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2.淡々と過ごす日々



「行ってきます」


玄関を開けると、心地よい風が頬を掠めていった。

そんな清々しさとは裏腹に外に出るのは、憂鬱だ。

毎日の生活が、もどかしい。

いつも淡々とした日々を送っていた。


「咲。」


玄関を出たところで、家の中から呼び止められる。

振り返るとママがいた。

いや、家の中にママ以外がいるわけないのだから当たり前だ。


「…今日は、帰りが遅くなるわ」

「わかった、ご飯は私が作っておく」

「いってらっしゃい、気を付けるのよ」

「うん、大丈夫だから…。行ってくるね」


本日2度目となる“行ってきます”をママに告げ、学校へ向かう。

私の通う中学は、私の家のある学区の隣である。なんでも、母方の家の事情を知っている人がいるからだとか。

両親の家は、いわゆるワケありだ。

私は小さいころから、振り回されてきた。

両家には因縁があり、長年対立している。

父方である朱桜家は代々続く、裏の陰陽を司る家らしい。詳しいことを私は知らない。ママから聞いた話だし。

ただ、自分はその朱桜家から目の敵にされている。

実際、殺されかけたこともある。

意味が分からない。家柄というのは、そんなに大事なものなのだろうか。

母方の氷室家は、昔から栄えている由緒正しい家らしい。しかし、氷室と朱桜の両家は仲が悪かった。

大きすぎる勢力は時に目障りになる。

朱桜は、氷室に呪いをかけた。

命の期限を25と定めて……。

朱桜に非があるように思うかもしれない、だが、氷室が大きな権力を乱用していたのにも非がある。

氷室家は、呪いを解くのに奔走し勢力はみるみる衰えていった。

それで終われば良かったのだ、ただ、両家はお互いを忌み嫌い、朱桜は呪いを解くことはなかった。

呪いをかけられたのは、当時の氷室の核にいた全員である。氷室の命は、この時に多く散ったそうだ。呪いを解くために奔走した人々も次々と餌食になる。長い年月をかけても、打開策がみつからなかったが為に…。

ただ、決められた短い命を幸せに生きたいと願った者もいた。それが、救いだったのか悲劇と呼べば良かったのか分からない。

呪いはどういったわけか子どもに、それも長女に転移した。氷室の家が女系の一家だったからなのかもしれない。ただ、この事実は氷室で多くの混乱を招くことになる。逆に、子どもにまで辛い思いをさせたくないという者も増え、氷室は大々的に衰えていくことになる。

現氷室家に、呪いを有している人は僅かだ。そして、私はその中の1人。そして、忌むべき血筋に生まれてきた両家の汚点。

でも、こんな思いをするのは私で終わりにすればよい。

私が死んだ時、悲しみに暮れるのは親だけで良い。その為に、小学時代の友達は切り捨てた。恨まれてるかもしれないが、恨まれるのはもう慣れている。これも、運命。

だが、この運命を恨んだことはない。パパのこともママのことも大好きだし、2人の子どもに生まれたことは私の誇りだ。


____私は、それだけを糧にして生きてゆける。


私は、1人のままで良い……。


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