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十二話目

晩飯を食いながら今後の細かい話をしようといわれた。

こちらとしても今考えていることがあるし丁度いいかなって。

本音を言うと怖がられそうだから、若干の補正を加えるけどね。


エ「それで、これからどうするの?誘ったのはそっちだろ?」

鬼「ここ、親父さんがやってたんだって?弟子の一人がすべてを奪いつくした残骸がここ」

エ「…街の連中の話を聞いたんだね。いいさ、言わしておけば。それが変えようのない事実だ。

だが、いずれはこの工房を以前のように活気のある工房に戻したい。それが今の僕の望みだ」

鬼「憎いか?その弟子の一人は」

エ「…憎いさ。父の死をチャンスととらえたその思考。すべてを奪った行動。全てが憎いよ。

でも現時点工房の規模や職人の数、あげている利益。そのすべてが僕には何もできないと言っているよ」

鬼「そう、それが今までだ。でこれからは違う。なにせ自分がいるんだしね。

お前の復讐、自分が手伝ってやるよ」

エ「それはありがたいけど…どうするの?」

鬼「とりあえず現時点この工房の主な収入は何?」

エ「最初に言ったけど貰った端材を加工して他の店に売る。こんな感じかな?」

鬼「それはどういった類の物?」

エ「主に生活用品とかかな。ナイフとか包丁とか。本当はちゃんとした武器を造りたいけど」

鬼「じゃあまずはそこからだな。魔族を狩ってそれできちんとした武器を作る。

まずはきちんとした工房として活動しよう。販売もできれば自前でやりたいな」

エ「…ん?今なんて言ったの?」

鬼「できれば店を自前でやれればなって。別の店に卸すのではなく販売も行う」

エ「君はなんでいつもそんな突拍子もない事を言うんだい?」

鬼「え、そんなにおかしいのか?今の」

エ「商品を仕入れて店舗を構えて販売。そういうのは商会ギルドに所属しないと」

鬼「何だよここは!?何でもかんでもギルドギルド!自由な商売は出来ないのか!?」

エ「そんな事言われても…それが常識だよ?」

鬼「なしだなしなし!闘人ギルドも通さないんだからその商会とやらも入らない。

これで決定!いいなエルト?」

エ「そんな…それに何で自分で店なんかやらなくちゃいけないのさ?

今まで通りどこかの武器屋に卸せばいいじゃないか。何でそんな面倒を…」

鬼「自分で店をやれば売れた代金は100%自分の物だ。お前の夢に早くたどり着く方法だぞ」

エ「…分かったよ!君の言う通りにすればいいんだろ」

鬼「それで良しだ。明日から素材の確保に行ってくる。

エルトはそれらを片っ端から武器や防具にする。今は少しでも金を稼ぐことを優先する。

店に関してはもっと資金が集まってからにしよう。今は他の店に卸す方向でいい」

エ「それはいいけど…素材集めは大丈夫なの?」

鬼「イイから見てなさいって」


食事も終わり部屋に戻る。

素材集めは明日からにしてまずは重要な案件を済ませるか。

とりあえずアレイスに出てきてもらおう。


鬼「ところでアレイス君。魔族ってのは何処にいるのかな?」

ア「……お前はそんな事も知らぬのにエルトにあれだけの大口をたたいたのか?」

鬼「いやぁ、今思い出したさ」

ア「いい度胸をしているな、全く…ここら辺は人間の領域。つまりは人間界といえる。

基本魔族は人間界とは違う領域、一般的には魔族界という領域で暮らしている。

そこへ行くのが普通だろうな」

鬼「それはどこに行きゃいいのさ?」

ア「ここからだと…街とは反対方向に4,5キロ行ったくらいか」

鬼「…近くね?」

ア「境界線には壁が作られているからそうそうこちらに来ることは無いさ。

街にあるのとは強度は段違いだがな。その壁から向こうは魔族界。

何が起きるかわからない魔の領域だ」


翌朝、言われた通りの場所には見上げんばかりの壁が何キロにもわたって広がっている。

万里の長城か、ここは。とりあえず中に入りますか。

壁の一部分に扉がつけてある。城門かという位にでかい。

そこには守備隊の詰所があって、中に入る者を管理している。


鬼「すいません、ここって中にはどうやったら入れるんですか?」

守「何だ君は?ここに何か用か?」

鬼「仕事でーす。魔族の体集めに来ました」

守「ちょっと待て。今は壁の見回りで隊員が揃っていなくてな。

数がいないと開かないんだ」

鬼「じゃあ、自分であけますよ。閂外してもらえますか?」

守「それは構わんが…」


こちらを疑いながらも一応外してはくれた。

かなり疑わしい目で見てるが、気にしないで行こうか。

両手を扉に当てて力を込めていく。数秒後には人が通れるくらいには隙間ができた。

ちらっとさっきの守備隊の方に目線を送るとビックリというのわかった。

魔族が入っても困るし、閉めておきますか。




中は人の手が入ってない自然そのままだ。

ただ、そこらへんかうめき声やら鳴く声やらがこだましている。

あの闘人ギルドみたいな場所だな。うわぁ、気持ち悪い。

ところでだ、魔族といっても何を狩ればいいんだろうか?


鬼「アレイス。何狩ればいいと思う?」

ア「お前はそんな事も知らないでここまで来たのか?」

鬼「この領域の事すら知らないんだもん。目星なんかあるわけないじゃん」

ア「自慢げに言う事か!!…とにかくもっと奥に行くぞ。こんな壁の近くでは碌な奴はいないからな」

鬼「それでどういった奴を狩ればいいの?」

ア「魔族にもランクが有るのをお前知ってるか?」

鬼「…続きをどうぞ」

ア「魔格というものがあってな。1~10まである。

それぞれ強さが違って、1~10まである。ここら辺なら3~6辺りがねらい目だ。

これ以上強いのは魔族界でももっと深部に行かんと居らんだろう。

時折気まぐれで人間界に遊びに来るのはいるがな」

鬼「遊びにって…」

ア「7以上のランクならほんのお遊びで国が一つ滅ぶぞ」

鬼「国がねぇ…まぁ、自分には関係ない話だな。どこの国が襲われようともね」

ア「確かにな。ではそろそろ鎧を出しておこう。

ここら辺程度にこの服が破られることもないだろがな」

鬼「では、行きますか!魔族との初戦闘!」





工房でエルトはただ待っていた。いつもなら素材集めをしている時間だ。

彼は言った。待っていろと。…あ~、思わず話乗っちゃったけども大丈夫かな!?

彼の話は常識はずれにも程があるよ。この世界はギルドに所属して働くのが普通なのに!

何処の世界にギルド完全無視して商売する職人がいるんだよ!

どんな揉め事になるのか想像もつかないって!

…でもなぁ、話は滅茶苦茶魅力的なんだよな。現時点であいつの工房に勝つにはこれしかないし。

大体、あの無契約者って何なの!?契約者に勝つ無契約者!?意味わかんない。

…もう魔族界に着いた頃かなぁ。正直楽しみは楽しみだ。

今までまともな素材なんか使ったこともないもんな。

はぁ…彼が来て、僕の生活どうなるんだろ?


ドンドンドン!

鬼「お~い、エルとや~い!帰ったぞ」

エ「お、お帰りどうだ…」


彼が帰ってきたので希望と疑惑が混ざり合う中、扉を開けた。

眼前には…想像以上の成果が待っていたんだ。

僕が今まで使った事の無いような高位魔族の素材がそこにあった。

一般人なら恐れおののく場面なんだろうけど今の僕にはさながらパラダイスという所だ。

…信じよう。僕のためにこれだけ命を張って戦ってくれた彼ならば。

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