職業:異世界の神様
転生に対して思うことをそのまま書き連ねただけなので、あまり練ってないです。
神様、特にキリスト教に関するような記述がありますがぼんやりとした知識で書いたので間違えている部分も多々あると思います。
ノリと勢いで書いただけですので、気になったらぼちぼち書き直したりするかもしれません。
おれは死んだ。
二文字で表されるおれの状態異常は瀕死ではなく死亡である。まごう事なく死んだ、はずであった。
なぜ、死んだ、死んでしまったというのに意識があるのか。思考していることそのものがおれの現状の異常さを物語る。
トラックに跳ね飛ばされアスファルトには脳みそが飛び散りとても酷い死に様だったろう。死体の記憶がないのは当然、自分の死体など見ることは不可能だからだ。
しかし、現時点で破裂し空っぽであるはずの頭蓋骨は以前と変わりなく頭皮と髪に覆われている、つまり異常だ。
訳がわからん。
「やあ!やっと起きたね!」
カラオケのエコーがかかったような声が響き、ハッと顔を上げる。
死んだのに生きている状態に混乱しすぎて周りの異様さに全く気がつかなかった。
白。
雪景色など目じゃない全くの白であった。
足元には影すらなく、しかし浮遊してはいない。人知を超えた空間である。
声のした方を向いてみるが、誰もいない。そもそも、振り向くという行為をしても景色が変わらないので振り向いた気がしない。
幻聴だろうか。
いやまて、これは現実なのか。夢のなかぐらいしかこの空間を説明できない気がする。
しかし、あまりにも鮮明な『死』の記憶がそんな妄想を打ち払う。目前に迫るトラックのライトと直後の衝撃。痛みがなかったのは感じる脳が潰れたからか、もし痛覚が残っていれば今立っていることすらできなかったであろう。
「考え事もいいけどさ、そろそろぼくの話を聞いてくれないかな?」
また先ほどの声がする。しかしいくら周囲を見渡しても人らしいものは見当たらない。
くすくす、とどこからか笑い声がこだまする。山もないのに乱反射する音に頭がわんわんと鳴った。
「お前は誰だ!どこにいるんだ!ここはどこだ!」
あらん限りの声で叫ぶ。おれの声はなぜかまっすぐ飛んだ。
「はいはい、出てきてやりますよ。ぼくは君をいじめるために連れてきたんじゃないからね」
しゅるり、と白いゆったりとした服をきた少年とも少女ともつかない姿のものが降りてきた。多分だが、人間じゃあないだろう。
ゆるくかぶりを振って、カエルを睨むようにその物体を見つめる。
「…お前はなんだ。俺はなんでここにいる」
「うんうん、わりと自分の状態を正確に理解してるようで助かるよ。説明の手間が省ける」
「いいから答えろ」
「はーい!まず一つ目。ぼくは神様です。二つ目、君はぼくが死んだ君の魂に肉体の依り代を与えてここに連れてきたんだよ!」
「……かみさま?」
「そう!」
思わず聞き返す。なるほど、神なら納得できるような気がした。全てを説明できる言葉だ。
『神様のせい』
親が使う子供騙しの言い訳のようで、だんだん馬鹿らしく思えてきた。
「君はとても不幸に生きてきたね。可哀想に。どんなに努力しても周りには認められない、不幸せな人生にはとても同情するよ。」
「…は?」
「でも安心して!ぼくが君の次の人生を華やいだものにしてあげる!他人を蹴落とし、人に敬われ、羨まれ、貶す人は誰一人存在しないような存在になろう!オマケに綺麗な妾をたくさん!どうだい?嬉しいかい?」
何を言ってるんだこいつは。いや、コレは。
何を言ってるんだ。
「二度目の人生なんだから、幸せに生きよう!あ、でも記憶は3歳くらいからにした方がいいかな?前の子は随分恥ずかしい思いをしてたみたいだし。何か希望があればなんでも受け付けるよ!」
そう言うとソレはパッと現れた椅子に腰掛け、テーブルの上の紅茶を淹れ出した。
「なにか好きなお菓子でも思い浮かべてごらん。なんでも思い通りのものが現れるよ」
ココはそういう場所だからね。
おれの方に座るよう勧めてくるソレは、善意の塊のような顔をしていた。
頭が真っ白になったおれは、そんなことも理解できずにただただ呆然とソレに言われた言葉を繰り返した。
『不幸』『可哀想』『同情』
どれも自分が上の人間だと思っている奴らの言葉だった。おれのことを完全に見下した台詞だった。底辺を見て安心する奴らの常套句だった。
ああ神様。あなたがそんな言葉を使うのですか、クソッタレ。
たった一言で地獄に落ちる。
コレが、こんなのが神だと言うのなら。
「なあ、神様らしい人。聞いてもいいかな」
「ああいいよ。君の知りたいことならなんでも」
「おれは、あなたの同情を引くために生まれてきたんじゃないんですよ」
おれの、おれの人生の全てはこいつの一言で地に落ちた。全くの無駄だった。努力も何もかも。
ふざけるなよ。
なにも言えず固まっている神様モドキに、手に持った果物ナイフを突き立てた。
腹を狙ったソレは深々と突き刺さり、ぐちゃりと音を立てながら捻り抜く。腹からじわりと真っ赤になる衣装の肩口を掴み首を裂いた。バッと血飛沫が上がり、おれの顔から肩にべったりと張り付いた。
何度かビクリと痙攣して、緩やかに鼓動は止まった。
神様、あなたは誰にでも平等で無慈悲であり、決してそれは覆りません。奇跡と同数の虐殺によりあなたはそれを証明しています。
「神は誰も贔屓しない。同情しない。お前は神なんかじゃなくて、ただの驕った人間だ。おれはお前みたいな人間に憐れまれる覚えなんかちっともない。一生懸命生きた。努力が認められなくても、不幸でも、それがおれの人生で、おれの全てなんだ。新しい人生なんていらない。お前がおれを本当に哀れに思うんだったら、死ぬのをなかったことにすればよかったんだ。そうすればおれはお前みたいな奴に会わずに済んだし、お前は死なずに済んだ。だろ?」
物言わぬ死体に問いかける。当然返事はない。
血に塗れた果物ナイフを見る。
なんでも出るっていうのは本当なんだな。人間じゃないものを殺せるんだから。
ポイッと放り投げると光る粒子になって消えた。チラリと見ると、死体も粒子になって消えていっている。
証拠隠滅。さて、これからどうしようか。
この後神様になって異世界を魑魅魍魎のごとく跋扈して奉られたりします。
でもそのくらいしか考えてないので気が向けば連載になるかもしれません。