プロローグ
___とある部屋。2人の男女。
女の方が、紙のようなものを男に差し向ける。
「どうせ、茨の道だもの。あなたと生きた方が楽しいに決まってる」
無愛想かつ、冷静な声音で女が言った。男は一瞬、何が起きたのか分からないような顔をしてから、ハハっと笑う。
「まさかの逆プロとか…俺、本当かっこ悪いな」
自虐っぽく、笑みを見せる男に、
「それは、あなたが肝心な所で足踏みするようなヘタレだからじゃない」
と、トドメの一言を放つ。
「いや〜…、返す言葉がないよ。さすが、麗乃ちゃん」
場を茶化すような言葉に、麗乃の呼ばれた女は、刺すような視線をむけて、
「…黙らせるわよ?」
と、冷静な声音で言う。
それを聞いて男の方はようやく真面目な顔をする。
「わかってる、俺の意志だって変わらないさ。俺の手で、全て断ち切ってみせるから」
麗乃の表情が、ふわりと和らいだ。
「それでこそ、志侑でしょ」
言って、麗乃は顔を伏せる。
そして優しく腹を撫でた。
「この子は、何人目の犠牲者になるのかしらね…」
その表情は、先ほどまでの無愛想な顔と違い、愛情深く、だが物悲しさを物語る顔だった。
「人の話聞いてたか?…絶対に犠牲になんてさせない。俺が必ず、お前達を守ってみせる」
そう言った志侑だったが、その顔も泣き笑いのような表情が浮かんでいる。
「バカね……。闘うのは、あなた1人じゃないわ」
麗乃の手が、志侑の頬に触れた。
「あぁ、この子の未来が光輝くことを諦めない為にも……」
2人の顔は、決意に満ちた顔をしていた。
そう、全てが始まったのはここからだった。
_____そして、12年の時が経つ。
1人の少女の闘いは既に始まっていた。