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十八話目

魔族界の広い原生林を歩く事一時間以上。

この子は一体どれだけの距離を走って逃げたんだ?

大体、人間族と折り合いの悪い妖族が人間族の自分に送れなんて言うのか?


鬼「おい、アレイス。どういうことだよ?

何であの子は自分に村の場所がばれるようなことをするんだ?

折り合いの悪い人間族に住む場所ばれるのは何かとまずくないのか?」

ア「私に聞かれても分からん。だが、それを理由に断れるのか?この魔族界に子供一人」

鬼「そらそうだが…村に着いたら囲んでボコボコとかないよな?」


更に移動を続けカミラは大きな木の前で立ち止まった。

樹の前に跪いて何やらブツブツと言い出した。

何を言ってるのかはよく聞き取れなかった。

しかし、カミラが黙った瞬間大木は消えて向こう側には建物が並んでいる。


鬼「おお!?なんだこれ!?蜃気楼か!?」

ア「これが妖族の住処か。ここは敵となる魔族の生息地のど真ん中。

それゆえ彼等は独自の技術で自分たちの住処を隠すらしいが…実物は初めて見たな」

カ「入ってよ、私の家すぐそこだから」


中の住宅はほぼ木造だ。ログハウスのように樹を組んで住居を作っている。

なんだかキャンプ場みたいだな。この村は数百人規模で生活している。

食べ物は狩猟や採取、多少の農作物と食べているものはほとんど変わらない。

中を歩いていると他の住人がこいつ誰だ?という視線を向けてる。

村人を見ると面白い点が一つ。結構な数の住民が腰に何かお面を下げている。

どれも魔族っぽいおっかないデザインだが…今日は祭りか?


鬼「ここの住民ほとんどお面なんかぶら下げてんだ。面白い種族だな~」

ア「そういう事か…お前があの子がお前を警戒しないわけだ」

鬼「ん?どした?」

ア「彼らはアゴン族。別名を獣面族といってな。あの面あるだろ?

あれは魔族の体と魂で作られている代物でな。

彼らは面を被る事でその元となった魔族の力を使う。姿も違う、というか変身だな。

人間サイドとしては魔族と変わらん。ゆえにこの種族と人間は特に怨恨が深い」

鬼「それとこの状況とどういう…」

ア「さっきお前ピエロとかの面を作ったばかりだろ?

それに素手で戦ったというのもデカい。この世界の人間はほぼ武器で戦うから。

恐らく、同族とでも思われてるんじゃないか?」

鬼「という事は面を取ると…」

ア「さっきお前が自分で言ったじゃないか。囲まれて…あとは想像に任せる」


やばいじゃん!?ほぼ人類の敵のど真ん中に居る訳!?

御礼とかもういいから早く逃げるか!!


鬼「え~カミラちゃん。自分達は用事を思い出したので帰ります」

カ「え!?駄目だよ!もうお父さんすぐそこまで来てるもん!」

鬼「ああ!?知らねぇよ、こちとら…」

?「おお、貴方が娘を助けてくれた方ですか?」


声の方向に顔を向けると一人の男性がいた。

身長は190近くあるだろうか、かなりデカい。

体も鍛えられていて筋骨隆々とはこの事を言うんだろう。


ユ「私はユリウス・バボラーク、この村の村長をしております。娘を助けてくれてありがとう」

鬼「いえ、そんな…」

ユ「しかし…変わった獣装(アルマ)だね?元の魔族は何だい?」

鬼「元の?えっと…よく分からないんですよ。父からもらったものですので」

ユ「そうなのか?それは残念だ。ところで君はどこの村の出身だ?

あまり見た事の無い獣装だが?獣装の細工もかなり変わっているな。まるで…人間みたいじゃないか?」

鬼「すいません、そこの所もよく分からず…」

ユ「まぁ、かまわないよ。ところで君いつまで獣装を着けているんだ?

ここはもう安全だから、取っても大丈夫だよ」

鬼「いやぁ、自分はこのほうが落ち着くんでこれで大丈夫です」

ユ「そうかい?君がそれでいいならそれで構わんが…とりあえず立話も疲れる。家までおいで」


いや、そういうのいいからここから逃げさせてください!

というのも中々言えず、ズルズルと村の中に引きずり込まれていく。

こうなれば、お礼を早く受けてさっさと出よう。

家までの道中、村をのんびりと見学しながら歩いていく。

村の中にはいくつもの青い炎が灯り、村を照らしている。ただ、こんな真昼間に明かりなんか要るのか?


鬼「こんな昼間に炎が灯ってんだ。変わってんだな」


この一言でカミラもユリウスさんも動きを止めた。

あれ、どうしたんだろう?


ユ「今、なんと言った?」

鬼「いや、昼間にあんな明かりが要るのかなって」

ユ「総員、戦闘配備!こやつ…人間だ!」


ユリウスの掛け声に応じてそこら中からアゴン族が出てきた。

数は4人、全員ユリウスと変わらない体格だ。

数とそしてあまりに違う体格。多分大丈夫だとは思うけど…怖い。


鬼「あの~…皆さんどうしました?」

ユ「黙れ人間!あの炎は我らの守護神、獣神ビストガンの守護の炎!

あの炎があるおかげで我らの村は魔族や人間族から隠れる事が出来る!

それを知らぬアゴン族など居る訳がない!」

鬼「そんな基本情報知らねぇっての…」

ユ「キサマ何しに来たのだ!我らを滅ぼしに来たのか!?」

鬼「そんな下らないことする気ないっての。…あんたの娘が心配だから送った。…それだけだ」

ユ「我らの命の心配などする人間がいる訳がないだろ!

…捕えろ、どちらにしろ村の場所を知られたからには生かしては返せん!」

村「「「「我ら敵の躯を食らいて力となさん!」」」」


村人はそう言って腰につけた獣装を顔につけた。

面から伸びた触手の様なものが体を包み、中から出てきたのは確かに魔族と同じに見える。

各々元になった魔族と同様に姿を変えている。こら、人間がおっかながるのも仕方ないわ。

二本角の巨狼バルドイ、鎌状の爪が生えた蜥蜴クライク、

皮膚が鎧上に発達した人型の虎のライエンド、サソリ型で爪の部分が楯状に変化したマルウト。


鬼「こら、話し合いはきいてくれなそうだね」

ユ「かかれ!殺しても構わん!」


角で刺し殺そうと先手はバルドイが突っ込んでくる。


バ「死ね、人間!!!」

鬼「たかだか角が生えたくらいで偉そうに!」


角の間に体を入れて両腕で抱え込みそのまま後ろに放り投げる。まずはこれで一人!

間髪入れずライエンドがタックルで突っ込んで来た所を拳で殴りつける。

カウンター気味の命中でかなり後方に飛び、二人目撃沈!

クライクは俊敏性が高く後ろに回り込まれて鎌の一撃を背中に食らってしまった。

鎧を着けていたためノーダメージでクリア!


鬼「ちょこまかとうっとおしいんだよ!」


後方にいたのでバク宙の要領で後ろに跳び両腕を叩き付けて地面にめり込んでいただく。

三人目沈黙!

最後のマルウトは少し大きいため地面と体の間に入り込み、胴体を数発ほど殴りつける。

少し鱗が有るため少々強めに…

ガン、ガンガン、ドン!

最後の一発は肉に当たったかな?


マ「ギヤァァァァァ!!」

鬼「これで最後と!」


四人は意識がなくなると同時に面が外れて元の姿に戻った。

体は頑丈そうだからあの位では死んでは無いと思うけど…


ユ「お前…一体何なんだ?人間が武器も使わずここまで戦えるなど聞いたことが無い」

鬼「自分は普通の人間とは大分規格外でね。この世界の常識等々は一切無視で。

で、どうする?まだやるなら…だれか死人がでるぞ。

これ以上でてくるなら自分も手加減できそうにない。引いてくれるなら助かるんだけど?」

ユ「オディアス教の契約者なら何かしらの武器を使うはずだ。なぜお前にはそれが無い?」

鬼「色々と事情があってね。自分はあの宗教大嫌いだから。

少しばかりそれで揉めてるんだよね~。あそことは」

ユ「…変わった人間だな。人間でオディアス教を嫌う奴など初めて聞いた」

鬼「それなりに危害も加えられそうになったし。という訳でもう引いてくれるよね?」

ユ「ああ、彼らはこの村でも指折りの戦士だ。それが全員あの様では村人全員出さねばならん。

…どうだ?本当に少し御礼でもさせてくれないか?このまま君を帰しては娘が少々落ち込む。

村の敵を入れてしまったからね。少なくとも友好の証位は示した方が村人も安心する」

鬼「そういう事なら喜んで」

ユ「では私の家に来てくれ。食事でもご馳走しよう」


とりあえず一つの種族と揉める事は回避できた。

しかし、さすが異世界。こういった異民族も登場するとは…

あの獣装というのは中々に面白い技術だ。魔族の力をそのまま使うか…

少し持ち帰っちゃダメかな?

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