思わなかったしね。
信仰者の数はそのまま神の力に直結する。人間の魂は弱いけど数は多い。
妖族や魔族は魂は強いけど数はそこまで無いわ。
その数の多さの分オディアス教には押されているけどもね」
鬼「神様も生きるってのは大変なんだねぇ」
ビ「さて、あんた祝福受けに来たんだっけね。珍しいわね、妖族が人間を受け入れるってのも」
鬼「そんなに?じゃあ自分結構ビップ待遇?」
ビ「色々戦事もあったしね。今はお互い不干渉で過ごしてるけど…
まぁ、いいわ。数百年ぶりに祝福をあげる。私に触れて頂戴」
言われるがままに青い体毛に触れる。普通の獣程度には温かみがあるな。
数秒ほどしてから体毛が炎に変わって、自分の体の中に入っていく。
熱もなく痛みもないのでそんなに怖くはないが…
ビ「はい、終わり。貴方の魂に私の炎の紋をつけたわ。
私の守護する種族の村はこれで見えるようになるわ。出入りも自由に行えるからまたいらっしゃい」
鬼「またいらっしゃいか。他の村人はどう思っているのやら」
祝福も終わり炎からを出ようとした時、周りの景色が変わっていく。
それまで青く灯っていた炎が赤く変わり、建物内には村人が集まっていく。
…あれかな?自分を襲いに来たか?
ア「この赤い炎は何だ?」
ビ「近くに高位魔格の魔族が近づいているわ。
戦えない村人は皆、この獣神殿に避難するようになってるのよ」
鬼「高位の魔格か…ランクは分かる?」
ビ「…7以上は確定ね。外の村人もかなり警戒しているわ」
鬼「でも、ここには獣神装とかいう秘宝だっけ?それを使う一族が三つもあんだろ?
じゃあ、大丈夫じゃん」
ビ「あれはちょっとやそっとじゃ使えないわ。その一族でもすべての者が使える訳じゃないの。
使えもしない者が無理に使うと…その者は獣神装に負けて魔族になる」
鬼「魔格10の魔族の出来上がりって訳か」
ビ「その方が危険でしょ。今三つの一族であれを完璧に使える者はいないわ」
鬼「…なんだよそれ。宝の持ち腐れじゃんかよ」
ビ「こればかりはね、訓練なんかでどうとなるものではないの」
鬼「じゃあ…自分等で貰おうか。ちょうど素材欲しい所だし」
ア「そうだな、探す手間も省ける」
ビ「…いいの?相手はかなりの高位魔格よ?人が妖族のために命を懸けるの?」
鬼「命を懸ける?まさか!自分がそんなに善い人に見えるのか?
助けるだの命かけて守るだのは言う気はないね。ただ、素材を狩りに行くだけ」
ア「私の契約者がその程度の魔族に負ける訳がない」
ビ「まぁ、そういう事なら御礼は言わないわよ」
鬼「それで構わんさ。それじゃあ行きますか」




